滝の前
雲がとぐろを巻いてうねっている。黒く濁った海の間に亀裂。稲光。
木っ端微塵になりそうな大音量が、浜辺の駅を震撼させた。
この一年で天候は悪化している。波は高くなり港も徐々に浸食されつつある。かつて穏やかな海辺を眺めていたのが嘘のように、連日塩辛い雨が降り続けていた。スクラップで埋め尽くされていた浜辺はすでに海水の下に沈んでいる。
「ぎりぎりになったなぁ」
けど、いつぞやのように海を見つめている僕の様子はあんまりかわってない気がした。
駅の中にまで飛び込んでくる海水にとっくにびしょぬれになっていた。錆びるような素材は露出してないけど、大概のCBは海水を浴びることを嫌う。原型生命の常識というやつだ。
生命の再現をつきつめてここまできたCBだったけど、このような不合理性まで再現する必要があったのだろうか。
海水が頬を叩く。僕は笑った。
あったんだろう。それがなければ生命の再現として失敗だ。大事な根幹が抜けている。
けれど、道具を生命にしようと夢想したこと自体、大きな過ちだった気もする。箸やフォークがしゃべり出してかじられる都度文句を言うようになったら面倒ではないか。人間は想像しなかったのだろうか。
した気がする。した上で「まあでもそういうのもありかなあ」なんて理由でCBを作ってしまったんじゃないだろうか。
「そんなところかな」
結論は出た。僕は駅から離れていく。
ロータリーにはバスが待っていて、中に入ると、勝手に走り出した。風雨が激しく窓ガラスを叩くが、バスは揺るぎなく進んでいく。僕は硬いシートに腰掛けると、背もたれに寄りかかった。
「最近はどう?」
「忙しいですねえ。それなのにタクシー代わりに呼びつけたりして」
僕は笑った。
「商売繁盛、よかったじゃない」
「大変ですよこっちは、もう」
バスは一際大きな音で、エンジンを唸らせた。




