十七
社にぶら下げられた、提灯のようなものから少し漏れた光で見えた頬は、うっすらと赤く染まっている。
「なに?」
「小学校の時、下駄箱に、紙が入ってた」
一瞬、驚いて肩が揺れると、顔が熱くなっていくのがわかる。
「あれ入れたの、和樹くんだよね」
「あの紙、読んでたの……?」
「……『ぼくは、みかちゃんが、すきだよ。』」
美香が呟いたのは、小学校の時、ノートの端を千切った紙切れに書いた言葉だった。
「読んでたんだー……」
「字、ぐちゃぐちゃだったなー」なんて隣で笑いながら、美香はさっきより頬を赤くしている。
それを、「恥ずかしいから止めて」と言って止めた。
「もう、八時過ぎたかな」
「じゃあ、和樹くんは帰った方がいいね」
心臓の音も少し落ち着いてから、帰る為に立ち上がって、神社の鳥居まで歩く。
「うん、最近受験勉強もしてないし」
「わっ、私のせい⁉」
階段から鳥居までは少し距離があるから、声が大きくなる。
「いいよ。美香に会うの、楽しいし!」
「あははっ、ありがと!」
右手をぶんぶんと振って飛び跳ねている美香を見ながら、こっちも手を振って歩き出す。
最後に、「また明日!」と聞こえて、頬が緩んだ。




