第参話 調理実習
今日は調理実習である。
家庭科の先生、『自称』魔法美少女カスキュア先生指導の元、魚料理を実習する事になった。
ちなみに魚料理なら何でもいいらしい。
アイ「・・・なったのは良いんだけどよー。
色々ツッコミ入れていいよな、これ?」
雪の結晶がデザインされた青いエプロンを着けたアイが、友達のダンスに話しかける。
ダンスは黒色のエプロンを装備し、スタイルをしっかり強調させていた。
ダンス「ああ、お前も気付いたか。
これはちょっとヤバイよなぁ・・・」
ダンスとアイはちらっと後ろを振り返る。
そこには『審査員』と血文字で書かれた机と、その後ろで椅子に縛り上げられた半魚人達が喚いている。
そしてその後ろでは、黄色いケーキのようなドレスを着た女の子、カスキュア先生(自称)が物凄く意地悪な笑みを浮かべながら黒板に何か書いていた。魚を串刺しにする絵とか、魚を燃やす絵とか。
現古「止めろギョ!離せウオ!儂に魚を食わせる気なのかサシミ!?」
マンボウ男「ウオオオオオ!ここは何処だ!君達は誰だー!私は、私は無実なんだー!」
カスキュア「イヒヒヒヒヒ!
さあ可愛らしい生徒達、作りなさい!最高の魚料理を!アタシはコイツらの悲鳴を肴に授業を楽しむから!」
アイ&ダンス「この外道ーーーーーっ!!」
第1話 『魚料理を作ろう!』
クラスメイト全員の懇願により半魚人達は野に帰してあげました。
現古「魚は、魚に罪は無いんだイケヅクリ!
畜生お父さん(ダゴ●)に訴えてやるシオヤキ!」
マンボウ男「助けてくれてありがとう生徒達!お礼に後でマンボウダンスを披露しよう!では、去らばっ!」
カスキュア「・・・あ~あ、折角面白い悲鳴が聞けると思ったのになあ」
アイ(うわあ、本気で悔しがってるよ)
ダンス(流石自称『ゲスの女王』。
やることが汚い)
カスキュア「ま、いいや。
皆、魚料理の準備はできてるー?
作り方は黒板に書いてある通りだから、ちゃちゃっとやってみてねー。
それじゃ、作業開始ー」
悲鳴が聞けない事でやる気が削がれたのか、適当に授業を始めようとさせるカスキュア先生。ゲスである。
だがいつも通りなので皆あまり気にせず魚料理を作り始める。
『Go to Next Round Circus』と派手な色で書かれたエプロンを着けたススがピリオに話しかける。
スス「あらピリオ君、魚のさばきかたが上手ね」
ピリオ「ボクはたまにホテルの料理人さんから料理の作り方を学んでるからね。
ちょっと自信があるんだ」
スス「へぇ~・・・」
ススは感心し、改めてピリオの姿をまじまじと見る。
腰まで届く長い銀髪を三つ編みにし、先端には水玉模様の可愛らしいリボンを着けている。
また、エプロンはフリルが沢山付いた純白のエプロンで、ただでさえ可愛らしいピリオの姿を更に可愛らしく仕上げている。
三角巾も可愛らしく付けており、ただでさえ女の子に間違えられそうな整った顔を更に綺麗に仕立てている。
白い制服に秘めた細い腕に、優しく綺麗な指先で包丁を持ちながら料理をするその姿は、正に良妻賢母と言ってしまいそうな独特な雰囲気を持っている。
もし何も考えずに振り返れば間違いなく女子として話しかけてしまっていた事だろう。
その清楚で可憐なエプロン姿に、ススは改めて自分の姿を確認し、ふと思う。
スス(・・・私、ピリオ君に嫉妬して良いかしら・・・?)
フラグ「あらピリオ、凄い・・・似合ってるわね」
別の班で料理を作っていたフラグが目を丸くしながら思わず感嘆の声を上げる。
凄くの後は恐らく「女の子らしいわ」だと言うのは内緒にしよう、とススは心に決意していた。
それを知ってか知らずか、ピリオは可愛らしい笑みを浮かべる。
ピリオ「うん!お父さんがこれを選んでくれたんだよ!」
スス&フラグ((お父さんGJ!))
