二十七
結局漫画の事は自分から聞けないまま、12月に入ってから暫く経った朝。
「おーい!」
いつもの通学路を学校に向けて歩いていると、後ろから声をかけられ、振り向く。
はぁはぁと白い息を吐きながら走ってくる咲良を見ながら立ち止まる。
「おはよ、咲良……」
「見て、これ」
「おわっ」
歩き出そうとしたところでいきなり目の前に突き出されたのは、一枚の広告だった。
「ここ行かない?」
その広告に目を通すと、『十二月二十四日』とか『クリスマスツリー』など、クリスマスイブ関連の文字が飛び込んでくる。
そして広告の真ん中には、鮮やかに彩られた豆電球の光に包まれるツリーの写真があった。
「ここ?」
「うん、駄目かな?」
「駄目では無いけど……」
女の子と二人っきりでこんなところに行ったことは無いし、結構驚いている。
「じゃあ行こ?」
「うん」
咲良も随分と楽しみにしているみたいだし、付き添うことにした。
「じゃあ二十四日に、漫画も完成させて持っていくよ」
との事だった。
学校も、すっかりクリスマスの雰囲気に包まれている。
廊下や教室で、ちらほらとクリスマスの予定をたてているカップルが集まっていた。
「えー、いよいよ明後日からは冬休みですが、事故などに気を付けて過ごすように。勉強にも力を入れてくださいね。その他の注意事項、宿題などに関しては、しっかりプリントを見ておいてください」
夏休みよりかは少ない宿題を配り終わって、明後日から始まる冬休みについて話す先生の話を少しだけ聞き流しながら、何も考えずに、ただボーッとしていた。
瞬きをすると同時に意識をはっきり戻した頃には、先生の話がもうすぐで終わるところのようだった。
授業も残り数分だ。
授業の終わりを知らせるチャイムがなると、先生の合図で生徒が起立する。
挨拶をすると、その日は三時間だけだった授業が全て終わった。
「おいおい」
放課後教科書を鞄にしまっていると、横から肩をつつかれた。
見ると咲良が立っている。
その手には、スマホが握られていた。
「ん?」
「私達、連絡先交換して無いじゃん。もしよかったら交換しない?」
と言う咲良に、まぁそうだなと、自分もポケットからスマホを取り出す。
「ほい、完了」
「じゃあこれからは、メールで待ち合わせが決められるね」
「そうだな」
「あ、じゃあ今日は習い事あるから。またね」
「じゃーな」
手を振って走っていく背中を見送って、先程連絡を交換したスマホの電話帳欄を開く。
思えば、女子と連絡を交換したのは咲良が初めてなのか。
アドレスを映す液晶画面を暫く見つめて、俺は家に帰った。




