ノットスペランカー
「……無事ー?」
「ああ。あんたも大丈夫そうだね」
そうだね、と言いながら立ち上がる。手は無事。足も無事。頭もたぶんとれてない。けれど周囲は真っ暗闇。視覚調整。見えた。
「通路?」
「みたいだね。スクラップの山の下は何かの施設になっていた、と」
「いや、ないでしょ、それは」
偶然を僕は信じない。幸運がこの世に転がっているのなら、人間においてかれたCB達が何百年もへこんでたりはしなかっただろうから。
だからこれは意図的な罠。おそらくは、仙人の。
意図するところは……まあ、一つ二つは想像できるけど。
「ま、僕のせいだろうしなあ」
「何のこったい」
「……よーしよーし。たかーいたかーいったい」
可哀想な物扱いしたら引っかかれた。尻尾たててふしゃーの構え。よし、うまく誤魔化せた。黒猫は愉快犯なくせして心が弱いので扱いは慎重にというコメントが必要だ。
「ま、先に言ってみようか」
前か後ろか。選択肢は二つきり。踊らされるのは嫌いというやつも世の中にはいるようだけど、そんなのどっちでもいい僕は平気で道を選んでく。考えず、望まず、歩くだけというのは存外気楽だ。
気楽なだけで、楽しくはないけど。
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ほどなくしてコントロールルームっぽいところにたどり着いた。途中、崩壊した通路に行き先を阻まれたり壁にあいている穴を通ったりと道程探索にかなり手間取ったけど、黒猫とひたすら愚痴りあってただけなので割愛する。
しかしてこの部屋。僕の予想外の物があった。
「あれ。あんた達何してるの?」
「……えー」
コンソールから手を離し、首をねじりながら振り返ったのは顔見知りの整備士だった。彼女は眉を片方持ち上げ、僕の存在を幽霊だとでも疑っているみたいだ。
「僕はちょっと仙人に唆されて」
「仙人? ああ、灯台守ね。でもあいつ唆すような奴だった? わたしには散々北のスクラップ広場に行くなって言ってたけど」
「まあ、君ならそうなんだろうなあ」
正確には僕以外なら。
「たぶん、本来あいつの役目は魔物から僕たちを遠ざけることなんだろうね。で、シグレはなんでここに?」
「このあたりに竜のマザーフレームを下地にしたブロックがあるって聞いたから、調査に」
「これがそれ?」
コントロールルームを眺める。見た目にわかるほどの異質さはない。空中に浮かんだホログラムウィンドウはなにやらせわしなく色を変え文字を吐き出しているが、理解する気が皆無なおかげで意味がさっぱりわからない。
「そうだけど、ダメね」シグレは首を振った。「フレームは生きてるけど、動かす頭も体もないし。脊髄だけ抜き出して生きてるって言うようなものよ」
「まあそんなことはどうでもいいんだ」
「……あそう」
シグレは口をへの時に曲げた。黒猫が、足下でくつくつ笑ってる。それを睨み、溜息をついて、シグレは席を蹴り倒すように立ち上がった。
「悪い顔してるわね。今度は何たくらんでるの?」
「まあ、大それたことじゃないよ」




