二十八
朝から暇な俺が、いつものようにパソコンを開くと、手元に置かれた黒色のスマホが液晶画面を光らせた。
なんだと思い、画面のロックをスライドさせる。
来ていたのは、咲良からのメールだった。
一昨日にアドレスを交換してから初めてのメールだ。
『やったー! 今日から冬休みだよ』
『三週間くらいしか無いけどな~』
くるくる回る椅子を、足を使ってゆっくり回しながら、スマホで文字を打っていく。
『クリスマスイブの日も楽しみだよ』
一昨日、目の前に突き出された広告の事を思い出してみる。
『だな』
何故だか急に落ち着かなくなって、どことなく視線を彷徨わせる。
咲良が完結させてくると言った漫画が気になるということもあるのだろうけど、なによりクリスマスイブに女子と二人だけで出かけることの方が緊張していた。
『和樹は、どんな服が好みなの?』
そんなメールに、自分の好みの服を着てきてくれるのかとも期待する。
『うーん、派手で露出が多いのは苦手だよ。紺色とか好きかな。落ち着いてた方が好き。』
『成る程~、有り難う』
くるくると回していた椅子を足で止めて、机に突っ伏した。
同時に背中に掛けていた毛布が、ズルッと落ちる。
「特別な感情……」
呟いて、胸元に手をあてる。
ぐっと手を握ると、それに巻き込まれた服が、くしゃっとなった。
「美香……」
自然と、その名前を呟いた。
まだ好きな人。
もう居なくなってしまったけれど、美香の存在も、美香に対しての気持ちも、いつかは諦めなければいけないのだろうか。
居なくなってしまった人のことをいつまででも想っていても、何も始まらないのだろうか。
意識が、ふっと、暗闇のなかに沈んだ。
どうやら寝ていたらしい。
目を覚ますと、時計の針は夜の七時をまわっていた。
起き上がろうと力を入れた手に、かさっとした紙の感触が触る。
『和樹が好き。』
「え……!?」
思わず椅子から立ち上がってしまった。
「えっ、えっ……?」
動揺と同時に顔も赤くなる。
美香のカミ回しではないはずだ。
……と言うことは。
心当たりがあるとしたら……まさか、この間のカミ回しも。
「咲良……!?」




