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カミ回し   作者: 天川 奏
美香と咲良と俺
19/33

十九

 それから美香と咲良は、俺を通じて数分喋っていた。

 小学校の時の話には俺も参加して、紙回しが流行っていたこと、それらが共通で美香が見えることも話した。


 話も一段落着いて、座っていた階段から立ち上がった咲良が神社の鳥居の方へ走る。


 「美香に会えて良かった。二人とも、じゃーね!」


 「じゃーね」

 「じゃーね、って。……またな‼」


 手を振りながら、咲良は神社に歩いて来た道を戻っていく。

 こっちも手を振り返して見送っていると、咲良の影は見えなくなった。


 「最後に会えて良かったな~」


 隣で立ったままの美香が、言いながら背伸びをする。


 「そうだね」


 「咲良も帰ったことだし、和樹くんも帰りなよ」


 「うん、そうする」


 秋に近づいてきたこともあって、夜も流石に寒い。

 空を見上げても星一つ無く、何処か寂しい。 


 「またね」


 「またね……」


 紺色のスクール鞄を肩にかけなおして、砂利をザクザクと踏みながら歩く。

 少し歩いたところで、ふと、美香が気になって後ろを振り返った。


 「……美香?」


 「和樹くん」


 振り返って見た美香は笑顔だった。

 ただそれは寂しそうで、そして。


 「美香、それ……」


 体は透けていた。


 「……私の心残りは、咲良と仲直りできなかったこと」


 「だから__」と美香は続ける。 


 「私はもう、居なくなるよ」


 「そんな__」


 次第に透けて、見えなくなっていく美香を、一足先に想像する。

 

 「嫌だ……」


 俺は美香が好きで、だけど、やっと会えた美香は死んでいて。

 幽霊で。

いつか別れが来るとか、本当はどこかで分かってたのかも知れない。


「仲直り、手伝ってくれて有り難う」


「美香……!」


美香を空へ連れていくように、丸い蛍のような光が体から上へ上って行く。

だんたんと透けていった美香は、やがて、本当に空へ消えてしまった。


「美香……」


目の中で、まだ残像を残している階段を見つめらながら、名前を呼ぶ事しか出来なかった。


「さよなら……」


階段を見つめた後、呟いて空を見上げた。

さっきまで一番星すら見えなかった空は、バケツでぶちまけたように、綺麗に飾られていた。

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