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人間スイとあやかし玄が営む妖癒旅館―人とあやかしが共に生きる、もう一つの世界―  作者: 桜桃
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雪女

 次にスイが向かった先は、雪女がいる大きすぎる冷凍庫だった。

 中に入るためには、人間であるスイは何枚も上着を着込まなければならない。


 出入り口に置かれているコートやダウンを重ね着し、いざ冷凍庫の中へと足を踏み入れる。


「うわぁ……やっぱり寒い」


 雪女の身体は、その名の通り雪でできている。

 そのため、冷凍庫の外に出られる時間は一時間程度と決められていた。


 それ以上外にいれば、少しずつではあるが体が溶け始めてしまうのだ。


「雪女さーん、いますかぁ?」


 冷凍庫の中には、食品が冷凍保存されている。

 棚がいくつも並び、まるで迷路のようになっていた。


 そのため、雪女が中にいるのは分かっているが、簡単には見つけられない。


「さ、寒い……」


 体を震わせ、その場で立ち止まる。

 周囲を見回すが、雪女の姿は見当たらない。


「いないのかなぁ……」


 そう思ったとき、奥の方から「カタン」と音がした。

 振り向くと、棚の整理をしている雪女の姿が見える。


「雪女さん!」


「おや……何か声が聞こえると思えば、スイ様ではありませんか。どうなさいました?」


 雪女はスイに気づくと、水色の切れ長の目を向けた。

 白い着物に水色の帯。色白の顔立ちは美しく、同じ女性であるスイですら見惚れてしまう。


「あ、あの……少しお話を聞きたいのですが、お時間ありますか?」


「構いませんが……ここで、ですか?」


「はい!!」


 雪女を外に出させるわけにはいかないため、スイは冷凍庫で話を聞く気満々だった。


 だが、すでに唇は青く、体も声も震えている。

 とてもまともに話ができる状態ではない。


 雪女はそんなスイの様子を見て、少し考え込んだ。


「……すぐに終わりますか?」


「え? は、はい。聞きたいことがあって、それを教えていただければ……」


「でしたら、ここではなく廊下で話しましょう」


 そう言って、雪女はスイの隣を通り、出入り口へと向かう。


「だ、大丈夫なんですか?」


「長時間でなければ問題ありません。さぁ、早く行きましょう」


「は、はい!」


 スイは転ばないように注意しながら、雪女の後を追った。

 迷路のような冷凍庫だが、雪女は迷うことなく、すいすいと進んでいく。


 あっという間に出入り口へ辿り着き、扉が開かれた。

 外に出た瞬間、スイは「あっつい!!」と叫び、慌ててコートやアウターを脱ぎ捨てた。


「それで、私に聞きたいこととは何でしょう?」


 雪女は冷凍庫からあまり離れないよう、分厚い扉に背中を預けて問いかける。


「えっと……雪女さんは、私の両親の仕事ぶりをどう思っていましたか?」


「スイ様のご両親……カナ様とシイ様、のことですね?」


「はい」


 スイの両親の本名は、母が香苗、父が椎名。

 そのため、周囲からはカナ、シイと呼ばれていた。


 ただし、その二つの名前を続けて呼ばれると二人はひどく怒るため、あやかしたちは決して繋げて呼ばないよう、暗黙の了解としていた。


「そうですね……。私はお二人とそれほど接点があったわけではありませんので、詳しくは分からないのですが……」


 雪女は基本的に人と深く関わろうとしない。

 必要最低限の仕事と会話だけをこなし、それ以外の時間は冷凍庫で過ごしている。


 スイ自身もあまり話したことがなく、少し緊張していた。

 次の言葉を待っていると、雪女は何かを思い出したように、はっとした表情を浮かべた。


「そういえば……遠目でしたので詳しくは分かりませんが、シイ様とカナ様が廊下で内密に話しているのを見かけたことがあります」


「え、内密に?」


「はい。でも、なんだかとても楽しそうでした」


「ど、どんな話をしていたんだろう……」


「興味がありませんでしたので、内容までは聞いていません。ただ、私の存在に気づくと、張り付けたような笑みを浮かべて、すぐにいなくなってしまいました」


 絞り出してくれたのは、両親の少し不思議な行動だった。


「な、なんというか……私の両親って、変人だったんでしょうか……?」


 自分と接している時は、厳しくも優しい両親。

 けれど、旅館での姿はまた別だと、スイは理解していた。


 それでも、ここまで変わった行動をしていたと知り、微妙な気持ちになる。


「変人でしたよ」


 ――――グサッ。


 雪女の言葉が、スイの胸に突き刺さる。


「ですが、とても優しい方たちでした。それだけは、関わりの少なかった私でも分かります」


 にこりと微笑み、雪女はそう言い切った。

 その表情に嘘はない。


 スイは一瞬ぽかんとしたが、つられるように微笑み、「ありがとうございます」と深く頭を下げた。


 ※


 雪女と話しているうちに、外はすっかり夕暮れになっていた。

 明日の準備で皆が忙しくなる時間帯だ。


 これ以上聞き込みをして手を煩わせるわけにはいかないと、

 スイは今日の聞き取りをここまでにし、部屋へ戻った。


 今日聞いたことは、かわいらしいノートに書き留める。

 最初は書き方が雑だったため、分かりやすく整理し直した。


 ――――


 お母さんとお父さんの仕事ぶり


 ・二口女さん

 母が未来視のような力を持っていると感動していた。とても慕っている?


 ・雪女さん

 関わりは少なかったが、両親の変な行動を目撃。

 それでも優しい人たちだと思ってくれている。


 ――――


 まだまだ情報が足りない。

 これだけでは、自分が何をすべきか見えてこない。


「……私、本当に今これをしていていいのかな」


 これは自己満足だと言われても否定できない。

 けれど、両親と同じように働くには、その働きぶりを知らなければ始まらない。


 悩みながら、スイはノートを閉じ、畳に寝転がった。

 視界に入るのは、天井の木目。


 数えると落ち着くと聞いたことがあり、スイはよく天井を見上げる。


 ――――自分の両親のことなのに、聞き込みをしないと分からないなんて。


 他のあやかしたちから両親の話を聞くたびに、

 自分がどれだけ無頓着だったのかが浮き彫りになり、胸が締め付けられる。


 それでも、ここで立ち止まってはいけない。


 気持ちを立て直し、明日からまた聞き込みを再開しようと、スイは心の中で強く決めた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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