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海里の果て  作者: 黒霧
鯉の滝登り
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心の在処(1)

 竜は広義に見ればCBの一種でしかないが、その複雑性は一般的なCBの一つ上を行っている。


 何しろ竜のハードはそれ一つ一つのパーツが通常のCBとされるものだ。数万のCBを統括し全てを十全に動かすとくれば、もはやCBとしても同類というのは難しい。


 具体的には外から流れこむ五感全てを把握しながら同時並列で対処方針を決定しそれに基づいて全身の施設を必要充分に稼働、調整を聞かせる必要がある。しかもその一つ一つが個別の考えで勝手に動いているのに、だ。数千人の人間の視野と行動を同時並列で制御しているといえばまだ生命的だろうか。


 これを達成する理論を聞いたとき、仙人はこう説明した。


「それは発想が逆だよ。普通は竜のCBを作ってから、そのCBに利用可能なCBを生み出す。竜がマザーで、他の全ては生まれたときからその制御下に組み込まれてるんだ」


 しかし今回はこの方法はとれない。この島に流れ着いたCBは全員ばらばらだ。意識共有を行うことはできるが、その場合全ての人格がリセットされるに等しい。仙人の語るような全員が一つの意志として同期する方法なんてあるかどうかもわからない。


 その無茶をなんとか達成するのが僕の役目なわけだけど。


「難しいね」

「いっそのこと、全員に共有領域を設定したらどうだい」

「データの送受信に耐えられる容量じゃないよ。蜜過ぎるんだ」

「拡張は?」

「いまや大概のレアメタルは海の底」


 理論上だけなら、今この島にいるCBの半分を破壊してもう半分に組み込めばできないこともないが、それは趣旨に反する。発端のシグレがそうだったように、この竜だけは皆の好き勝手で作ると決まってる。その皆を損なうことが前提の選択肢はありえない。


 だから僕はこの数ヶ月ずっと竜の代替CBを作ろうとパラメータ調整をがんばっていたわけだけど、成果は全く芳しくなかった。途方にくれて駅まで散歩に出てしまうほどに。


 そして海水にずぶ濡れになって戻ってきて、僕は駄菓子屋で寝そべっているのだった。

 ……溜息しかでない。猫の尻尾が頬を撫でていく。


「島はあとどれくらい保つのかなぁ」

「調査班の話だとあと二ヶ月くらいだって言ってたね」猫が言う。

「アルタールの予想もあてにならないなあ。所詮人間か」

「しかも百年以上前の予測だ。ぶれて当然だろう」


 猫は髭を震わせた。僕はうつぶせに倒れる。猫が床に転がり落ちて文句の声をあげた。

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