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カミ回し   作者: 天川 奏
美香と咲良と俺
16/33

十六

 「カミ!」


 薄暗い神社の階段に座る影に声をかけ、その方に近づいていく。

 その間も、心臓のドキドキは落ち着かない。


 「説明できた?」


 「うん!」


 「そっか、良かった~……!」


 肩をストンと落としてホッとしたカミ……美香の表情を見ながら、その隣に腰を下ろす。

 石で作られた階段は、ひんやりとして冷たかった。


 「それで明日、咲良がカミに会いたいって言ってた」


 「え、それ本当!?」


 「うん」


 言うと、美香は顎に手を当てて、困ったようなポーズをする。


 「でも、咲良には見えないじゃんね、私の事」


 「俺が通訳するよ。どう?」


 「それでも良いけどね」


 咲良に会いたいと言ってもらえたことが嬉しいようで、美香も楽しそうだ。

 それから美香の楽しそうに笑う笑顔を見て、さっきから騒がしかった心臓が、更に高鳴っていくのがわかる。


 「……美香、ってさ、小学校の時、俺と同級生だったよね?」

 

 「えっ、うん? ……うん」


 いきなり美香と呼んだことに驚いたのか、少し目を見開いていた。

 苦笑いに近い笑いを浮かべて、えへへと頭を掻く。


 「俺が美香を見ることができたのは、同級生ってのと、小学校の頃に流行ってた紙回しが関係してるのかな」


 「うん」


 「なんだ、始めから知ってたなら、そうやって接してくれれば良かったのに」


 言って、空を見る。

 暗くなるのも、随分と早くなった。

 秋に近づいてきて、何処か懐かしいところを突いてくるような匂いが、鼻をくすぐる。


 「うん……ねぇ、和樹君」


 突然に名前を呼ばれて、空に向けていた顔を横へ移すと、こっちを見た美香と目が合った。


 「なっ、なに?」


 耳の奥で、心臓のドクドクという音が鳴っている。

 こんなになるなんて、俺はまだ、やっぱり美香の事が好きなんだと思う。


 「あのね?」


 そう前置きして、美香は目を逸らした。

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