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第22話 レイさまと結婚?!

13.


 衝撃の余り硬直しているルルタを見て、レイは満足そうに頷く。


「驚きで声も出ないか。無理もない。お前のようなどこの馬の骨ともわからない平民の田舎娘が、代々侍従を務めるクランスカ家の次期当主から求婚されるなど夢のような話だろうからな。すぐには信じられないだろう」

「きゅっ……きゅー? きゅっ、こん?」


 レイは得意気な顔つきで次の反応を待っていたが、ルルタは引きつけを起こしたような表情のまま固まっておりそれ以上話せそうにないと見てとると「余りの幸運に恐れおののき、声も出せないのだろう」と勝手に解釈して笑みを浮かべた。


「お前は僕の妻になり、寵妃さまとクランスカ家を……いや、夫たる僕とをつなぐ存在になるんだ。常に寵妃さまのおそばに控え、ご様子を逐一、知らせるようにしろ。駄馬並みに気の利かないお前でもそれくらいは出来るだろう」

「だ、だっ? 駄馬……?」

「大事なことは、寵妃さまのご懐妊の兆しを見落とさないことだ。寵妃さまに御子が誕生したら、一の侍女であるお前を養育母に就任させる。できれば……」


 未来の構想を得々と語っていたレイだが、そこでハタと気付いたように言葉を詰まらせ顔を赤くする。

 大人とも渡り合う政略家としての自負と年相応の少年らしい羞恥に挟まれた結果、前者としての自分をことさら誇示するためにレイは不自然なほど尊大な口調で言い放った。


「ぼ、僕たちも、えへんえへん、こ、子供を、子供をつ……つっ、つく、作り……お前を王子の乳母にする。僕は王子の養育係となり、クランスカ家が寵妃さまの生家代わりとなって……」


 そこまで言った瞬間、レイの言葉は「うわあああぁぁっ」というすさまじい叫びによってかき消された。

 

「な、なんだ、急に……」

「妻……っ! 私がレイさまの妻になるんですか? レイさまと結婚?! 私が? 妻?! レイさまの? ……妻?! ええっ! ええええええっ!?」

「大きな声を出すな」


 レイは慌ててルルタの口を手でふさぎ、辺りを見回す。人気がないことを確認すると、ホッとして手を放した。

 すぐに厳めしい表情になり、レイは口を開く。


「何も今すぐ正式に結婚するわけじゃない。寵妃さまが正妃の地位につかれ、側近としてのお前の立場が揺るぎないものになってからだ。それまでは、今まで以上に寵妃さまの愛情と信頼を得られるように務めるんだ。これからは、お前も常にクランスカ家の一員となる資格があるかどうかが問われる。それを忘れるなよ」

「わっ、わた……私が、妻?! レイさまの! レイさまと結婚!」

「だからそれはまだ先の話だって言っているだろう。気の早い奴だな」


 レイは何故か顔を赤くし、自分の中にわいた感情を誤魔化すようにつっけんどんな調子で言った。


「いいか、寵妃さまに僕たちを信用していただけるかどうかは、お前の働きにかかっているんだからな」

「あ、あ、あの……っ」

「僕の妻になりたいと言うなら、それくらいの働きはしてもらわなければ困る。僕は元々は、僕に負けないくらい知性と品位をあわせ持つ女性が好みなんだ。あとどちらかと言えば、年上のほうが好きだが、まあそれはどちらでも……」

「あの!」

「体型は痩せているよりも、ふくよかな女性のほうがいいんだがな。お前は痩せすぎでもないが、僕の好みではもう少し肉が欲しい。結婚したら少し太らせないと……。羊やガチョウの肉を食べさせるか。活きが良さそうだから、詰め込めばすぐに太るだろう」

「あのっ! レイさま!」

「何だ、大声でわめくな。そんなことでは、この国の支柱となるべきクランスカ家の一員は務まらないぞ」


 いつの間にかクランスカ家の一員になり、結婚後は山ほど肉を食べさせられてまんまると太るところまで話が進んでいる。

 このままでは自分が何ひとつ返事をしていないのに、気が付いたらレイの妻になっているかもしれない。

 すっかり保護者気取りで鷹揚おうような態度を取るレイに、ルルタは勢いよく言った。


「私はどなたとも結婚するつもりはありません。ずっと後宮にいて、シャナラさまにお仕えするつもりですから」

「何を言っている」


 レイは不審げに眉をしかめた。


「そうしろという話をしているだろう」

「え……?」


 思わぬことを言われてたじろぐルルタの顔を、レイはジロリと横目で睨む。


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