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海里の果て  作者: 黒霧
源流探検
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エピローグ3 解離の果て

 海には光が射し込んで水を溶くように闇が揺らいでいく。水平線はにわかに黄色く染まりだし、朝日の訪れを無言で告げる。


 駅の向こう、がらくたの押し寄せた浜辺に僕は座っていた。右手には巨大な影。墓標のように身じろぎしない、錆びた船の存在がある。

 あの船の先には何があるのか考えていた。


 答えはまだでていない。

 きっと、答えが現れるまで、答えはでない。


 そんな風に思えるようになるまで、三時間ほどかかった。


「お前があんな風に他者を誘うとは思わなかったよ」


 音もなく傍らに寄り添ってきた黒猫がじろりとこちらを睨みつけてきた。彼女を誘ってからどことなく不機嫌に見える。


「ここに来ればあえると思ってたんだね」

「まあ……」

「何故あのドールなんだい?」


 CBでも人型だけは特別にドールと呼ばれている。

 ドール。人形。人と明確に区別するための名前。

 人の形をしているけれど、人の中身をしていない、そんな存在。


「この島で見た、最初の生き物だったからかな……」

「シグレはどうなんだい。あいつだって前から突っ走ってたろ」

「今のシグレならどうなっていたかわからないかも」


 つまるところ、何を目標としていたかの違いだ。今すでにここにあるものをいじり回したいのか、今ここにはない何かを作り出したいのか。

 シグレは前者だった。黒猫はここにはないものを見ていたが、悲嘆しているだけだった。


「僕の場合、何かを追い求めるということで相手の価値を決めてるんだろうね」


 その中で一番鮮烈だったのが月の彼女だったというわけだ。

 その彼女は、昨夜のうちに出発した。事情を話すのは後にすべきだったかなとちょっとだけ残念な気分になったけど、まあ、こういうのもありだとは思う。


 彼女が結局のところ歩き続けていたように。

 僕達が結局のところ在り続けているように。


 でも、ありだからといって、いいとは限らない。


「ん、そっか。わかったかも」

「何がだい」

「アルタールのことが」


 石碑の意味。竜の記憶を消した理由。


「そういえばさ。この島に名前ってあるの?」

「さあね。けど、必要があるのかい?」

「いや。あるかないか知りたかっただけ。……よしっ」


 立ち上がる。

 星明かりは消えていた。

 海はしわくちゃの和紙を広げたような白さだった。

 僕は振り返る。線路の上を音を立てて電車が左から走ってくる。

 その電車は駅で止まらず、右へと走り去っていった。


 僕の始まりは乖離の果てだった。

 もうこの星に人はいなくて、けれど誰もがそれを憧れ続けていて。

 それには決して共感できない、無人の駅から始まった。


 でも線路がどこまでも続いているのなら。


「決めた。竜を作ろう」


 この解離の果てから始めるのも、おもしろいと思うのだ。

ようやく解離の果てにたどり着きました。

今回はここまでです。次の一章で完結の予定です。

それでは、また来月……。

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