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カミ回し   作者: 天川 奏
美香と咲良と俺
14/33

十四

 家を出て右に曲がって、いつも通りの通学路を歩く。

 近所の家の前を通ると、その家で飼われている犬に吠えられた。

 朝でシンと静まり返った公園を外回りして、開店したばかりのうどん屋さんのダシの匂いを嗅ぐ。生暖かい空気と一緒に運ばれてきたそれに、朝ご飯を食べ損ねたお腹が反応を返す。

 学校に行くまでの、その間、考えている事の大半が今朝の夢の事で埋まっていた。


 「美香ちゃん」


 幼い頃の雰囲気を残したままの、どこか懐かしく感じる女の子。

 懐かしく感じるのは、小学校の時、俺と美香が同級生だったからだ。

 更に俺は美香の事が好きだった。

 だから、きっと、死んでしまったと言ったカミ……美香の声も聞こえたし、姿も見えた。

 きっと共通点は、それだ。


 「咲良」


 教室に入ると、咲良の座る席に向かう。

 日課になりそう。


 「……」


 え、スルーかよマジですか。


 「さ、咲良、漫画家になりたいとか思った事ある?」


 みんなには知られたくない事だと思うから、耳に顔を近づけて聞く。


 「っ……!?」


 驚いたのか、口をパクパクさせ始めた。


 「なんで、知ってんの」


 「やっぱり」


 「なんで……知って……」


 「美香から聞いたよ」


 咲良が、少し周りをキョロキョロし始めた。

 中学の時の様に、からかわれるかも知れないと思ったのだろう。


 「美香から? ……やっぱり生きてたんじゃん」


 誰もこっちを見ていないことを確認し終えたのか、目を伏せて下を向く。


 「違う、死んじゃったのは本当。残念だけど」


 「じゃあ、どういう事?」


 「俺は、美香が見えるから」


 俺がそう言うと、咲良がまた眉を寄せ、理解できないと言った胡散臭そうな目で見上げられてしまった。


 

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