第三話 黒づぐめ
悲鳴 罵声 怒声 人々の声が混ざり合い熱を持つ、群衆が異様な一つの生き物のように動き出す。
人一人の力なら抑え込むことも容易いが、集団ともなれば、話は別、そう容易く抑えることなど出来はしない。
群衆の中から黒づぐめの少年らしき人物が馬車に向かって歩いてくる。
艶消しの黒いサブマシンガンを構え、まるで休日の河川敷を散歩しているような足取りであり、殺気立つ周囲とは余りにも異質な存在だった。
一瞬だが誰もが呆気に取られ、それを認識するのに間があく…喧騒の中に訪れた静寂そして、黒づぐめが雄叫び上げながら走り出す。
「うおぉぉぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙」
「構えろ!」
「止まれ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「きぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「撃つな!斬れ!」
「守れ!」
時間にすれば数十秒の出来事
騎士が馬車と黒づぐめの間に入り盾を構え、沿道の住民を誘導していた警邏隊の一部が抜刀し黒づぐめを左右から斬りつける。
そして、住民達の悲鳴が響く。
サブマシンガン相手に剣で防衛を試みる警邏隊、拳銃を携帯はしていたが、使う事は出来なかった。
黒づぐめを一撃で仕留められればよいが、そうでなければ、流れ弾が住民に当たる可能性があった。
もし、そんなこんなが起これば住民が暴徒化するかもしれなかった。
ただ、その選択は今回裏目にでてしまう。
黒づぐめが空高く跳躍し、盾と剣を無力化してしまう。
ダン!
馬車の屋根の上に降り立つとサブマシンガンを撃とうと姿勢を整えようとした瞬間、チョコレイが咄嗟に投げた剣が黒づぐめの背中に突き刺さり、その場でバランスを崩しながら倒れ込み、石畳の路上に落下した。
ドサッ…
乾いた軽い音がした、黒づぐめはピクリとも動かなくなった。
そしてすぐチョコレイは現場指揮の為、声を張り上げた。
「警邏隊、目標を捕縛せよ!第二騎士隊は馬車の安全を確保と姫の救護を急げ!」
そして、パレードは中止になった。