関係
嘔吐、鬱、自殺、などを扱った作品です。苦手な方はお控えください。
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電話をかけてきたのは恋人だった。
ここ最近この恋人と上手くいかず、「人殺し」、「全部ありえない」、「何考えて生きてんの?」と、色々とな言葉を日常的に浴びせられ、怒られ、ものを投げては拾わされていた。
優しい時もあったが、機嫌の悪い日はいつもそうだった。
死にたかった。
死ぬしかないと、死ななければならないと思った。
そういう思いで、今日死のうとしたのだ。
そんなことを思い出し、呼吸が荒くなる。
それを見たその人は、僕が取ろうと手を伸ばしていたスマホをとり、電話を切り電源を落とした。
「嫌なんじゃないのか?」
動揺を隠せない表情の僕を見てその人はそう言った。
僕はゆっくり頷いた。
「さっきの人はどんな人なんだ?」
「恋人、です、」
恋人と言っていいのか分からずしりすぼみな調子でそう答えた。
「なら出なくていいんだよ、自分のこと苦しめてくる恋人なんて、本末転倒だろ?」
確かにそうだ。
やっと気づいた。
周りに相談できる人などおらず、誰も言ってくれなかった正論をその人はサラリと言った。
なんだか、失っていた、消していた自分を少しだけ取り戻した気がした。
「話変わるんだけどさ、」
「はい、?」
「名前決めないか?」
「名前?ですか、?
僕は──────」
「違う違う、」
名前を言おうとしたところで遮られた。
「2人だけの名前、過去とか他の人に囚われないようにさ、新しくつけたいな」
新しい、2人だけの名前。
嬉しかったし、なんだか素敵に思った。
「いいですね、なんて名前にします?」
「君は、、、」
その人は少しだけ考えて
「はく、なんてどう?」
「たくさん吐いてるからですか?」
「うん、、まあ、そんなところ」
図星だったのか、その人はバツが悪そうにそう答えた。
「単純ですね、でも、はく、いいですよ」
「気に入ってくれてよかった!じゃあ僕は?」
「えーっと、」
聞かれるかなとは思っていたが考えていなかった。
「なんでもいいよ」
「じゃあ、つゆ、とかどうですか?」
「つゆ!いいね」
つゆさんはすごくうれしそうに名前を受け待ってくれた。
「梅雨の時期、好きなんです。雨の匂いが好きで」
昔から雨の匂いが好きだった。あの懐かしい香りが。
「じゃあ、「はく」と「つゆ」だね。これならよろしく、はく」
「こちらこそよろしくお願いします、つゆさん」
「つゆさんじゃなく、つゆ、がいいな。それに敬語じゃなくていいんだよ、上下関係なんて嫌だろ?」
ニコッとした表情だった。楽しそうにしてるつゆを見て、私も少し緊張が緩んで行く気がした。
「じゃあ、よろしく、つゆ」