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カミ回し   作者: 天川 奏
美香と咲良と俺
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 「えっと……」


 「宮川君だよね?」


 「あ……うん」


 女の子が顔を上げる。

 薄暗い中、外灯の光で照らされて見えた顔。

 色白で、柔らかくカールされた肩までの茶色い髪がよく似合っている。

 小さな鼻に釣り合った目はぱっちりと大きくて、瞳は黒く澄んでいる。

 でも、それを、俺はどこかで見たことがあるような気がした。

 どこだ……?


 「来てくれて良かった」


 「来てって、呼ばれたから」


 「うん。ありがと」


 女の子の口元が、少し上がる。

 笑うと頬に笑窪ができていて、何だか愛らしい。


 「……で、あの……カミは……」


 「へ、カミ?」


 俺が勝手に付けてしまった名前に驚いたのか、間抜けな声が聞こえてきた。

 と思ったら、すぐに笑い声に変わる。

 

 「あははっ、何それ、カミって!」


 「だ、だって……起きたら机の上に紙が置いてあるし、今も……神社に居るし……」


 「なるほどー! じゃあ良いよ、カミで」


 「うん……」


 勝手に決めてしまった名前だから否定されるかとは思ったけれど、すんなりと受け入れてくれてほっとする。

 会話が止まってしまって話題を探していると、カミの方から口を開いた。


 「……私はね、神社の敷地内じゃないと姿を現すことができないんだ。まあ、つまり、神社から出ると姿が消えちゃうの。だから君を呼び出すことになっちゃったんだけど……ごめんね?」


 「あぁ……うん? 別にそれは、いいけど……」


 それにしても、神社から出ると姿が消えてしまうとは、どういう事なのだろう。

 カミの発言に違和感を覚えながら、うやむやと頷く。

 カミは足を揺らして、外灯の明かりに反射する髪を指でいじっていた。

 風に流されて頬にはりついた髪をどけた俺は、階段に座ったままのカミに聞く。


 「ああ、それで……頼みたい事って、何?」


 「ん? あー」


 カミは階段から立ち上がると、後ろで手を組み、俺の前に移動してくる。

 ふわりとした茶色い髪が、肩から滑り落ちて揺れた。


 「仲直りの、手伝い」


 「……え?」


 それを聞いた俺は、眉をひそめた。

 仲直りなんて、自分達でするものじゃないのだろうか。


 「仲直りなんて、そんなの、ちゃんと自分達で解決しなよ」


 今神社で直接会ったばかりで、よく知りもしない女の子の喧嘩の仲直りの手伝い。

 そんな事で俺を呼ぶ意味が分からない。

 

 「……それが、無理なんだよ」


 けれどそう言ったカミの顔は、笑ったような、困ったような。


 ほら、話すから座って! と背中を押され、言われるまま階段に座る。

 その隣にカミが座って、また足を揺らした。


 「無理って……何で?」


 「あのね……私、死んじゃったから」


 カミの顔は、下を向いて垂れた髪の毛で隠れて見えなかった。

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