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 「こんばんはー」


 「お邪魔します」


 「いらっしゃーい」


 絵梨と結ばれた数日後。

 絵梨と二人でノブさんのバーに足を運んでいた。

 

 「ほー…」


 「ノブさんどうしました?」


 「よーやくか、と思って」


 「分かるんですか!?」


 「何年中洲でバーやってると思ってるの」


 ノブさんは俺たちの注文品を作りながら答える。

 ノブさんには絵梨と俺が付き合ったことが分かるらしい。

 バカップルみたいにイチャイチャしてないんですけど…。

 

 絵梨と付き合うと決めてからも特に変化はない。

 連絡を取り合い、飲みに行ったり。

 付き合う前と変わらないと思う。

 幼馴染が彼女になっただけだ。

 

 「そんなに分かりやすかったです?」


 「二人の雰囲気で分かるよ」


 「変わらないと思うんですけどねぇ…」


 どうぞ、とノブさんが飲み物を目の前に置いてくれた。


 「今までは少し溝があったけど、その溝が完全になくなった感じ」


 「うーん…」


 「絵梨ちゃんの気持ちに気づかなかった樋口っちゃんには分からないと思うよ」


 「ええっ!?」


 「いやいや、気づくでしょ…」


 俺が鈍感男だと言いたいんですか?

 たしかに絵梨に言われるまで気づかなかったけどさ…。


 「どこかの鈍感男とは違いますねー」


 「………」


 「私に告白の答えを2か月近く放置してたしね」


 「うわ、最低男」


 「ぐすん…」


 絵梨とノブさんが虐める!

 二人で俺を虐めなくてもいいじゃん…。

 

 「ノブさんも何か飲みましょうよ。奏司の財布から出すんで」


 「ちょ!?」


 「お!ならビールで」


 「しかも高いやつぅ!」


 「「かんぱーい!」」


 「ひでぇっ!?」


 俺が何したって言うんだよ…。

 絵梨にナニはしたか…。

 おっと、これ以上はいけない。

 このまま絵梨を連れ去りたくなっちゃう。


 「幼馴染でカップルかー」


 「いいでしょ?」


 ノブさん羨ましいでしょ。

 俺の彼女ですぜ!


 「いいね。ムカつくね。今日のチャージ料2倍で」


 「はぁ!?」


 「さらに倍!」


 「ぼったくり!?」


 ノブさんがウソウソと笑ってごまかす。

 勘弁してくださいよ…。

 俺の財布がスッカスカになっちゃいます…。


 「それでどうするの?もう結婚するの?」


 「まだしませんよ。取敢えず同棲はしようかなーって」


 「そうなの?私聞いてないけど」


 「今言った」


 結婚はもう少し後で。

 だけど同棲はしたいんだよな。

 一人暮らしはもう嫌なんだよ…。

 絵梨なら知ってる仲だからすぐに馴染めると思うし。


 「さすが英雄は違うね」


 「?」


 「絵梨ちゃん知らないの?樋口っちゃん英雄の社員だから金持ちだよ。給料良いらしい」


 「え…」


 ケータイ会社の英雄の社員です。

 キノコにも犬にも負けてない英雄です。


 「ケータイ屋じゃないの?」


 「ケータイ屋だけど?」


 あれ、俺絵梨にケータイ屋って言ったよね?

 

 「ケータイ屋ってショップ店員じゃないの?」


 「ちゃうわい」


 「…奏司ならショップ店員だと思ってた。なんで教えてくれないのよ」


 「最初に言ったじゃねーか。ケータイ屋だって」


 絵梨がぷんぷん怒る。

 英雄だからケータイ屋で合ってるだろ?

 俺間違ってないぞ…。


 「心配して損した…」


 「ええ…」


 絵梨曰く、俺がショップ店員だと思っていたらしい。

 友達のショップ店員が給料安いと言っていたらしく、それを聞いた絵梨が「私が頑張らないと」と思ったらしい。

 

 「絵梨ちゃん騙してたの?樋口っちゃん最低じゃん」


 「騙してないですよ!」


 「うわ、最低…。奏司見損なったよ」


 「騙してたわけじゃないのに…」


 え?俺が悪いの?

 俺が悪いみたいな空気になってるし…。

 

 「騙した樋口っちゃんが悪いからもう一杯貰うね」


 「私も」


 「ちょい!」


 絵梨はいいけど、ノブさんは別でしょ!

 人の金で好き勝手飲むんじゃないよ!

 クソッ…!タダ酒は美味いか!?


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