二人は心の中でガッツポーズを作り上げ、ピリオは楽しそうに料理を作っていた。
とても平和な世界が、そこにはあった。
第2話 『戦おう!』
一方、アイ、ダンス、メル、ルトーの班。
まな板の上には元気に跳ねる秋刀魚がいた。だが誰もそれに手を付けようとせず、ただただまな板の上の秋刀魚を見つめていた。
アイ「・・・この中で、料理できる人・・・いるか?」
ダンス「・・・俺、食べ専だから・・・」
メル「ごめん、僕は台所に立つの今日が生まれて始めて・・・」
ルトー「・・・機械なら、幾らでもできるんだけどね・・・」
あいだんめるると(詰んだー!このメンバーでまともな料理できる気がしない!)
ルトー「あ、アイは料理できるんじゃないのか!?お前子ども育ててるんだろ!?」
アイ「俺の場合はユーが全部やってくれるからあまり台所には立たないんだよな・・・」
ルトー「小学生に台所任せっきりかよ!
メルはメイドが全部やるし、ダンスは食べ専だし・・・こうなったら他の奴の班にとうそ」
危険を察したルトーは他の班へ逃げ出そうとして、
ライ「うなぎの蒲焼きだから雷で作っても良いじゃないか!
電気うなぎ蒲焼き、刺激的で美味しいんだぞ!?」
ガラガラGUY(小)「ヒャハハハハハ!
俺の激辛煮付けを味わいたい奴はいるかぁ!?」
ペンシ「いいかお前達、
魚料理は!川辺でとれたてが一番旨いんだ!さあ川へいこう!山へ登ろう!」
回りの班があまりにカオス過ぎて動けなくなり、くるりとアイ達に振り返り、優しい笑みを浮かべた。
ルトー「・・・・・・頑張ろう、生き残る為に」
ダンス「さ、幸いここには機械いじりの天才なルトーと魔術が得意な俺、あらゆる能力を使えるチートなメルがいるんだ。
皆で頑張れば不可能なんて無いんだ!」
アイ「あれ、俺は?
俺には何か特技とか、自慢できる所とか無いの?」
だんめるると「・・・・・・・・・・・・」
全員がアイの顔を見て、全員が楽しそうに笑う。ひとしきり笑って、何事もなかったかのように作業に戻る。
ダンス「さあ先ずは包丁持つ事から始めようじゃないか!」
アイ「おいいい!
無視するな!いや、しないでくださいマジで傷つくからあああ!!」
ルトー「リーダーは特技・ボケるという特技があるから別に大丈夫だよ!」
アイ「ねぇよそんな特技!ここまでツッコミ以外何ももしてねぇよ!?」
メル「リーダーは、皆から慕われてるって事が特技って事で、ね?」
アイ「ちくしょーめぇ!」
という訳で、第一陣・ルトー!
ルトー「ここは僕が全て終わらせてやる!
なあに料理なんて機械いじりの一つだと思えばなんて事無いさ!」
アイ「まて、ドライバーは料理に使うものじゃないぞ!」
アイが止めようとするが、もう遅かった。
目の前のさんまはあっという間に四輪駆動車に改造してしまった。
ルトー「フハハハハハ!
これが僕の改造能力!名付けて『エター』」アイ「こんなん喰えるかぁっ!次ぃっ!」
ダンス(エターの次は何だったんだ?)
第二陣、メルヘン・メロディ・ゴート!!
アイ「次はメル!
お前が頼りなんだ!」
メル「う、うん!沢山ある能力を使えば何とかなるよね!
それじゃあ・・・バラバラになる能力で魚をみじん切りに」アイ「交代!こうたーい!」
第三陣、 ダンス・ベルガード!
ダンス「俺の魔法があれば料理なんて簡単に終わるぜ」
ダンスが杖を構えながらまな板の前に立つ。まな板の上ではさんまが(気のせいなのは分かってるが)心配そうにダンスを見つめている。
ダンス(さてどうしよう。調理魔法なんて聞いた事が無い。ここは・・・無難に人に頼むのが賢明、か)
「俺は調理が上手そうな悪魔を召喚して代わりに料理を作らせる!
