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サプライズ③


 「嬉しくないのか?」


 「ううん、嬉しいよ」


 なら…。

 なんでそんなに怯えているんだ?

 何に怯えているんだ?


 「あまり嬉しそうに見えないな」


 「そうじゃないんだよ…」


 俺に言えない何かがあるのか?

 

 「…間違ってたら悪い。俺に言えない何かがあるのか?」


 「…言えない…わけじゃないよ」


 そんなに悲しい声で言われても説得力ないぞ。

 幼馴染でもあるけど、今の俺は絵梨の彼氏だ。

 

 「俺は絵梨の彼氏だ。なんでも言えよ」


 「…うん」


 絵梨がペットボトルを握りしめ、ぽつりぽつりと過去を語る。



 「前に言ったよね。付き合う覚悟ができたら奏司に告白するって」


 「そうだな」


 「高校に入学して、勉強にも学校生活にも余裕ができたから、奏司に告白しようと思ったんだ。だけど、奏司はそのときは別の女の子と付き合ってたし」


 「…スミマセン」


 うん、彼女いたね。

 絵梨の気持ち知らなかったし…。


 「それで私も高2のときに彼氏ができたんだけど…」


 「うん」


 「強引にされちゃったんだ…。強姦されたわけじゃないけど…」


 「は?」


 強引にされた?

 付き合っててもそれは強姦だろうが。


 「…ほら、私の学校って進学校だったから。テスト勉強って言われて家に行ったら襲われちゃって…。すぐに別れたんだけどね…」


 「………」


 「そのときも奏司に連絡しようとしたんだけど止めちゃった。奏司は付き合ってる人いたし、彼女でもない私からそんなこと言われても迷惑だと思ったから…」


 迷惑なわけあるか。

 俺の大事な幼馴染に何してくれてんだ。

 自分の中の血液が沸騰するのが分かる。

 

 「大学のときも付き合った人がいたけど、いざしようとすると体が思い出しちゃって…。男性恐怖症みたいになってたんだと思う。そのときも奏司に連絡しようとしたんだけど、電話かけるの躊躇っちゃって…」


 「もういい」


 「やだよね…。こんな汚れた女…。ごめんね、奏司…」


 「もういい!」


 絵梨は涙を流していた。

 俺は絵梨を抱きしめる。


 汚れている?

 絵梨のどこが汚れているんだ?

 どこも汚れてないだろ。


 「奏司…?」


 「助けてやれなくてごめんな」


 「…奏司は悪くないよ。私が奏司以外と付き合ったから…」


 絵梨は悪くない。

 高校時代の俺が聞いたら絵梨を襲った男を殴りに行っていただろう。

 付き合っていなくても、絵梨は大事な幼馴染だ。


 「絵梨は汚れてなんかいない」


 「でも…」


 「ツラかったな」


 「………うん」


 抱き締めた絵梨が俺の胸の中で泣いている。


 泣け。

 泣いて忘れろ。

 嫌な記憶なんて俺が忘れさせてやる。











 「ごめん…」


 「落ち着いたか?」


 泣き止んだ絵梨が俺から離れる。

 泣いてたから目が真っ赤だ。

 だけど、先程までのように瞳に恐れない。


 「男性恐怖症って言ってたけど、今は大丈夫なのか?」


 「大丈夫…だと思う。普通に生活する分には問題ないんだよね…。社会人になって付き合った人はいないけど…」


 「…俺は大丈夫なのか?」


 「奏司は大丈夫。逆に安心する。今も抱きしめられたけど、ものすごい安心した」


 大丈夫なのか?

 俺も勢いで絵梨を抱き締めちゃったけど…。

 これで俺もダメだってなったら凹む…。

 まぁ、彼氏なんだからリハビリに付き合うけど。


 「絵梨」


 「ん…」


 「絵梨と初キスだな」


 絵梨が嬉しいこと言うもんだから止まらないわ。

 キスは大丈夫か?

 絵梨と俺との初キスだぞ!


 「初めてじゃなくない?」


 「ほわっ!?」


 「幼稚園のときにキスしてるじゃん」


 「ふぁっ!?」


 初キスじゃないだと!?

 幼稚園!?

 

 「ほら、卒園式のときの」


 「…ああ~」


 思い出した。

 卒園式のときに絵梨とキスしたわ。

 二人の母親にせかされてキスしました。

 写真も残ってると思う。


 「だから2回目だね」


 「なんてこった…」


 「…良いこと教えてあげる」


 絵梨が俺の耳に小声で話しかける。


 「…大人のキスは誰ともしたことないんだよ」


 「なん…だと…」


 聞いた話だと絵梨の付き合った男は俺を含めて3人。

 高校時代に襲われたって言ってたけど、キスはしてないのか…。

 

 「絵梨」


 「んん…っ」


 そんなこと言われたら行動するのみですよ。

 俺は我慢強い男じゃないもんでね。


 「ん…」


 「嫌か?」


 「…もっとして」


 もう止まらないからな。



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