↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

グレイルプス①

翌朝、2人は町へ向かっていた。

「そういえば....」

「ん?」

「傭兵ではどんなお仕事してるの?」

「……魔族の討伐、賞金首や賊の捕縛または討伐、護衛、追跡、奪還、救出、偵察」

ヴェリスは無表情のまま、指を折って一つひとつ挙げていく。

「それから、魔物の討伐もある」

「魔物も?」

「ああ。だが亜人が多い」

「.......亜人ってオーク、ハーピー、ドラコニュートとか?」

「ああ」

亜人による被害も、魔族による被害も、王都まで届くことはあった。

村が襲われた。

街道で商隊が襲撃された。

辺境の集落が壊滅した。


けれど――

隣を歩いている人が、実際にそういう場所へ行っていた。

「……」

ミティは黙ってヴェリスの横顔を見る。

ヴェリスはいつもと変わらない。

何でもないことのように、前を向いて歩いている。

「……怖くないの?」

ヴェリスはミティを見る。

「何が?」

「何がって……」

ミティは言葉に詰まる。

「魔族とか、亜人とか……」

ヴェリスは少し考えた。

「慣れている」

「……慣れるものなの?」

「慣れる」

あまりにも淡々としている。

言葉が出ず、俯くミティを見て、ヴェリスは少しだけ間を置いた。

「……危険かどうかは考える」

「でも怖いとは?」

「必要なら考える」

「それ、怖いって感情を後回しにしてるだけじゃない?」

ヴェリスは答えなかった。

「……」

「……昨日の夢」

ヴェリスの視線が向く。

「ん?」

「ううん……」

ミティは首を振った。

「なんでもない」

ミティは、再び前を向く。

それ以上、ミティは何も言わなかった。

自分と一つしか違わない、この人は自分とはまるで違う世界で今まで生きてきた。

ほとんど同じ歳月を過ごしてきたはずなのに、見てきたものも、立ってきた場所も、きっと何もかも違う。

自分が遠くから聞いていた「亜人」や「魔族との戦い」を、ヴェリスは実際にその目で見て、その足で歩いてきた。

それを思うと、胸の奥が少しだけ締めつけられるような気がした。

けれど、何と言えばいいのかは分からない。

「大変だったね」と言うのも違う気がした。

そんな簡単な言葉で、この人が歩いてきた道を分かったつもりにはなりたくなかった。

並んで歩く二人の間に、静かな風だけが吹き抜けていく。



二人は冒険者ギルドの掲示板の前に立っていた。

建物の中はいつも以上に賑わっている。

そんな中、ヴェリスは掲示板へ静かに目を向けていた。

一枚ずつ依頼書を見ていく。

急ぐ様子はない。

内容を確かめながら、ゆっくりと視線を動かしていく。

すると一枚の依頼書を掲示板から外す。

ミティは隣から覗き込んだ。


依頼内容:グレイルプスの群れの討伐

場所:東の森(旧街道沿い)

危険度:Dランク

報酬:3000クート

詳細:街道付近に出没するグレイルプスの群れ(3〜4頭推定)の討伐。

   ※討伐照明としてグレイルプスの牙を持参すること。


ミティは依頼書を見つめる。

「今日は、それにするの?」

「ああ」

ミティは小さく息をついた。

グレイルプス。

群れで行動する狼型の魔物。

名前くらいは知っている。

実際に戦ったことはない。

ミティは依頼書へもう一度目を落とす。

「スライムより強い?」

「ああ」

魔物と言えば、今まで討伐したのはスライムだけだった。

それも、ヴェリスに教わりながら。

狼型の魔物となれば話は違う。

きっとスライムとは比べものにならない。

「……私にできるかな」

思わず本音が漏れた。

ヴェリスは依頼書を持ち、静かに受付へ向かって歩き出す。

「できる」

その一言には迷いがなかった。

二人は受付へ向かう。

受付の女性は依頼書を見ると、小さく微笑んだ。

「グレイルプス討伐ですね。」

ヴェリスは小さく頷いた。

「ああ」

女性は依頼書へ受付印を押す。

「お気を付けて」

依頼書を受け取ると、ヴェリスはそのまま踵を返した。

「行こう」

「うん」

ギルドの扉を開ける。

ミティは隣を歩くヴェリスを見つめる。

この依頼を選んだということは。

ヴェリスは自分なら戦えると判断したのだ。

その信頼に応えたい。

そう思いながら、ミティは静かに歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。