エロイムエッサイム、料理が得意な悪魔よ出てこい!」
ダンスが呪文を唱えると、何故かウネウネした触手の怪物が現れた。
アイ「え、何これ?」
ダンス「あれ?呪文だとこれであってるんだけど・・・おかしいな?」
カスキュア「あー、言い忘れてたんだけどね?」
振り返ると、いつの間にかカスキュアが後ろに立っていた。
カスキュア「この教室では魔法が出来ない結界があるから必ず失敗するんだよ。
そして必ず触手の怪物が出てくるのさ」
ダンス「な、何だって!?」
アイ「外道め!なんでそんな事を・・・あ」
カスキュアに抗議しようとしたアイは自分の体が気づけば浮いている事に気付く。
そして後ろには触手の怪物が触手をウネウネさせて待ち構えていた。
アイ「げげ!?なんだお前そんなにウネウネしやがって!ま、まて俺は男だ!
こういうのは普通女子が被害に合うと相場が決まってギャーーーーーっ!!イヤーーーーっ!!」
カスキュア「・・・・・」
カスキュアがぱちんと指を指を鳴らすと、触手の怪物は消え失せ縮こまったアイがよこたわっていた。
アイ「・・・うう・・・あのウネウネやろー、俺でコサックダンスやらせようとしやがった・・・カスキュア先生、ありが」
カスキュア「バカじゃない、ここはアーッて叫ぶのが定石でしょ常識的に考えて!
あんたまだ悲鳴学が足りないわ!」
アイ「お前は何を言ってるんだ!?
ホントに家庭科の先生か!?」
カスキュア「当たり前よ!
あ、あと魔法使うと今見たいに触手怪物が出てくるから気を付けてね♪」
ダンス「うわあ・・・」
カスキュアは黒板の方に戻る前、くるりとアイに振り返る。
カスキュア「たのし~い悲鳴をありがとう♪」
アイ「うるせえ外道がー!」
カスキュア「外道♪良い響き♪
キャハハハハ!キャーーッハハハハハハ!」
カスキュアはニコニコ意地悪な笑みを浮かべながら黒板へ向かっていった。
第三話 『頑張ろう!』
ルトー「それで、どうすればいいんだこの状況・・・」
メル「後20分、皆はなんだかんだで作り終えてる・・・」
ダンス「万事休す、か・・・くそっ、このままじゃ俺達だけお裾分けになるぜ!」
アイ「・・・」
全員が騒ぎ始める中で、アイはふと思い返していた。
それはユーが始めて魚料理を作った時の記憶だ。
ユーは制服の上に四ツ葉のクローバーのデザインがプリントされた白いエプロンを着ている。
アイ『あれ、ユー?魚料理作ってるのか?』
ユー『うん、パパはいつも焦げた料理しか出さないからね!
私が頑張らないと・・・!』
アイ『・・・。
い、いやーしかし上手い作り方してるなー?
だ、だ、誰から教わったんだー?』
ユー『パパ、目が泳ぎすぎだよ。
ま、いいや。お隣さんから教えて貰ったの!パパにも教えてあげるね!』
アイ『ほう、どれどれ・・・』
アイははっと記憶から現実に戻り、ゆらりとまな板の前に立つ。
ルトー「アイ?」
アイ「・・・美味しい秋刀魚の塩焼きの作り方・・・先ずは包丁を洗って・・・」
アイは綺麗な包丁を洗い、秋刀魚を用意する。
ダンス「ん?」
アイ「秋刀魚のお腹に切り込みを・・・」
ユーに教えられた事を少しずつ思い出しながら、少しずつアイは秋刀魚を調理していく。
三人は黙ってアイの行動を見ていた。
そして、授業の終わりまで10分と言った所で、遂に秋刀魚の塩焼きが完成した。
アイ「・・・皿に盛り付けをしたら、美味しいさんまの塩焼きの完成、です・・・。
皆で仲良く、食べましょう・・・・・・」
ルトー「す、凄い・・・あっという間に塩焼きが出来ちゃった!」
ダンス「凄いな、アイ!ゴブリンズのリーダーやってるだけはあるな!」
アイ「あ、ああ・・・」
メル「よし、それじゃあ皆で食べようか!後片付けもしないといけないしね!」
全員「おーー!!」
この日、皆は美味しく魚料理を食べる事が出来た。自分で作ったさんまの塩焼きを食べながら、アイは心の中でユーに礼を言った。
アイ(ありがとな、ユー。
お陰で助かったぜ)