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人間スイとあやかし玄が営む妖癒旅館―人とあやかしが共に生きる、もう一つの世界―  作者: 桜桃
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信じている人の行動は

「どうした!!」


「黒緋様!! 天狗様が二口女の首を!!」


 黒緋が現場を確認すると、目を見開き驚いた。


「玄!! 何をしている!」


 叫ぶが、聞こえていないのか無視される。

 らちが明かないと判断し、黒緋は力づくで天狗の手を掴み、二口女から引き剥がした。


 ドタンッと、二口女は廊下に落ちるように解放された。

 すぐにろくろ首と砂かけババァが駆け寄り、咳き込む二口女を支える。


「おい、何をしているんだ、玄。…………いや、玄、なのか?」


 天狗の様子がおかしいことに、黒緋は怪訝そうな表情を浮かべる。

 天狗は振り向き、黒緋を見た。


 鴉の面の奥に潜む《《水色の瞳》》に見つめられ、黒緋は動けなくなる。

 数秒間見つめ合った後、天狗はその場から駆け出した。


「おい、待て!!」


 追いかけようとした、その時だった。

 後ろから、天狗が現れた。


「どうしました?」


「玄様!! あ、あの、さっき、玄様が二口女の首を! あっちに走って!」


 ろくろ首が興奮気味に、現れた天狗に叫ぶ。

 何を言われているのかわからず、天狗は困惑し、説明を求めるように黒緋を見る。


「何がありました?」


「…………違う」


「え、なにがです?」


 黒緋が呟いた言葉を聞き返すが、彼は答えず頭をガシガシと掻いた。


「なんでもない。…………部屋で話そう」


 黒緋はそう言って天狗を促し、困惑しながらも天狗は「あ、あぁ」とついて行く。


「二口女のことは、ろくろ首達に任せたぞ」


「は、はい……」


 指示を出した黒緋は、そのまま廊下を進み、自室へと入った。

 天狗も後に続き、部屋の中に入る。


 普段あまり使われていない黒緋の部屋には、必要最低限の物しかなかった。

 丸テーブルに座布団、冷蔵庫に布団など。


 生活に必要な物は、なぜか壁際に寄せられている。

 部屋の中央には何もない空間が広がっていた。


「相変わらず、普通そうに見えて、違和感しかない部屋ですね」


「そうか? 物が多いと落ち着かねぇんだよなぁ」


 そう言いながら、壁際に置かれていた座布団を二つ取ると、一つを天狗に投げた。


「そういえば、最近はゆっくり話す時間もなかったなぁ」


「今もないですけどね」


「まぁまぁ。事件が起きた以上、仕方がないだろう。で、さっきのはなんだ? 確実にお前の偽物だよな?」


「そうですね」


 先ほど二口女を襲った存在が偽物であることは、天狗も理解していた。

 本物がここにいるのだから、それは当然のこと。


「それにしても、あんなことをしておいて、悪意が一切感じられなかった。殺意もな。だから侵入を許してしまったのだが……」


「警備は、今後強化しましょう。今すぐは難しいですが」


「そうだな。だが今は、警備よりも侵入した“何か”を追い払うことを優先すべきだ」


 腕を組み、黒緋が考え込む。

 天狗も思案していると、黒緋がふと気づいた。


「おい、玄。体調が悪いんじゃないか?」


「え? なぜですか?」


「顔色がすこぶる悪いぞ」


「面を付けているのに、わかるのですか?」


「なんとなくな。厄介ごとが続いているし、休む暇もないんだろう。……もっと、スイ様を頼ってもいいんじゃないか?」


 黒緋がスイの名を出すと、天狗は隠すことなく不機嫌そうに舌打ちした。


「そこまでか」


「絶対に頼るわけにはいきません。これ以上、事態を悪化させる可能性があります」


「そうかぁ? 俺はそうは思わんがな」


 スイはまだ成長途中で、不慣れな点も多い。

 だが、天狗が導けば、女将として十分に立ち回れるだろう。


 それでも天狗は、それを決して認めなかった。

 その理由が、黒緋には薄々わかっていた。

 だが、そこまでこだわる理由が理解できないでいた。


「……同じことを、繰り返したくないんですよ」


「同じこと? ……まさか、カナ様とシイ様の時のことか?」


 問いかけに、天狗は何も答えない。

 その沈黙だけで、黒緋は確信した。


 そして、大きく深いため息を吐いた。


「……お前は、あほか?」


「な、なぜですか?」


 本気でわかっていない天狗に、黒緋は呆れたように言う。


「俺達あやかしが、人であるスイ様を守るのは当然だ。だが、お前のそれは度を越している」


「……どういう意味ですか?」


「前に出るな、余計なことをするな。そう言われ続けたスイ様の気持ちを、考えたことはあるか?」


 天狗は眉を顰め、視線を落とした。


「お前は人の心に疎い。それは理解している。だが、それ以上に、お前はスイ様の言葉を無視し続けてきた。向上心のある娘の想いを、踏みにじってきたんだ」


 天狗は拳を握り、下唇を噛んだ。


「少しは、俺の言葉が届いたか? 今は苦しくても考えろ。考えるのは得意だろ?」


「……しかし、今はそんなことに割いている時間は……」


「偽物の件は、俺が何とかする」


「ですが――」


「お前は!! 今は体を休めろ! それと同時に、これからのスイ様への態度について、よく考えろ。いいな?」


 強く指を差され、天狗は頷くしかなかった。

 だが、心の奥では納得しきれていない。


 ――――ここで立ち止まっていていいのか。

 旅館の経営は、自分が何とかしなければならない。


 その思いが、天狗の心を埋め尽くしていく。

 彼の心境を察した黒緋は、目じりを下げ口を開いた。


「……なぁ。そんなに、俺達が信じられないか?」


「っ!? そ、そんなことあるはずが……!」


 慌てて顔を上げた天狗は、黒緋の表情を見て言葉を失った。


 黒緋は、悲しそうに眉を下げていた。

 いつも朗らかで、クレーム対応すら笑顔でこなす彼が、こんな表情をするのを、天狗は初めて見た。


「口では信じていると言うが、行動が伴っていない。全部一人で抱え込み、終わらせようとしている。それが、本当に“信じている”人の行動か?」


 天狗は、何も言えなかった。

 視線が泳ぐ、体が震える。


「わかったら、今すぐ体を休めて――」


 その言葉の途中、バタンと音がして黒緋は振り返る。


「玄!?」


 畳に倒れ込む天狗。

 衝撃で鴉の面が外れ、青ざめた顔が露わになった。


「こんなに顔色が……。くっそ、面も禁止させるしかないか? いや、それより、雪女!!」


 黒緋はすぐに天狗を布団へ寝かせ、雪女を呼んだ。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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