サプライズ②
「ありがとうございました」
「いやいや、私でよければいつでも手伝うよ」
結婚式のサプライズ動画の撮影は完了した。
最後の中学時代の恩師を訪ね、撮影したことで、後は編集するだけとなる。
絵梨と俺の役割は撮影だけだ。
編集は夕貴がやるらしい。
これで俺の仕事は終わりだ!
「先生も老けたね」
「俺らの担任だったときで40後半だから50後半だろ?そりゃ老けるだろ」
先生も年取ってたなぁ。
担任のときは黒髪に白髪交じりだったが、今は白髪一色だった。
「終わったことだし、飯でも食って帰るか」
「賛成」
「どうする?ここから帰るとなるとうどんにでもしとくか?」
「たまにはいいね。うどんで!」
福岡をラーメン県だと思ってる人も多いかと思うけど、福岡はうどんも有名なんだぞ。
気分はごぼ天だなぁ…。
「美味しかったー」
「久しぶりに食うと美味いよな」
絵梨とうどんを食べ終え、車のエンジンをかける。
「家まで送ればいいよな?」
絵梨の家までの道も慣れたもんだ。
もう何回も送っていってる。
送り狼にはなってないぞ。
「どうした?」
「………」
「どこか行くか?」
「うん…」
まだ17時だし、帰るには早いか。
適当に車を流してブラブラするか。
絵梨が行きたいっていったところに向かいますかね。
「…奏司。あそこ行きたい」
「どこだ?」
「…あのホテル」
「はぁっ!?」
海でも行くかーと市内を走っていると、絵梨が指定したのはホテル。
ホテルはホテルでもピンク色のホテルだな…。
絵梨さんや、さっき飲んだ?
「冗談は止めとけ」
「…冗談じゃないし」
「ほわっ!?」
意味分かってるのかよ。
あそこは男女がチョメチョメするとこだぞ…。
「…意味分かってるのか?」
「…うん」
据え膳食わぬは男の恥…。
そこまで絵梨に言わせちゃなぁ…。
俺も覚悟を決めるか。
「………」
「………」
絵梨の指定したラブホテルに到着し、無言の絵梨を俺が引っ張る。
ホテルに入るときもそうだが、絵梨は無言だ。
無言になるなら止めとけよ。
部屋に入って何もしないで終わりだ。
「ほら、上着」
「うん…」
部屋に入り、絵梨の上着と俺の上着をかける。
「ほら、水飲んで落ち着け」
「………」
ウェルカムドリンクの水を絵梨に渡し、絵梨と横になるようにソファーに座る。
「飯食ってから変だぞ」
「…そうかな」
「取敢えず水飲んで落ち着け」
未だにペットボトルの封を開けない絵梨。
いつもの絵梨とは違う、何かに怯えているような感じがする。
「…俺が返事をしないのが悪いのか?」
「………」
絵梨に告白されてから2か月は経っている。
未だに返事をしない俺は最低男だな。
言うタイミングがないんだよ!
「…それもあるけど」
「あるんかーい!」
そりゃそうですよね。
未だに態度を保留して、毎週絵梨と遊ぶような男ですから…。
「…返事をしないで私と遊んでくれるってことは期待してもいいの?」
顔を上げた絵梨の瞳には恐れが浮かんでいる。
何を恐れているんだ?
俺が断ると思ってるのか?
「…俺がそんな軽薄そうな男に見るか?」
「…見える」
「ちょーい!」
実直な男奏司を捕まえてなんてこと言うんだ!
…返事もしてない男が実直なわけないか。
申し訳ないっす…。
「絵梨に告白されて、今一度絵梨のこと考えたんだ。絵梨は俺の初恋の女だし、今でも好きって言ってくれたのは嬉しかった。だから、しっかりとした気持ちで絵梨に返事をしたかった」
「………」
「中学の時は勢いもあったけど、今回はちゃんと考えたかった。ちゃんとした答えを出さないと絵梨にも申し訳ないと思った。…未だに保留してる俺が言うことじゃないけど」
俺は絵梨の手を取り、自分の左胸に持っていく。
「ほら…。分かるだろ」
「…抓ればいいの?」
「ちゃうわ!」
誰が抓って喜ぶ変態じゃ!
そんな趣味ないわ!
「…ほら、ドキドキしてるだろ」
「…ホントだ」
絵梨に俺の心臓の音を聞かせる。
絵梨といるとドキドキしてヤバいんだよ…。
これが答えだ。
分かるだろ。
「…ラブホだから?」
「そうじゃないわ!」
俺にどれだけツッコミさせるんだよ…。
俺は漫才師じゃないんだよ…。
「好きでもない女にこんなにドキドキしない」
「…それって」
「それが答えだ」
「…よかった」
俺は絵梨が好きだ。
幼馴染としても好きだけど、1人の女として好きだ。
絵梨に告白されてから考えた。
絵梨ともう一度付き合う。
子供とは違う、大人の付き合い。
絵梨と20年来の付き合いだ。
初恋の女だ。
もう一度絵梨と付き合いたい。
それが俺の答えだ。
絵梨に告白の回答をしたが、絵梨の瞳からは恐れが消えていない。
どういうことだ?




