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カミ回し   作者: 天川 奏
美香と咲良と俺
13/33

十三

 『和樹くん、もしかして、美香ちゃんの事好きなの?』


 まだ幼い顔をした男の子が眉を寄せながら、こちらを見てくる。

 これは、夢だ。

 俺は夢を見ている。


 この間と似たような空間……教室に、低い椅子と机が並べてあって、クラスのあちこちで取っ組み合いをしたり、お喋りをしたりしている同級生達が目に写る。


 『美香ちゃん……』


 美香と言う名前には、確かに聞き覚えがあった。

 咲良が言っていた名前。

 そして、その名前は、俺が何故か懐かしく感じる女の子の名前であった。


 『和樹くん、美香ちゃんの事よく見てるもん』


 えへへーと笑う同級生。

 確かに、この頃の俺には告白したいと思っていた女の子が一人いた。

 それで告白しようと紙に書いて下駄箱に入れたが、それを読まないまま、きっとその子は引っ越して行ったと。

 ついこの間の夢で見た。


 『美香』


 クラスを見渡すと、一人の女の子に目が留まった。

 一番後ろの机で、静かに本を読んでいた女の子。

 この子が美香ちゃんだろう、そう思ったのは、喋りかけて来た同級生も、その女の子の方を見ていたからだ。


 『確かに、好きな子はいた』


 『んー? どういうこと?』


 『美香ちゃん……?』

 

 俺は、トテトテと美香ちゃんの方へ近寄る。


 『……何?』


 返された声は、綺麗だった。

 そして。


 『え……』


 正直、同級生だった美香って言う子の顔は、はっきり覚えていなかった。

 好きだったけど記憶は曖昧だし、その美香ちゃんが転校してしまってからも会っていなかったから。

 ただ、それでも俺には、わかった。

 

 本から顔を上げた美香は、幼い頃の顔の雰囲気を残した女の子は。

 

 『カミ……?』


 間違いなかった。

 

 「はっ……?」


 カーテンから漏れる明るい光で、朝だとわかる。

 ついさっき見ていた夢は、まだ頭の中に残っている。

 心臓が、やけにうるさく鳴っていた。


 「カミ……ミカ……?」


 さっきの光景が頭をよぎり、知らぬ間に言葉を唇が紡いでいる。

 本から顔を上げた美香の顔は、咲良との仲直りを手伝って欲しいと言ってきたカミと、そっくり似ていたからだ。

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