十一
たたたっと教室の外に出ていく咲良を、少し追いかける。
「おい」
俺の言葉で呼び止められ、歩くスピードが遅くなった。
「何、変態くん。まだ何か?」
ぐふぅっ。
変態だと?
畜生。
「あのさ、そもそも、喧嘩した理由は何なの?」
「……別に、話したくない」
話したくない?
それだけ嫌な喧嘩だったのか?
女子こえぇ……
「あんまり深く関わんないで、ストーカーくん」
「ぶぐっ!」
ストーカーになったし!
「あ!」
またトイレに逃げられた。
トイレ、許さん。
でも、まぁ、カミから聞けば良いか。
「なぁ、カミ」
この日俺は、階段には座らず、社の柱にもたれていた。
カミは階段に座っている。
「喧嘩した切っ掛けって、何なの?」
「うんー」
「カミが自分から謝るってことは、カミが悪いことしたの?」
「うん……」
カミが、手をいじいじさせる。
女子の事情なんて、わかんねーからな。
「咲良、絵が得意なの」
「うん」
「でね、それで咲良、漫画家になりたいって言って、漫画雑誌に応募したの。そしたらね、連載が決まったの!」
「え、凄いじゃん……!」
驚いた。咲良が漫画家になりたかったなんて、想像できない。
カミは、でしょ! と言ってから、また俯いた。




