十
「よし」
仲直りのお手伝いを初めて二日目。
まずは、カミが死んでしまったことから話そうと思っております。
「おはよー……」
静かに挨拶をして教室に入る。
それから何食わぬ顔で咲良に近づく。
「おはよ……」
声をかけると、少し睨まれた気がした。
……気のせい? 気のせいにしちゃって良いのかな?
「昨日の話なんだけどさ」
「なに、まだ何かあるの?」
笑顔とは真逆のものが、ここにある。
「あ……咲良が知らないみたいだから言うけど、カミ、死んじゃったんだよ」
「だから、カミって?」
あ、食いつくところそっちか。
すみません余計な言葉を入れてしまって。
「えっとー……」
咲良が昨日言ってたことだと、カミは美香って名前になるって事か。
逆にしただけだ。
「美香。美香は、もう死んじゃってるんだ」
「……は? 私が知らないことが、何であんたに分かってんの?」
わー、美人さんから繰り出される言葉がこわい。
「いやあの、」
「もしかして、付き合ってたりしたの?」
「そんなことないっ!」
確かに、何か変な胸騒ぎはするけどっ?
恋愛ではないと思うな! 俺!
「で、でも、美香が死んだのは本当なんだよ」
「そんなデタラメ信じないし。私に近づく為の口実なら、もっとお断りよ」
えぇええ……
大人しめとかいうイメージがめっちゃ強いけど、何かすげー。
これが本性とかいうやつか。
「咲良、なんにも聞いてないの?」
そう訪ねると、咲良の片側の眉が、ひょっと上がった。
「中二になって友達になったと思ったら喧嘩しちゃって、謝りもしないまま引っ越していっちゃったんだから」
そういや、そうやって言ってたな。
「退いてくれる?」
言うと、また教室を出ていってしまった。
今日も周りから視線を感じるが、俺は気にしないぞ。
うん。




