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海里の果て  作者: 黒霧
竜の苗床
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灯台の下

 青空の下、黒猫は歩きながら唐突に話し出した。


 そういえば、この島には灯台があるらしい。夜になれば、地上より少し高い位置で黄色い光を海に向けるあれだ。

 正直、何のために存在しているのかかなり怪しい。

 そもそも現代の船は星空から位置情報算出くらい平気でやってのけるのであんまり意味ない。


「そういうの気になるだろう」


 したり顔で言う黒猫は、尻尾振りながら一歩先を行く。

 とことことこ。線路を器用に綱渡るのを見るに、今日は機嫌がいいみたい。


「そうだねえ」


 相槌はあくまで適当。だって気になるかと言われても、ねえ。

 誰にも使われない機械の残骸。役目を指示した者すらいないのにそれを続けていたゴミ処理船。もはやここにはいない人間にいつまでも恋いこがれていた愛玩猫。

 役目の意義を失って久しいものなんて、この島にはありふれてる。


 ああ。だけど、それでも役目を全うし続ける物のなんて多いことだろう。


「そういや。あの灯台の下には仙人がいると聞いたことがあるね」

「ほほう。仙人とな」


 仙人って山にいるイメージなんだけど。

 追い出されたのかな。


「けど、仙人って。誰が言い出したのさ、それ」

「知らないよんなこと」黒猫は言った。「名前なんて呼びたい奴が勝手に決めるもんさ」

「ふうん」


 それは逆説、仙人だって思った者がいたということだ。

 だから名前には意味がある。他人が、本人をどう見ているかという証だから。

 それが仙人ときた。興味深いにもほどがある。


「会いに行ってみようか」

「いきゃいいさ」


 え? あれ?


「こないの?」

「誰がんなこと言ったよ」

「――そういえばそっか」


 早とちり早とちり。口ずさみながら、針路修正。

 目的地は五キロ先。青空の下、鳥の糞に彩られた灯台である。

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