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第二話 活き活きとする吸血鬼


「何か好きな物はないか? そうだこの絵画はどうだろう? それとも宝石か?」


「そんなのない、帰りたいのー!!」


 えーんと声をあげて大泣きするほどに、私はショックだった。


 あれから、吸血鬼の城に連れ攫われて、色んな洋服を見せられた。


「これはどうだろうか、いやこれも手堅い。このレースも派手で、お前には映える」


「なんでそんなの常備してるのー!」


「いつか理想の乙女がきたらと、準備していたのだよ」


 雄弁に語るこの男が憎い!


 私はだって、神様を信じなくちゃいけないし、


 神様を説いていかなきゃいけない立場になる予定だったのに。


 吸血鬼になったら、神様も遠くなっちゃうわ!


 それに……。




 傍にあるのは、ビスケット。


 食べてみても、一切合切美味しくない。


 私は死ぬ前は、甘い物は大好物だったのに!


「ひどいよおおお!」


「まぁまぁ、泣くのはやめて、自己紹介をお互いにしないか、同胞よ」


「……私、名前ないの」


 この世界では、自分の名前なんて知らない。


 私の世界では名前があったのに、どんな名前かも思い出せない。


「では俺が名前を与えよう、シャルロットはどうだ?」


「シャルロット……」


「俺の名前は知りたくないか?」


 じっと見つめると、変態男はどう見てもわくわくしている。


 犬だったら尻尾をちぎれそうな勢いで振っているだろう。


 私は、「教えて」と見上げると、男は恭しく私の手を取って一礼する。


「アルカード。アルとその可愛い唇で呼んでくれ、シャルロット」


「……アル、どうして私を攫ったの?」


「いやお前が可愛いからな……と茶化したところでお前は信用してくれないか、


 ならば真実を話そう。単純だ、一人で寂しかったのだよ」


 アルは寂しげに笑いかけて、隣に腰掛けた。


「たった一人でこの土地に居続けてな……、ずっとずっと一人、でだ。故に寂しくて寂しくてどうにかなりそうだったのだよ」


「アル……」


 私はアルの儚くて切ない微笑に心奪われそうになったけれど、


 どこからか誰かの声がしてはっとする。


 誰かの声に気付いた私に、アルが慌てるが、私はアルを放って置いて扉へ向かう。


 扉を開けてくれたのは、眼鏡の少年だった。


「伯爵様、村の皆からトマトのお裾分けっすよー。あ、可愛い子がいる!」


「……アル?」


「ああ、うん、シャルロット、何かな」


「お裾分けされる程の人望があるのに、一人?」


「え、ああ、うん……うん。ドナ、後で来てくれればよかったのに……!」


「この嘘吐き-!!」


「ごめんなさいっ!!」


 傍にあったぬいぐるみを投げつけると、


 アルは投げつけられたぬいぐるみを抱きしめて、しゅんとした。


 ドナと呼ばれた少年はきょとんとしていて、私をじっと見つめる。


「……君は?」


「私の花嫁だ」


 きらきらと輝かんばかりの笑顔をまた復活させて、アルは誇らしげにドナへ自慢する。


「違うわッ。無理矢理噛まれたの」


「無理矢理!? 伯爵様が!? こりゃ明日雨降るな……」


「そんなに珍しいことなの?」


「……ええと、ね。僕は、ドナ・エイメ。この近くにある村の……修道士なんだ。


皆が認めて、この村から伯爵様へこのトマトとかをお届けできる。


それでちょっと関係性が判らないかな、この伯爵様と村の」


 人望がかなりあるのは伝わった。


 ドナが私を気まずそうに見てから、今初めてアルを蔑むように見やり、


 ドナは戸惑っている様子だった。


「伯爵様はね、決して人を噛まずに生きてきて、二百年は経つんだって」


「二百……ッ!?」


 かなりのお爺ちゃんと見た……。


 それならどうして私を噛んだのだろう。


「伯爵様、どうしてこの子を噛まれたのですか?」


「死んだ妻の若い頃に似ていたから……つい、寂しくなって……」


 アルはつまらなさそうに告げてから、私を抱き寄せる。


 抱き上げてから、ぎゅうっと頬にすり寄る――


 体温は感じないけれど、心の暖かみを感じられそうな気配はする。


「シャルロット、大事にする。だからどうか傍にいてくれ」


「――いいわよ……でも、でも……順序が逆なのよ!」


 アルの頬を叩くと「有難う御座います!」と聞こえた。



 かくして私は、ど変態に拾われたのでした。


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