三十
「ふぅ。和樹、こう言うのは平気なんだね」
「うーん、まぁね」
暫くして落ち着いた様子の咲良が、ぬるくなった麦茶を飲んでいる。
ふと時計を見ると、まだ三十分程しか経っていなかった。
「あ、そう言えば、今日完成させてくるって言った漫画は?」
丁度いい。この時間に漫画を見せてもらえないだろうかと、あの漫画の話題を出す。
「んー、もうちょっと後に見せよっかなー」
別に隠すことも無いだろうに、咲良は膝に置いてあった鞄を抱えた。
しょうがない。
「それなら、待つけど……」
一通り遊園地を見て回り、観覧車などにも乗り終わると、時計の針は四時を回っていた。
ここの遊園地のほとんどは乗り尽くしただろう。
「時間が経つのって速いねー」
ツリーのある広場の近くまで向かいながら、咲良は水系のアトラクションで少し濡れた髪を乾かしていた。
「それにしてもここ、アトラクションとか遊具も豊富で飽きないね」
「そうだね」
「乗るものも無いし、そこのカフェで何か飲む?」
「うん、そうしよう」
咲良が指差したのは、道の途中にあった、遊園地に良く似合っているポップな喫茶店だった。
そこで飲み物でも飲みながら、雑談をして残り二時間の隙間を埋めることにした。
「……あ、そろそろかな」
「じゃあ、行こうか」
六時の十分前くらいになると、温かいココアを二人でテイクアウトしてから、ツリーのある広場へと向かう。
ツリーの近くには沢山の人が集まっていて、側のベンチも空いていなかった。
「でも、思ったよりは混雑してないね」
よく見渡してみると、一部に沢山の人が集まっているだけで、他の場所は所々空いているところがあった。
そこへ向かって人混みをすり抜けながら歩く。
「あ、ここからでも良く見えるよ!」
一歩後ろを歩いていた俺に手招きする咲良について見ると、確かに悪くはなかった。
まだ光っていない暗いままのツリーを見ていると、『残り三十秒です』というアナウンスが流れる。
それから暫くしてすぐ、十秒のカウントダウンが始まった。
「「五! 四! 三! 二! 一!」」
回りで見ている数人の女子高生達などに合わせて、咲良と俺も一緒にカウントダウンをする。
暗くなっていたツリーの灯りが、一気についていく。
赤や緑や青。
「綺麗だね……」
隣に立つ咲良が呟く。
もっと賑やかになると思っていたのだが、思いの外綺麗で見とれてしまう。
「そうだな……」
ツリーの光りに見とれたまま、俺はそう返した。




