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海里の果て  作者: 黒霧
竜の苗床
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未来思考


 竜――水没する星からあらゆる生命体の脱出を試みた箱船作戦、その際にCB側から提案された輸送システム。小型艦で十メートル級、最大級で数百キロの全長を持つものもいる。決まった形はなく、大抵は原型生命……モデルとなった生物……を拡大し、物理構造的に運動に耐えられる骨格、装甲を与え、莫大な量のエネルギィ生成を行うジェネレータ=バルダーがそれを動かす。

 しかし竜にとってもっとも特徴的なのは、他のCBを己のうちに取り込む事が可能という点である。環境維持、事故修復、体内における様々な活動を含めた複雑な運用に耐えるため、竜は個体としてではなく、体内にいる複数のCBの総意として仮想人格=アバターが形成される。


 それをわたしは見たことがない。


/*/


「どうしよっかなぁ」


 そうぼやいたのは、僕じゃない。


 島の北西部。海風が木々にさえきられて、香りの遠のいた島の内側。中心に向かうほどに盛り上がる土地は枯れ草に覆われ、一歩ごとに風をひっかく音が賑やぐ。


「うーん」


 そう唸るのも僕じゃない。港から離れて早二日。いい加減、相手をしてもいいかなと、僕は傍らの猫を見る。すると彼女は顔を背けた。尻尾で円を描く遊びに夢中……なわけじゃなさそうだ。機嫌が悪いのはなんとなくわかった。


 ……なんとなく。なんとなくかぁ。

 また、バグった反応だ。CBならネットワークを通じて意識共有できて当たり前なのに。


 とはいえここに流れ着くような奴は、誰も彼も生きたいわけじゃなし。ただ在るから在り続けているだけならば、ネットワークを通じさせて効率よく効果的に何かをする必要もない。


 とはいえ。


「むぅ……」


 隣を見た。

 シグレが腕組みしていた。


 ここしばらく、彼女はずっとこんな感じだ。浮かない表情で、何が不満なのか唇をとがらせ、かと思えば気力無く遠くを見て惚けたり。ついにぼけたかと聞けばドロップキックをいれてくるくらいには元気だけど、からかわなければ元気がないのは問題があると言うべきだろう。何しろ、からかいにはなかなかに高度な技能が必要なのだ。


 こういうときは、意識共有できたら楽なのになあ、と思う。

 けど、無いものねだりをしてもしょうがない。現実はせっかちなので常に今ある手でしか解決を許さない。そう、意識共有できないくらい何だというのだ。一度もやったこと無いんだからどうという事もない。

 ということで、いつも通りに。


「ねえ」

「にぎゃー!」


 手をはたかれた。


「なんてことするんだ」


 シグレは半眼。


「こっちの台詞。いきなり頬をつねるとは何事か」

「細かいことを気にしては立派な胸にならない」

 関係無いけど。

「詰め物いれると動きにくいでしょ」

 ……応答されてしまった。

「あー。えー。で、何で唸ってるの?」

「んー」


 彼女は遠くを見た。意志疎通に関する回路が焼き切れているとしか思えない。修理を要求する。誰に? ……さらにバグると困るなぁ。元からバグってるにしてもよりマシという考え方が世の中にはあるのだ。


 そう思ってると、彼女は口を開いた。


「何作ろうかなって、考えてた」


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