第十二話
雪見城での謁見から二ヶ月が経過した。
麟商会は、
雪見城下に1軒、
采白の首都である白都に3軒、
第二首都の白北に2軒、
その他の村落に12軒 の合計18軒の店舗を構えていたが、
暖燃粉の販売に向けて、店舗数を増やす事を計画していた。
店舗責任者である利徳と麟調を中心に店舗増加計画を進行させている。
鷹飛は、休む事なく、北原と麟商会本部にある暖燃粉製造所を往復していた。
輸送責任者の冷楽の息子である冷早も鷹飛の補佐にあたり採取を行っていた。
当主補佐の羊坪は、麟冥の命により、麟冥が麟商会を継いだ際に退職した者達を再雇用する
手はずを整え、さらには新しい人材の雇用も進行してた。
情報管理者の頼学は、暖燃粉が混乱の無いように民衆に浸透できるように、案内文やそれを見た民衆の反応を探る段取りを調整した。
同時に商十傑を中心とした他の商会の動きなどもできる限り把握できる情報網の確立も検討していた。
仕入責任者の葉郭は、鷹飛達が採取してきた材料の加工管理を一手に請け負っていた。
販売後の品薄状態をできる限り緩和させる為の製造計画と店舗配分の管理もしている。
これには田福も補佐として加わっていた。
麟冥は各部門の総合統括を、麟調と田福の力を借りて行っていた。
そして当主業務の合間を見つけては、麟調から既存事業と商売の「いろは」を教わり吸収していった。
その中で麟調が驚いたのは、麟冥は一度目を通した書類や書物の内容をほとんど忘れる事無く、覚えていられる才能をもっている事だった。
それは短期間の記憶ではなく、数年前に読んだ古書の内容を引用した会話をしてくる事からも伺えるが、相当広い範囲だという事が分かった。年齢が若いという事もあり歳月は限られるが、恐らくは今まで読んだ書物関連は全て記憶の中に残っている様子であった。
若き才能ある当主麟冥を中心に、麟商会はこれまでにない忙しさと活気に溢れていた。