二十四
でもなぜ、この漫画を描いたのだろう。
あの日あった事を少女漫画風に置き換えてネタにしたのか、それとも、本当の事を描いたのか。
途中で切り替わった咲良の視点の話しは、本当の事なのか?
「……明日には返さなきゃな」
読み終わった漫画を机に置くと、ベッドに横になった。
目を覚ますと朝だった。
昨日は風呂も入らずに寝てしまったらしい。
家を出るまでは一時間程余裕あったため、その間で、服を脱いで風呂に入る。
風呂から出るとバスタオルを手に取って、頭をくしゃくしゃと乾かす。
短い髪は、それだけでほとんどが乾いた。
「……あれ?」
部屋に戻り、髪を乾かす途中で俺がそう声を出したのは、机に、四つ折りの紙が置かれていたから。
「何で?」
美香はもう、居なくなってしまった筈だ。
ここには戻らない。
それなのに、何故。
髪を乾かす手を止めて机に近寄ると、四つ折りの紙を開いた。
『あれ、無い……』
無い?
何が?
そしてこれは、誰の紙回しなのだろう。
「無いって、なんだ……」
髪も乾いたところで制服を着て、時間を知らせるスマホの着信音を聞きながら家を出た。
「おはよ」
学校に着くと、咲良に挨拶をする。
本当に日課になった。
「ねぇ、今朝さ、机の上に四つ折りの紙が置いてあったんだけど……」
教科書を取り出した鞄をロッカーに仕舞うと、咲良に話しかける。
こちらを向いた咲良は、少し無理やりに笑ったような感じがした。
「紙回しのやつ?」
「多分そうだと思う」
咲良の前の席の人物はいなかったので、椅子を借りて、後ろ向きに座った。
「美香が、まだここに居るって事?」
「それは……無いと思うけど……」
「何て書いてあったの?」
「えっと……」
____キーンコーンカーンコーン
言う前に、朝読書を知らせるチャイムが鳴った。
椅子を勝手に借りてしまった席の女の子に席を借りたという報告をしてから、自分の席に着いた。




