第七話 著たい服を選ばせてくれる人
「シャルロット、この城には何とな、ピアノがあるんだぞ!」
「すごい!」
「見せてやろう、おいでシャルロット」
アルは私を抱き上げて移動するのがお気に入りだった。
私はアルの首元に抱きついて、落ちないようにする。
そうするとアルがにやにやと笑うので、「落とさないで!」とお願いするのだ。
「落とさないぞ、だがシャルロットもっとしっかり抱きついてくれ」
「落ちそうなの? 落とさないでね、怖いの、とっても」
「シャルロット、この俺をもう少し信じてはくれまいか」
微苦笑し、アルと一緒に向かった部屋には確かにピアノがあったけれど、
キーの音と多分、音程があってない、嫌な響き方をする。
「どうした、シャルロット」
「……このピアノ、直さないといけないかも」
「ふむ……ではあいつを呼ぶか」
「あいつ?」
「同じ吸血鬼仲間がいるのだがそいつは村人に嫌われていてな。
俺からすれば、けっして嘘はつかない判りやすい良い奴なのだがな。
滅多なことじゃ会ってくれんのだ。
とても器用だぞ」
「その人なら直せる? お願い、アル!
私、お昼寝もおやつ用のトマトも我慢するからっ」
私が頼み込むと、アルは嬉しそうに顔を輝かせて、
ぎゅうっと私に抱きついた。
満面の笑みで、でれでれとしている。
「うんうん、シャルロットは素直だな。
素直な生き物は全て可愛いものだ。よし、呼んでみよう。
五日は待ってくれ。
……その間にシャルロット、歌を歌うための衣装を作ろう!」
「ええ? こ、この服じゃ駄目なの?」
私はそう言ってアルから少し離れて自分の著ている修道服をまじまじと見直す。
「シャルロット、女の子はオシャレが大事だと俺は教わって生きてきた。
もっと可愛い服が着たいだろ? シャルロットはどんなのが著たい?」
アルに問いかけられて、思いついたのは……。
「お、お姫様みたいなの……」
恥ずかしいから、アルに抱きついて、真っ赤になる顔を隠す。
だってちょっとこうきらきらひらひらしたものに憧れるのって悪くないと思うの。
しかもアルの作る洋服って、結構完成度高いから、可愛いの。
アルは、噴き出して、私の背中を軽く撫でて、「承知した」と頷いた。