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海里の果て  作者: 黒霧
竜の苗床
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竜の残骸

 つまりこういうことだ。

 竜の目である仙人は、ある日漂流してきた竜の牙を何を思ったか助けようとした。だが整備士でもない仙人にできたのは、追加パーツをでたらめにつぎはぎすることだけ。その上プログラムの根底にあったのは「竜の牙としての機能を復旧する」というオーダー。

 結果、再起動した竜の牙は現在のハードへの意識の最適化を果たし、正当なる魔物への進化を遂げることとなった。



「やけに素直だねこいつは」


 黒猫が仙人の背中をていていと叩く。仙人は苦笑を決め込んでいた。

 やめなさい、なんて言って聞く相手じゃないのはわかってたのでここは仙人に耐えてもらう。手が届かないという理由もあった。


 僕はスクラップの丘に横なったまま、仙人はその傍らに腰を下ろしていた。事情を聞いてみたらことのほかあっさりはいてくれたのは、まあ、予想通りというところ。


「僕に素直なのは、いろいろ勘違いしてるからだよ。錯覚というか」

「気づいていたんだね」

「まあ。単に説明が付くとしたらそうかなーと思ってただけですよ」


 僕のことを竜と言ったのはなかなか記憶に鮮明だ。

 竜の端末である彼は、竜には素直なのだろう。

 とはいえそれだと矛盾が一つ残るんだよなあ――。


「牙はなんで僕を襲えたの?」

「牙と爪は感覚器ではないから、独立性が強いんですよ」仙人は言った。「そのかわり指向性は強いですが。爪であれば、触れた物はともかく砕け、とか」

「なるほど」


 頷きつつ、視線の向きを変える。

 あー……ずいぶん派手に壊して。


「まあ、あのまま任せておけば、元の形に修復してくれると思いますよ。ただプログラムはいじれないので、元の人格に戻るかはわかりませんが」

「おそらく大丈夫だろう。竜の端末はハードが変わった時点でイニシャライズするようになってる。元のハードに近づけば、仮想人格もそれに最適化する」

「普通のCBとはずいぶん違いますね」

「自我の在処が別だからね。僕たちは竜の端末という意識が強すぎる」


「そんな奴が、なんで竜から出てきたんだい?」


 暇そうにしていた黒猫が口をきいた。仙人はさて、と顔を彼方に向ける。黒猫はふしゃーと言ってかみついた。……なぜ、僕に?


「答えてよ」僕は聞いた。

「……まあ、簡単な話なんですよ。わたしの母胎は死にました。そのあとランダムに行動を決定したら、ここに流れ着いた。それだけですよ。最初は、あの船にゴミとして運ばれてきたんですけどね」


 あかしてしまえば簡単な話。聞くまでもなかったかなと、ちょっと溜息をついたり。


「あのさ」

「はい?」

「牙を助けようと思った理由は、自己保全機能? それ以外?」

「………………」


 仙人は長いこと黙っていた。

 ……まあ。これも、聞くまでもなかったかなと、僕は目をつむった。


 脚、直してくれないかなぁ……。

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