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海里の果て  作者: 黒霧
恋の島
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流れ着く島

 気が向いたので眠っていた

 ら、起きろと言わんばかりの大音量が耳をつんざいた。

 めきめきめきりごきゃばきゃと軽く大破壊を想像させる音は、デフラグ中だった僕を緊急起動させ、休憩室から駅のホームへと引っ張りだした。そして


「いやー。まだ生きてたんだな、お前ー」


 海の向こうからやってくる、鋭角的な(ふね)を見た。


***


 ゴミの島。なんて呼ばれた頃もあったとか。


 当時。衛星削って資源枯渇に備え始めた人類はもはや地球の資源にさほど依存してはいなかった。放っておいても次々に生産される生活必需品。時間当たりの生産数一千万体とも言われるロボットたち。

 いやーお前そんなにいるのかよ、なんて誰かつっこんだりしなかったのか。

 ただでさえ、地球人工は年々減っていたというのに。


 で。そんな中、肩落ち品や壊れたものが押し寄せて生まれたゴミの島。


 相対的無限の資源。ゼロに近づく需要の曲線。あぶれた物達は錆びて色あせ軋みながらこの島にたどり着くのだった。


 ***


 てなわけで。堆積物で奇妙にうねり膨らんだ海をかき分けて、鋭角的なフォルムも勇ましい軍事用強襲揚陸艦がやってきた。三年ぶりくらいかなあ。


「いやー。まだ生きてたんだな、お前ー」


 線路をまたぎ、フェンスをよじ登り、打ち捨てられた機械達の間から生えたたくましくもうっとうしい草をかきわけ海辺によれば、茶色い斑点をたくさん纏った老朽艦が待っていた。


「どうよ、今回は大量?」


 船は答えない。……まったく。

 仕方ないので、船の周りに漂う、新しいお仲間を観察する。

 このあたりの海流を漂う廃棄品をまとめてひっさげてくるのがここ百年ほどのこいつの趣味だ。


 で。その戦利品から掘り出し物を探すのが今日の目的なのだった。


「まーそう簡単にいかないけどねー」


 ……いやこう、色々あるにはあるんだ。だけどどれもみたことも聞いたこともないような物ばっかりで、専門知識がないとちょっと、無理。うん。


 それでも半日くらいは飽きずに眺めていた。いちいち検分して、これはなんだろうあれはなんだろうと考えるだけで結構な時間はつぶせるのである。特に今回、こいつの連れてきた数はかなりのものだったので。


「半日もホームから離れていると思ったら、何をしとるんだか」


 振り返る。黒猫がいた。


「寝てるんじゃなかったの?」

「寝てばかりいては体が錆びるわ」

「よしよし、たまには錆を落としてしんぜよう」

「さわるでないわ」


 前足で叩かれた。


「……しかし、こいつの姿も久しぶりだのー」

「三年くらいだっけ」

「うむ。十年くらいかかるかと思って、気合いを入れて整備してもらったんだがなぁ」

 少し寂しそうに、猫は船を眺めた。


 今の時代。いずれゴミとなる物を求める者はどこにもいない。

 今回の旅は長かった。いったい、どこまで探しに行ってたんだか。

 ……どこまで探しに行って。

 この旅を。

 終えようと、思ったのか。


 役目を終えて、船はもう答えない。

 日が暮れるまで、僕達はその姿を眺めていた。

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