第4話『堕ちる心・得る力』
トライデントベアーが、少年にゆっくりと近づいている。
あともう少しでたどり着く、と言う所で、少年の頭に謎の声が響いた。
『諦めるな。戦え』
その声を聞いた瞬間、全身の痛みが取れ、少年は動くことでできるようになった。
「オーーーーラァアアアアアアア!!」
「ブモオオオオオオオオ!?」
少年は、トライデントベアーの顎にアッパーを叩き込む。
「はぁはぁ……な、なんだこの、力……」
少年は、自身の右手を見て驚いていた。
見た目には変化はないのだが、力が増している。
「これなら、死なずに済む……?」
少年が一縷の望みを抱いた瞬間──、
「ぐっ……!?」
ドガァァァァァァァァァンッッッ!!!!
背後から、トライデントベアーの腕の一振りが背中に直撃。
前方の木に勢いよく衝突した。
「ぐはぁ!?」
少年は大量に吐血をし、地面に落下する。
「はぁはぁ……一筋縄ではいかない、か……プッ。でも、負ける気はない……!」
少年は立ち上がり、口の中に残る血を吐き出し、トライデントベアーと対峙する。
その目には負けないと言う強い意志が宿っていた。
「さぁ、行くぜ!」
少年がトライデントベアーに向かって走り出す。
が、その走り出しよりもトライデントベアーの爪の一振りの方が速く──、
「ぐああああああああああああああ!?」
下から振るわれた三本の爪が、少年の顔を鋭利に裂く。
少年の顔には、三本の爪の痕が付いた。
「ぐっ……くっ……!」
少年は顔を押さえる。顔からはドバドバと大量に血が溢れ出している。
「負けない……! 絶対に負けない……! 僕は、絶対に生きるんだぁ!!!」
少年は痛みに耐えながら、走り出す。
「はぁーーーーーあああ!」
「ブモオオオオオ!?」
少年は飛び跳ね、トライデントベアーの顔面にパンチを打ち込む。
そして、体勢を崩したトライデントベアーに向かって──、
「はあああああああああああああ!!!!」
某特撮番組のヒーローのような、キックをトライデントベアーの腹部に打ち込んだ。
「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」
それを受けたトライデントベアーは、絶命した。
「がっ!?」
左腕がない為、少年は着地ができなかった。
少年は地面に落下した。
「はぁはぁ……勝てた……なんとか、勝て、た……」
少年は、倒れたまま意識を失った。
☆ ♡ ☆
夜。
「うっ……ううぅ……」
少年が目を覚ました。
「がぁ!?」
目を覚ました途端、全身の痛みが蘇ってきた。
殴られ、蹴られ、刺された全身の痛み。
そして、切断された左腕の痛み。
「あああああああ!!いだいいだいだい!!!」
少年が、その場でのたうち回っていると──、
『落ち着け。大丈夫。君は死なない。目の前にあるものを食し、羽織れ。そうすれば痛みは治まる』
「え……?」
少年の頭に、先程と同じ謎の声が流れてきた。
その声に従い、前を向くと、そこには焚き火が焚いてあり、そこに木の枝に刺された肉があった。
「く、熊の、肉……?」
その肉が、先程倒したトライデントベアーだと考えた少年。その肉の奥には、トライデントベアーの皮が置いてあった。
まるで、 ”ナイフなどで綺麗に剥いだかのように” 。
「こ、これを食べるのか……?」
『あぁ。安心してくれ。しっかりと火は通ってる』
少年は、右手で木の枝を取る。そして、恐る恐る熊肉を口にする。
「んっ!」
『どうかな?』
「美味い! めちゃくちゃ美味い!」
少年は、その場にある肉を一心不乱に食べ始めた。
そして、全部の肉を食べえた時──、
「うっ!? うう……!? があああああああ!?」
少年は絶叫した。
少年の体からは、紫色の光りが放たれていた。
「あっ……あああ……」
少年は、口から泡を吹きながら気を失った。
☆ ♡ ☆
朝。
「うっ……うぅ……」
少年が目を覚ます。
「あれ……痛みが、ない……?」
少年は目を覚まして、自身の異変に気がついた。
全身に訪れるはずの痛みが、全くない。
少年は右手を開いたり閉じたりする。
「やっぱり、痛くない……。傷が塞がってるし……」
痕は残ってしまっているものの、傷口は塞がっており、出血はなくなっていた。
肩から切断された左腕も、傷口が塞がっていた。
「こ、これは一体……」
『唱えてみろ、死と』
「……………死」
少年は、頭の中で聞こえる謎の声に従う。
右手を前に突き出し、そう口に出すと──、
「っ!?」
目の前にあった木が、一瞬にして枯れ果ててしまった。
「こ、これは……」
『君の力だ。その力さえあれば、君はさいきょうになれる』
「最強に……」
『君を痛めつけた奴らに、復讐する事だってできる』
「っ! 復、讐……!!!」
少年は拳を握りしめ、歯を食いしばる。
『君の人生、君が選ぶといい。健闘を祈るよ』
そう言って謎の声は聞こえなくなった。
「ふっ。ふふ……! この力で僕は……俺は、復讐してやる!」
少年は熊の皮を羽織り、歩き始めた。
誰にも止められない、復讐の道へと。
ついに闇へと堕ちてしまった少年。
この先、何が待ち受けているのか、どうなっていくのか。
期待しながら、楽しんでいただけますと幸いです!
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