十六
「カミ!」
薄暗い神社の階段に座る影に声をかけ、その方に近づいていく。
その間も、心臓のドキドキは落ち着かない。
「説明できた?」
「うん!」
「そっか、良かった~……!」
肩をストンと落としてホッとしたカミ……美香の表情を見ながら、その隣に腰を下ろす。
石で作られた階段は、ひんやりとして冷たかった。
「それで明日、咲良がカミに会いたいって言ってた」
「え、それ本当!?」
「うん」
言うと、美香は顎に手を当てて、困ったようなポーズをする。
「でも、咲良には見えないじゃんね、私の事」
「俺が通訳するよ。どう?」
「それでも良いけどね」
咲良に会いたいと言ってもらえたことが嬉しいようで、美香も楽しそうだ。
それから美香の楽しそうに笑う笑顔を見て、さっきから騒がしかった心臓が、更に高鳴っていくのがわかる。
「……美香、ってさ、小学校の時、俺と同級生だったよね?」
「えっ、うん? ……うん」
いきなり美香と呼んだことに驚いたのか、少し目を見開いていた。
苦笑いに近い笑いを浮かべて、えへへと頭を掻く。
「俺が美香を見ることができたのは、同級生ってのと、小学校の頃に流行ってた紙回しが関係してるのかな」
「うん」
「なんだ、始めから知ってたなら、そうやって接してくれれば良かったのに」
言って、空を見る。
暗くなるのも、随分と早くなった。
秋に近づいてきて、何処か懐かしいところを突いてくるような匂いが、鼻をくすぐる。
「うん……ねぇ、和樹君」
突然に名前を呼ばれて、空に向けていた顔を横へ移すと、こっちを見た美香と目が合った。
「なっ、なに?」
耳の奥で、心臓のドクドクという音が鳴っている。
こんなになるなんて、俺はまだ、やっぱり美香の事が好きなんだと思う。
「あのね?」
そう前置きして、美香は目を逸らした。




