転生したら話す糞になった幼馴染みの話
ある日、生のネギに首輪をつけてずるずると散歩させていた時のこと。
「うーわ、きったね」
住宅街の狭い道の真ん中に、でかくて立派な糞が落ちていた。
「犬のク○かな?でか……」
恐る恐る(?)そのでかい糞に近づき、なんとなくまじまじと見ていた。
すると。
「なんだテメェ?なにじろじろ見てんだよ!?」
その糞の方から、ドスの効いた声が聞こえてきた……気がした。とはいえ、まさか糞が話すなんてこと有り得るわけがないので、俺は辺りをキョロキョロして声の主を探した。すると。
「なにキョロキョロしてんだよ!こっちだ、こっちっ!!」
またあのドスの効いた声が聞こえてきて、俺は今度こそその声の方に視線を向けた。声はやはり、でかい糞からだった。
「はぁ?クソから声?嘘だろおい?」
「嘘じゃねぇよ!─って、お前……タケシじゃねぇか!!」
と、クソが何故か俺の名前を呼んだ。俺はその声に聞き覚えがあり、はっとなった。
「お前まさか……左吉か!?」
左吉は、俺の幼馴染みで親友だったやつだ。気さくで良いやつだったんだけど……一昨日、轢かれそうになっていたツチノコを猛スピードで走るトラックから守り、代わりに轢かれて亡くなったんだ。
「いや~まさか転生して早々、タケシに会えると思わなかったわ~」
「いや……マジで左吉なのか?てかなんで……クソ?」
「しらねーよ!俺が聞きてーわ!転生したと思ったら、〝ブリッ〞つってさ~出てきたんだよ、犬のケツから。因にこのクソしたのは、今脱走中の土佐犬の名前はココナッツ」
「犬ごつい系なのに名前クソかわいいかよ。てか、脱走って……そいつ噛まないよな?」
「さあ?でも、めっちゃ人の骨噛み砕きそうな顔してたけど」
「こっぇ……早く帰ろ……つーかお前はどうすんの?クソってw外に排出されたらもう終わりじゃね?」
「わかんね。けど、こうして今、タケシと話せてるしな~。どうなるんだろうな~俺。てかさ、なんで犬のクソなんかになったんだろうな。クソって最悪すぎね?俺前世何かした?そんな悪いことしたのか?」
と、なんだか悲しげに左吉は言う。
「いや~……お前良いやつだったけどな。ほんと、なんでまた犬のクソなんかに……」
と、左吉と話していると、後ろから。
「こっ、これは……!?」
と声がして、俺はその方を振り向いた。そこには、スーツを着た小太りのおっさんが立っていて、左吉に駆け寄りじろじろと見つめた。
「健康的な色……そしてツヤ。美しい形に、立派な太さと大きさ……」
「うわっ!?」
「ちょおっ!?きっ……たn……」
そう言っておっさんはひょいと、左吉を躊躇なく素手で持ち上げ天にかざした。俺は思わず『汚い』と言おうとしたが、今その糞は左吉だから、言おうとしてやめた。
「何て素晴らしい便だ!これは土佐犬のだな?」
「なんでわかるんだよ……」
ボソッと言う俺。
「今までこんなに美しい犬の便は見たことがない!これは君の犬の便かい?」
「い、いや、違いますけど……」
「な、なんなんだよおっさん!俺今クソなんだぜ?素手で触んなよ!きたねーだろ!」
あ、自分で言うんだ……と、内心で思う俺。
「なんと!この便話すのか!?なんと……神秘的な便なんだ。なあ便の君、僕の家に来ないかい?ずっと大事にするよ!」
「はぁ!?糞を大事にするってなんだよ。まあでも……時々そいつと、そこにいる友達と会わせてくれるならいいかな」
……いいのかよ。と、内心で思う俺。
そうして左吉は、その小太りのおっさんに引き取られ、いつまでも大事にされたのでした。
おしまい。