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いつかの明日を見に行った話

作者: 守道売

死んだ僕の大切な友人。

あの子が好きなものだったから、見に行かなければいけないと思った。


いつかの明日を見に行った。

これだけで何の話をしているのか、わかる人は何人いるのだろうか。

僕は4月1日、とある特撮作品の10周年の記念映画を見に行った。

1時間の映画を、往復凡そ3時間かけて見に行ったのだ。



高校2年の時だったか、昼休み、お弁当を食べながら出た話題のひとつであった。

僕は特撮を見る趣味はなく、また、毎週日曜日の朝にきっちり起きることなんて出来なかったから、その話はおそらく半分くらい理解できていなかったと思う。

それは彼女が一番好きな作品らしい。

主人公と、その相棒だかなんだかと、あとはヒロインとの関係性がとても良いのだそうだ。

僕はネタバレを気にする質ではない。それに、特撮作品は配信されている場所も少なく、僕の家はサブスクというものを嫌厭していたから、最終的な結末も全て聞いてしまった。

そうして、彼女たちは、なにやら「いつかの明日」というものを待っているとの事だった。


大学に進学し、外出が自粛された頃、その時聞いたのとは別の特撮作品を見た。

それも彼女の好きな作品だったから、彼女の返信の有無に関わらず、感想を送り続けた。

時折帰ってくる感想には、それを見たら、また自分の好きな作品を見てくれ、という言葉が混じっていた。

これが見終わったらね、という話をしていた。


そうしてそのうち、返信が来なくなった。


彼女との連絡が途絶えてから、何故だかその作品を遠ざけてしまって。何となく見ないまま、1年と半分くらいが過ぎた。

今になってやっと、彼女が生きているうちに見ておけばよかったと、何度も何度も思ってはひどく後悔できるようになった。

そんな時に、小耳に挟んだのだ。いつかの明日が映画になった、と。


ああ、これは、見ないといけないな、と思った。

別に見なければいけないことは無い。

彼女が私に何か義務を課したことは無いし、なにより、映画を見るにはまず本編を見なければならない。

そう思いながら、でも、それでも、僕はこの作品を見なければならないと思ったのだ。


そうして、空いている大学生の春休みを存分に使い、僕はその作品を2日ほどで全て見てしまった。

そうして、4月1日、映画を見に行ったのだ。



なぜ僕がこの作品を見なければならなかったのか、いや、見なければならないと思ったのか。それは自分にも分からない。

彼女が見れなかった作品を代わりに見てやろうとか、そういうのでは無いとおもう。弔いの気持ちとか、そういう神聖なものでもないと思う。

だから、後付けするとすれば、僕は、彼女が好きで、求めていたものをこの目で見たかったのだと思う。

そうして、もう二度と縮まることの無い彼女との溝を、少しでも埋めたかったのだと思う。


映画の内容は、彼女が見たかった世界なのかは分からなかった。

彼女がこれを見たらどう思うのだろうと、けれど、彼女と見られたらどんなに楽しかったのだろうと、どんな感想を残したのだろうと、見ている間中ずっと考えていた。

隣から彼女の驚く声が聞こえてくる気がして、それを聞こうと必死だった。


見終わって、呆けて、帰りの車の中、先に映画を見ていた別の友人と感想を言い合いながら帰った。

パンフレットも買った。でもまだほとんど読んでいない。



僕は、3日経ってから、彼女のLINEに、膝の上に乗せた特典と映画の半券を載せて撮った写真をひとつ送った。

送った時間は、何と偶然にも10時10分であった。

もし家族が管理していたら恥ずかしいが、二度と既読のつかないLINEにものを送ることのさびしさったらなかった。

僕は彼女の訃報を直接聞いていないから、ふと何か返事が返ってくるのではないかと、そう思っている。

来たら本当に恐ろしいことだが、実はケロリと生きていて、なんでもなく返事が返ってくることがないかと、未だに期待している。


私も見たよという感想を、

でもそんな明日は絶対に来ないのだ。



4月に観た映画の日記が出てきたので投稿しました。

よくわからなかっただろうと思います、すみません。

以前書いた友達が死んだ話を読むと多少理解できるかもしれません。

読んで下さりありがとうございました。

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