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絵梨の気持ちと俺の気持ち


 絵梨と俺は、ノブさんのバーから出て、那珂川沿いに設置されたベンチに座っている。

 美月さんは一人で帰るからと言って消えていった。

 美月さんも察しているのかもしれない。


 「寒くないか?」


 「…大丈夫」


 2月になったとは言え、まだ日本海からの風は冷たい。

 

 「さっきのって…」


 「…今奏司が考えてることだと思うけど」


 「…そっか」


 おいおいおいおいおい。

 絵梨さんそうなんですか!?

 

 そりゃぁ、絵梨は幼馴染で気の知れた間柄だ。

 中学のときだって、付き合ってたし、俺の初恋の女だ。

 

 「…奏司はどうなの?」


 「…わからん」


 「…そっか」


 「待て!そうじゃない!」


 絵梨、落ち込むな!

 拒否したわけじゃないぞ!


 「絵梨の気持ちは分かった。だけど、俺の気持ちが分からん」


 「はぁ?」


 「そんな気持ちで絵梨に答えは出せん」


 「なにそれ」


 絵梨の気持ちは正直嬉しい。

 というかめっちゃ嬉しい。

 絵梨のような美人にそう思われるのは男冥利に尽きる。

 

 だけど、俺の気持ちが定まってないのに返事はしたくない。

 知り合ったばかりの女性だったら、そんなことはないかもしれない。

 だけど、絵梨は幼馴染だ。

 そこら辺の女性より大切だ。

 

 絵梨がまた俺を好きになってくれたんだ。

 俺だってちゃんと答えを出したい。

 それが絵梨に対する礼儀だ。


 「ねぇ、別れたときのこと覚えてる?」


 「…たしか付き合うのはまだ早いだっけ?」


 「そそ」


 絵梨が当時のことをぽつりぽつりと話し出す。


 「奏司から告白されたとき嬉しかったんだ。でも中学生だったじゃん?だから恋愛感情とかよくわからなくて。一緒に帰ったりしてたら、部活のみんなに言われて急に恥ずかしくなっちゃって。別れの話をしたけど、奏司のことは嫌いじゃなかったんだよ。私が付き合うのには未熟だったから」


 別れたけど、幼馴染としての付き合いは今まで通りだったからな。

 付き合ってるときも幼馴染と一緒にいるような感覚だったし。


 「それで私に付き合う覚悟ができたら、私から奏司に告白しようと思ってたんだよ」


 「そうなの?」


 「そしたらすぐに受験だったじゃん?奏司は他の誰かと付き合ってたし」


 「うぐっ…。絵梨は俺との恋愛に興味がないかなーって思って。俺も絵梨との付き合いは幼馴染感が抜けてなかったから…」


 「ふーん」


 俺も絵梨から別れ話されたときはショックはそこまでなかったし。

 絵梨と俺はカップルってよりも幼馴染のがしっくりきてたからなぁ…。

 

 「その割には高校時代に何もなかったけどな」


 「そう…だね…」


 なんだ?

 高校時代に何かあったのか?

 

 「奏司は………。ごめん、なんでもないや」


 「おう」


 絵梨が言うのを待とう。

 絵梨も話難そうだしな。


 「奏司は私のことまた好きになってくれる?」


 「そうだな。多分このままいけば落ちる」


 「ならもうちょっと押すね」


 そりゃ付き合いの長い絵梨だ。

 そう思われるのは嬉しいんだよ。

 最近だって絵梨と遊んだり飲んだりして心地いいと感じていたんだ。

 意識すれば気持ちをが傾くのに障害はない。

 なんたって幼馴染だしな。


 「それじゃ、さっそく明日遊びに行かない?」


 「うぇ!?」


 「予定あるの?」


 「…ないけど」


 「ならいいじゃん」


 「…午後からでいい?」


 「仕方ないなぁ」


 明日は昼まで寝かせてくれ。

 それ以外だったら大丈夫だからさ。

 

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