道に迷う
「道はこれであってるんだろうね。あいつらに道を聞いたようには思えなかったけど」
「どうなんだろ。あってるといいよね」
表情を変えずに応じてみせる、黒猫はどこか遠い昔を見るように顎をあげて目を細めた。
「……帰り道くらいはわかるんだろうね」
「島の端まででればきっと戻れるよ」
理屈上は、膨大な時間か計算力がある場合、効率なんて考えなくても力押しでどうにかなるというものだ。すなわち、今になって仙人達にシグレの居場所を詳しく説明しなかった事を思い出した。
……仙人達にはシグレの事を話しておいた。そして一度村に行って話す事を勧めてみたらあっさりとうなずいて旅だってしまった。
出会ったときの仙人なら、決してそうはならなかっただろう。化け物退治の後でもどうだったか。
「すごいな、彼女は」
白亜の髪。青い瞳。
月を射るように見上げていた、一人の少女を思い出す。
「彼女に会うとみんな旅立つね」
「あんたも片棒を担いでるように見えるよ」
黒猫は鼻を鳴らした。僕の肩にのったまま、尻尾を揺らす。
……なかなかに心外な言い分だ。シグレじゃあるまいし、他者を促したり引っ張ったりはあんまりやらない主義だ。そもそも他者にはあまり興味ない。
CBとしては少し例外かもしれない。
普通、CBは誰かに必要とされて作られる。彼女が言った通りに。それ故に、必要とする側……少なくともそうと想定された相手に関心を持つようになる。黒猫を助ける時だって、そこ利用した。
じゃあ僕はなんだろう。
……そもそも僕はどういう意図で作られたのだろう。僕を作ったのは最後の人類、すなわちアルタールのはずだ。だけど彼女に関する記憶はない。墓碑から出てきた竜だって、役目を果たしたら全データを失ってしまった。
アルタールは執拗に自己の痕跡を潰している。
何か企んでいたと思う。
その結果の一つが、彼女の痕跡の消失なのだろう。
しかし一方で、彼女がいた事までは消していない。完全に痕跡を消すのならそうしたっていいはずだ。だけど……。
「あれ」
はたと足を止める。黒猫が尻尾を振ってバランスをとった。
「黒猫は竜の事はよく知らないんだよね」
「ああ。というか普通は知らないよ」
「それ、ほんと?」
「どういう事だい」
「アルタールの事は?」
「よく知らないよ」
「君を直した、あの整備士は?」
「あいつは古いCBだからね。知ってるんじゃないかい?」
考えと共に歩を進める。
「これから会いに行く相手はどうなんだろうね。プラントの管理者は」




