〜第1話〜災難
世渡の初めて書いた短編連続小説です。
第1話、慧と少女の物語を見守ってくれると嬉しいです。
本校舎から離れた少し埃っぽい旧校舎。
二階のある奥の図書室に、木製の机と椅子と大きな棚、本、そして制服を着た女の子がひとり静かに座っていた。
「、、どちら様?」
小さいけれども、変によく通る声をしている。
一息ついて答えた。
「二年、相沢慧。」
「、、、、」
返事は返ってこない。
なんで聞いたんだよ名前を。
とはいえこのまま無言も心地が悪い、、用事を済ませて早く帰ろう。
それなのに
、目当ての資料が見つからない。
本棚全部回ったはずなのだが、どうも書籍は見つけづらい。
そもそもここにあるのかどうか。
今こんなことをしている事の発端は昼休みの委員会でのこと。
学術研究委員会の活動として探求課題が出題された。課題決めのジャンケンに負け続け最後に残った俺の探究課題「過去生徒の学習探求の趣向、推移について」だ。これがとにかく面倒くさい。尚且つテーマがアバウト。まず、委員長に課題についての資料を求めた。
委員長、改め咲丘先輩は顔にニコッと笑みを浮かべて
「え〜私もそんなもの知んないよ〜。わかんないものを調べるのが探求課題でしょ!ね、相澤くん。」
と返す。
なかなかに無責任だ。
けれどもわからないものを調べるそれが課題。については認めざるを得ない。
そうして俺はその後、現校舎の図書室、職員室、資料室を巡り最終的にこの場所へたどり着いた。
あわよくば過去生徒にも同じような課題をレポートした人が居たかもしれない。それを参考に出来れば、、なんて淡い期待を抱いたのがダメだったのか、でも地道に論文やレポート、過去文集を読み漁るのは少し辛い。いや面倒くさい。
ここで探し始めてもう三十分は立つ。まだ六月の初めだと言うのに五月の空気はどこへ行ったのやら蒸し暑くて背中の部分が湿っぽい。場所も場所で埃っぽくて空気が悪いような気がしてくる。だんだん苛立ちが湧いてきて、自然に本の扱いも乱雑になってきた。
そんな自分に思わず大きなため息が出た時、唐突に声が聞こえた。
「何を探してるの?」
しまった。
人がいるのを忘れていた。 気分を悪くさせただろうか。
「ごめん。」
と咄嗟に謝ると、今度はすぐに返事が返ってきた
「別に謝られるようなことされてないけど。何探してるの?」
けれど手に持つ本からは目を逸らさない。
俺も今度は質問に答える。
「少し委員会用の資料を探してるんだよね。」
「、、、見つからないの?」
「生憎ね。」
俺は彼女のなにか言語化しづらい少しの違和感を感じてすぐに背を向けた。
するとコトン。と無機質な音が彼女の方から聞こえた。
目線を向けると彼女は本を机に置き、椅子から立ち上がっていた。さっきの音は椅子を引いた音であろ う。思っていたよりも背が少し低い。 百五十センチ程度だろうか。
「こっち。」そのまま歩き出す。
ついてこいということか。彼女の進む方向へ足を進めると。そこは貸し出し用カウンターだった。
何故カウンター?貸し出し処理をする訳でもないのに。
彼女はカウンターの引き出しを引っ張りある鍵を取り出す。
少し遅れて気づいた。驚いた、完全に盲点。
そうか考えれば論文やレポートを本を貸出するための棚に置いておく訳がない。
お目当てのものがある場所、それは書庫だ。
「これ、書庫の鍵。後ろの扉が書庫ね。」
そう告げると彼女は俺に鍵を渡す。
渡し方が案外丁寧で、受け取るために差し出した俺の右手の下へ自身の左手を何かあっても落ちないよう差し込んで、右手で鍵を手のひらへ置いた。
俺が鍵を受け取ると彼女はそのまま踵を返して、元の本の方へと帰ってしまった。
鍵を開け書庫へ入ると確かにファイリングされた論文らしきものが多く目当てのものはありそうな雰囲気だった、しかし並べてあるというより様々な書類が置かれているだけでありここから探し出すにはまだ時間がかかりそうだ。
光の方向へ目をやると窓からは真っ赤に夕焼けが差し込んでいてもうかなり遅い時間になっていることを悟る。
区切りもいいし今日はここまでで帰ろうか。
と書庫から出ると図書室にもう彼女はおらず。残されたのは机と椅子、本棚。
彼女の座っていた椅子を見て、思わず呟く
「しまった。」
礼を伝えるのを忘れていたことに今更気づく。ため息をついて不機嫌アピールした挙句、助けて貰ったにもかかわらず礼も言わない。これではただの非常識なやつじゃないか。
また明日ここにいてくれたらいいのだけれど、、そんなことを思いながら俺は図書室を出た。
2月1日午後8時30分頃に2話公開します。
慧は少女に再び会うことができるのか?




