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人間スイとあやかし玄が営む妖癒旅館―人とあやかしが共に生きる、もう一つの世界―  作者: 桜桃
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垢嘗と鬼火

 今日は、泊まり客がいない。

 天狗と共に九尾に会いに行った日から、客層が激変してしまったのだ。


 旅館で働く従業員たちは、気持ちに余裕があるように見えるが、経営的には厳しいだろう。

 だが、スイはお金に関する管理を一切していないため、詳しいことはわからない。


 お金の管理は、天狗が担当しているのだ。


「本当に……大丈夫なのだろうか」


 このまま客が来なければ、旅館を畳むことになってしまうのではないか。

 そんな不安を抱えながら廊下を歩き、スイは温泉へと辿り着いた。


 今は、浴槽の掃除の時間だ。

 女風呂の中に入ると、広い脱衣所が目に入る。


 棚には籠が並び、貴重品を入れるためのロッカーも完備されている。

 扇風機も備え付けてあり、風呂上がりも気持ちよく過ごせるよう工夫されていた。


 脱衣所を抜け、浴槽へ入る。

 中では、ブラシを手にした垢嘗(あかなめ)たちが、数人で掃除をしていた。


 ガシュ、ガシュ、と音が響く。

 スイが浴槽内へ足を踏み入れると、垢嘗たちが一斉にこちらを見た。


 黒く長い髪の隙間から覗く黒い瞳は、つり上がっており鋭い。

 その視線に、スイは思わず肩を震わせた。


 すると、その反応につられたのか、垢嘗たちもビクッと身をすくめてしまった。


「あ、す、すみません。少し、見学させていただいてもよろしいでしょうか?」


 スイがそう尋ねると、垢嘗たちは戸惑いながらも頷く。

 そして何事もなかったかのように、再びブラシで浴槽を磨き始めた。


 どうやら役割分担があるらしい。

 一人は浴槽内、

 一人は洗い場、

 一人は奥の風呂。


 誰も迷うことなく、黙々と作業を続けている。


 垢嘗は、基本的に口を開かない。

 ――いや、正確には「開かない」のではない。


 口は普段から開いており、長い舌をだらんと垂らして生活している。

 その見た目だけで、気味悪く感じる者も少なくないだろう。


 だが、共に暮らしていれば分かることもある。


 垢嘗は、風呂掃除だけは決して手を抜かない。

 鋭い視線を持ちながらも、相手を驚かせないよう、髪で顔を隠すことさえある。


 見た目とは裏腹に、人をよく見ている優しいあやかしなのだ。


 そんな垢嘗の横を通り過ぎ、スイは温泉の奥へ向かう。


 奥にあるのは、露天風呂へと続く扉。

 開くと、自然豊かな景色に囲まれた温泉が二つ、目に入った。


 一つは屋根付きで、雨の日でも露天風呂を楽しめる。

 もう一つにはテレビが備え付けられており、ゆっくりとくつろげるようになっている。


 露天風呂の景色は、天狗が一番こだわった場所だとスイは聞いていた。

 その甲斐あって、緑に囲まれながらも、青空をしっかりと眺めることができる。


 鳥のさえずりが響き、心が癒される空間が作られていた。


「私も……時々入りたいなぁ。いつも備え付けの小さなお風呂ばっかりだし……」


 旅館で働いているからといって、自由に入浴できるわけではない。

 必ず料金を支払わなければならないというルールがある。


 風が、スイの頬を優しく撫でる。

 その心地よさに、思わず青空を見上げた。


 今日は天気がいい。

 気温もちょうどよく、ずっとここにいたくなってしまう。


 けれど、スイにもやるべき仕事がある。

 後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。


 垢嘗たちに礼を言い、温泉を出る。

 次に向かったのは、温泉の温度を調整する場所だ。


 そこは従業員しか入れない区域。

 中に入ると、パイプが張り巡らされており、その間を縫うようにして奥へ進む。


 やがて、薄暗い空間に赤い光が灯り始めた。


 さらに奥へ行くと、そこには一つの窯があり、炎のあやかしが中で燃えていた。


「こんにちは、鬼火くんたち」


 窯の中では、炎の玉が身を寄せ合いながら、いくつも揺らめいている。

 それが、鬼火だ。九尾が使役しているあやかしらしい。


 子供のように癇癪を起こしやすく、時折お風呂を熱湯にしてしまうが、普段はとても可愛らしい炎の玉である。


「「「こんにちはー!!」」」


 子供特有の、高く丸い声。

 この声が癇癪を起こすと奇声に変わることを、スイは思い出し――今でも想像したくないと、心の中で思った。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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