一
『私は____』
頭の中で、何かが聞こえる。
『起きて』
「誰…………」
「おい宮川、起きろー」
「うわっ……!」
担任の間延びした声で目が覚める。
俺は今まで夢を見ていたらしい。
机から顔をあげた勢いで、膝を机の裏側にぶつけた。
そうか、ここ学校だった。
夜中までしていた受験勉強の疲れが出たのだろう。
いつの間にか居眠りをしてしまったらしいが__
「……これ、何だ?」
中学から変わらない、木製の、少し小さくなったと思える机の上。
そこには四つ折りにされた、小さな紙が置いてあった。
「誰が__ 」
投げ入れたのだろうと周りを見渡しても、目が合う人は誰一人いない。
「……イタズラ?」
何が書かれているのかと、四つ織りの紙を開いてみる。
『寝ている間、私は貴方に話しかけることが出来ます。』
「寝ている間……」
つい先程に起こった出来事を回想する。
確かに、誰かから話しかけられていたような気がしていた。
「宮川ー、聞いてるのかー?」
「わっ、はい! すみません!」
寝ている間、俺がその紙と話すことが出来るとわかったのは、この頃だった。
高校三年、受験生の夏に起こった、不思議な物語。