未来視?
その日からは、変なお客様が来なくなった。
それと同時に、お客様自体が少なくなり、旅館は落ち着いている。
そんな中、スイは狙いを定める獣のように目をギラギラさせながら、掃除のために走り回っている女性のあやかし達を見た。
今、スイの視界に入っているのは、二口女と雪女、ろくろ首の三人。
一番話がしやすいのは二口女だとターゲットを決め、壁から顔を覗かせてタイミングを計る。
「あら。もうそろそろ、バケツの中の水を変えて来るわね」
「私が行くわよ?」
「大丈夫よ~」
雪女が言うが、二口女が先にバケツを持ち、一人になった。
スイはこのタイミングを逃すまいと駆け出し、二口女に追いついた。
「あの、二口女さん!」
「あら、スイ様。いかがいたしましたか?」
いきなり声をかけられ、二口女は少し驚く。
「突然声をかけてしまい、申し訳ありません。あの、少しお話をお伺いしたいのですが、お時間はありますか?」
スイが眉を下げて問いかける。
二口女は少し考え、ニコッと微笑んだ。
「もう少しで掃除がひと段落つくので、それまでお待ちいただいてもいいですか?」
「わかりました」
その後、二口女はすぐにバケツの水を入れ替え、廊下を走っていった。
そんな彼女の背中を見届けながら、スイは頭の中で質問を整理した。
廊下を歩きながら、むんむんと考えをまとめていると、前から小さなおばあさんが歩いて来る。
それに気づかず進んでいると、スイの腰とおばあさんの肩が、こつんとぶつかった。
「あっ、すいま――あ」
「あっ、とはなんじゃ。なんじゃ、その顔は!!」
振り返り、スイを見上げて怒っているおばあさんを見て、スイは顔を青くした。
「なんじゃ、その顔。質問に答えんかい!!」
「い、いえ。ぶつかってしまい、申し訳ありませんでした。砂かけババァさん」
目の前には、小さなおばあさん――砂かけババァが立っていた。
灰色の、足まで届くほど長い髪に、灰色の着物を身に着けている。
目はつり上がり、怒っているのが一目でわかる。
「まったく、なんでこんな人間が、あやかしを従わせる立場におるのか理解できんのぉ。こんなどんくさい人間が上に立っているなんぞ、まったく……」
怒っている砂かけババァに何と声をかけても、倍の言葉で返ってくるのはすぐにわかる。
スイは頭を下げ、何とかやり過ごそうとしていた。
「おい!!」
「は、はい!!」
「なんでこんな所に突っ立っておるんじゃ!! さっさといなくならんか!!」
「す、すいません」
「そんな、いつもは私が来ていることに気づくのに、気づかん人間が……。早く休まんか!!」
「は、はい?」
ぽかんとしていると、またしても砂かけババァはスイに近づいた。
「何をしている。さっさと頭を下げんか!!」
「は、はい」
素直に頭を下げると、おでこに手を当てられた。
「熱はないみたいじゃのぉ。なら、さっさと部屋に戻らんか!! 馬鹿者!!」
「す、すいません」
口調は怒っているが、優しい言葉を吐く砂かけババァは、そのまま怒りながら去っていった。
スイが、砂かけババァを見た瞬間に苦笑いを浮かべた理由。
それは、暴走気味なツンデレへの反応に、いつも困っているからだ。
心から心配してくれているのはわかっているからこそ、無下にはできない。
けれど、怒りながら心配されるため、どう反応すればいいのかわからない。
肩を落としながら、砂かけババァが完全にいなくなるのを待っていたスイは、その姿が見えなくなると、安心したように肩の力を抜いた。
「砂かけババァさんは優しいんだけど、ツンデレ具合が異常だから、気を遣うんだよなぁ」
そんな言葉をこぼし、スイは自分の部屋へと向かった。
中に入り、テーブルの前に置かれている座布団に座る。
そこから、ぼぉ~っと天井を眺めながら、質問内容を再度まとめ始めた。
「まずは、どんな感じで話し出そうかなぁ」
呟くと、廊下から足音が聞こえ始めた。
すぐに襖へ視線を向けると、声が聞こえた。
『スイ様、二口女です』
「あ、ありがとうございます。中に入ってください」
そう言うと、二口女が襖を開けた。
掃除をしていたからか、たすきを掛け、茶髪を上の方で一つにまとめている。
「お忙しいところ、申し訳ありません」
「大丈夫ですよぉ~。何かお悩みがあるみたいでしたし、私で良ければお話を聞きますよ」
スイの前に座り、二口女が言う。
その温かい言葉に、スイは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!」
「いえいえ。それでは、何かありましたか?」
ここからは、九尾に出会った時の話を、かいつまんで伝えた。
「――――なるほど。それで、今まで一緒に働いていた私達に、お話をお伺いしたいということだったのですね」
「はい。私の両親は、どのような働き方をしていたのですか?」
スイは、両親が働いているところを見たことがない。
いつもはのほほんとしていて、仕事でてきぱき動いているイメージがなかった。
けれど、今回の猫又家族のようなあやかしをうまくさばいていると聞き、スイは興味が湧いた。
普段の両親を思い浮かべながら、二口女の言葉を待つ。
「まず、お母様の方ですが、本当に先の先まで見ている方でした」
「先の先、ですか?」
「はい。まるで未来視を持っているのではないかと思うほど、的確に未来を当ててくるのです」
「た、例えば、どんな?」
ごくりと固唾を飲み、話の続きを待つ。
「――――あれは、本当に感動しました」
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