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人間スイとあやかし玄が営む妖癒旅館―人とあやかしが共に生きる、もう一つの世界―  作者: 桜桃
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必死な対応

 天狗は今、部屋に案内し、荷物を指定された壁側へと置いた。


「では、また何かあれば内線をお使いください」


「はい。親切にありがとうございます。――――こら、静稀!! まだ猫になるんじゃない!!」


 天狗が出て行こうとした時、静稀がテンション爆上がりで猫の姿になり、駆け回り始めた。


 このままでは、花瓶やポット、テレビなどが危ない。

 天狗は少し考え、ご婦人に一つ提案をした。


「あの、もしよければ、駆け回っても大丈夫な部屋がありますので、そちらもご案内いたします」


「そ、それは嬉しいわぁ。あなたも、ムズムズしているものね。ぜひ、お願いします」


 旦那も、なぜか静稀を見てムズムズしている。

 同じように猫の姿になって駆け回りたいのだろうと、天狗もすぐに理解した。


「では、ご案内いたします」


「ほら、二人は行きなさい。私は荷物の準備をしておくから」


 そう言いながら、手でシッシッと二人を廊下へ追い出す。

 天狗は「こちらです」と言い、廊下を歩き始めた。


 その時、前方から慌てた様子のろくろ首が駆け足で近づいて来た。

 だが、お客様が近くにいることにすぐ気づき、廊下の端へ寄って頭を下げる。


 その様子に違和感を覚えた天狗は、猫又に聞こえないよう小声で「少々お待ちください」と耳打ちした。


 何が起きたのか。準備は間に合っているはずだ。

 そう考えながら案内を続け、天狗は頭の中でトラブルになりそうな箇所を思い浮かべる。


 すると、廊下の奥からスイの声がかすかに聞こえてきた。

 何かを叫んでいる。


「何かお困りでも?」


「いえ、お気になさらず」


 猫又家族は五感が鋭い。

 天狗には微かにしか聞こえないスイの声も、猫又の耳にははっきり届いてしまったらしい。


 天狗は焦りを抑え、無事に大きな部屋へ案内した。

 襖を開けると、子供の遊び場のような空間が広がっている。


 子供用の滑り台やブランコ。

 端の方には籠があり、中には積み木や人形が置かれていた。


 中央には何もなく、壁側にも誤って壊しそうな物は置かれていない。

 大いに暴れ回れそうな場所に、静稀は目を輝かせ、走り出した。


「ここは、子供の遊び場なのですね」


「子供だけでなく、大人の方にもご利用いただいている大広場でございます」


「そうなんですね」


 旦那さんが柔和な笑みを浮かべ、部屋の中を駆けまわる静稀を見つめる。


「――では、私はこれで失礼いたします。従業員用の通路などもございますので、そちらには立ち入らないようお願いいたします。それ以外でしたら、自由に歩き回っていただいて構いません」


「はい。色々と親切に、ありがとうございます」


 静稀は走り回っており、天狗たちの会話には気づいていない。

「早くパパー!!」と叫んでいる。


「では、失礼いたします」


「はい」


 天狗は襖を閉じ、すぐに来た道を戻る。

 そこには、冷や汗を流しているろくろ首がいた。


「どうしましたか?」


「あ、あの、スイ様が――……」


 話を聞いた瞬間、天狗の空気が変わり、周囲を気にせず走り出した。


「玄様!!」


 ろくろ首の呼びかける声すら、もう届かない。

 一直線に、温泉の温度を調整する場所――ボイラー室へ向かって行った。


 ※


 スイは今、お湯の調整をしているボイラー室へ向かっていた。

 沸騰している湯船を、まずどうにかしなければならない。


 ここまで熱くなっているということは、温泉の温度を調整している鬼火が癇癪を起こしているのだろうとすぐに分かった。


 癇癪を起した原因はわからないが、スイはひとまずボイラー室の扉を考えなしに開いてしまった。


「あっつ!!」


 中にはパイプが巡らされ、軽い迷路のようになっている。

 だが室内は狭く、熱気が充満しており、簡単には足を踏み込めない。


「スイ様、危険です! ここは私が確認してきます!」


 廊下ですれ違い、付いて来ていた二口女がそう言うが、スイは「大丈夫、私が行く」と言い、顔を両手で覆いながら中へ入る。


 これ以上温度が上がれば、パイプが破損してしまう。

 鬼火たちが癇癪を起こした時のため、強度の高いものに替えてはいるが、それでも必ず耐えられるとは限らない。


 早く癇癪を鎮めなければ、この旅館全体が熱気に包まれ、今滞在している猫又家族が危険にさらされてしまう。


 だが、むやみに突っ込めば、怪我だけでは済まされない。

 焦らず、だが迅速に――それだけを考える。


 すると、奥から鬼火たちの泣き声が聞こえてきた。


「やっぱり……何かに癇癪を起こしている」


 癇癪を起こし、泣いてしまっている。

 なぜ泣いているのか、何に怒ってしまったのか。


 それを早く知りたい。

 そう思い、スイは顔を覆ったまま近づいていく。


 ――――ブワッ!


「っ!! あっつ!!」


 火の粉が舞い上がり、顔を軽く火傷してしまった。

 早く冷やさなければ、跡が残るかもしれない。


 それでもスイは気にせず、前へ進む。

 鬼火たちに近づくほど温度は上がり、熱気に包まれる。


 ――――熱い。汗で視界が滲んできた。


 スイの足が止まる。

 温度が上がりすぎ、少し息を吸うだけで喉が焼けるように痛む。


「――――鬼火さん!! スイです!! 何があったんですか!!」


 叫んだ瞬間、自然と息を吸い込んでしまう。

 焼けるような痛みに、咳き込んだ。


「痛い、熱い……。でも、早く行かないと、お客様が……」


 今回の猫又家族は、以前来た方たちと見た目はまったく同じ。

 だが、性格はまるで違う。


 優しく、穏やかで、

 この旅館を心から楽しんでくれている。


 そんな家族を、スイは心から守りたいと願っていた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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