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カミ回し   作者: 天川 奏
咲良と俺
30/33

三十

 「ふぅ。和樹、こう言うのは平気なんだね」


 「うーん、まぁね」


 暫くして落ち着いた様子の咲良が、ぬるくなった麦茶を飲んでいる。

 ふと時計を見ると、まだ三十分程しか経っていなかった。

 

 「あ、そう言えば、今日完成させてくるって言った漫画は?」


 丁度いい。この時間に漫画を見せてもらえないだろうかと、あの漫画の話題を出す。


 「んー、もうちょっと後に見せよっかなー」


 別に隠すことも無いだろうに、咲良は膝に置いてあった鞄を抱えた。

 しょうがない。

 

 「それなら、待つけど……」


 一通り遊園地を見て回り、観覧車などにも乗り終わると、時計の針は四時を回っていた。

 ここの遊園地のほとんどは乗り尽くしただろう。


 「時間が経つのって速いねー」


 ツリーのある広場の近くまで向かいながら、咲良は水系のアトラクションで少し濡れた髪を乾かしていた。


 「それにしてもここ、アトラクションとか遊具も豊富で飽きないね」


 「そうだね」


 「乗るものも無いし、そこのカフェで何か飲む?」


 「うん、そうしよう」


 咲良が指差したのは、道の途中にあった、遊園地に良く似合っているポップな喫茶店だった。

 そこで飲み物でも飲みながら、雑談をして残り二時間の隙間を埋めることにした。


 「……あ、そろそろかな」


 「じゃあ、行こうか」


 六時の十分前くらいになると、温かいココアを二人でテイクアウトしてから、ツリーのある広場へと向かう。

 ツリーの近くには沢山の人が集まっていて、側のベンチも空いていなかった。

 

 「でも、思ったよりは混雑してないね」


 よく見渡してみると、一部に沢山の人が集まっているだけで、他の場所は所々空いているところがあった。

 そこへ向かって人混みをすり抜けながら歩く。


 「あ、ここからでも良く見えるよ!」


 一歩後ろを歩いていた俺に手招きする咲良について見ると、確かに悪くはなかった。

 まだ光っていない暗いままのツリーを見ていると、『残り三十秒です』というアナウンスが流れる。

 それから暫くしてすぐ、十秒のカウントダウンが始まった。


 「「五! 四! 三! 二! 一!」」


 回りで見ている数人の女子高生達などに合わせて、咲良と俺も一緒にカウントダウンをする。

 暗くなっていたツリーの灯りが、一気についていく。

 赤や緑や青。


 「綺麗だね……」


 隣に立つ咲良が呟く。

 もっと賑やかになると思っていたのだが、思いの外綺麗で見とれてしまう。


 「そうだな……」


 ツリーの光りに見とれたまま、俺はそう返した。

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