助けた女性は初恋の元カノでした
黒白が終わりましたので、新連載です。
幼馴染物です。
「大丈夫ですか?」
帰り道の博多駅まで道。
女性が蹲っていた。
たまたま目に付いた。
どうやらヒールのかかと部分が折れているようだ。
誰も声をかけないなんてみんな冷たいよな。
全ての困っている人を助けるなんて正義感じゃないけど、さすがに目に付いた人を放置しておくことはできない。
「あ…はい。ヒールが折れちゃいまして…」
「ツイてないですね。たしか構内に靴の修理できるところがあったはずです。私が直してきますよ」
女性のヒールの右足かかと部分が折れている。
博多駅の構内に靴の修理屋があったはずだから、俺が行って直してもらってくるか。
「よろしいですか…?見知らぬの方なのに申し訳ございません」
「いえいえ、困ったときはお互い様です。どうしますか、修理まで待っていますか?」
女性は修理の間、近くのカフェで待っていてもらうことにした。
さすがにこの時間帯に片足がない状態で歩きたくないと思うし。
この場で待っているという女性をカフェに押し込み、俺は靴の修理屋を探すことに。
どこだっっけ…?
「お待たせしました」
「わぁ…。ありがとうございます」
「簡単な補修だけみたいですので、後日交換してもらってください」
「重ね重ねありがとうございます」
修理屋のおじさんが30分程で直してくれた。
応急処置らしく、後日交換しないとすぐに折れてしまうとのことだ。
男だから詳しくないけど、女性も大変だなぁ…。
「あの…お礼を…」
「大丈夫です。これも何かの縁でしょう」
お礼をと財布を取り出す女性。
お礼なんて不要です。
「では修理代と、ここのお茶代だけでも…」
「分かりました。ご馳走になります」
女性は折れなかった。
ヒールは折れたのに…。
せっかくのご厚意を無碍にするのも申し訳ないし、俺もお茶の一杯はいただこうかな。
「抹茶オレですか?」
「この店でしたらこれですね。コーヒーの美味さが分からない人間ですので」
某コーヒーチェーン店。
色々あるけど、俺はこの抹茶オレが好きなんだよね。
コーヒーの美味みなんて分からないし、コーヒーを飲んで喉を潤してる人の気持ちが分からないんだよなぁ…。
コーヒー牛乳なら最高なんだけどな。
「甘党なんですか?」
「甘々党です」
女性が微笑んでくれた。
今初めてしっかりと見るけど、可愛いらしい笑顔の女性じゃん。
いやぁ…、良いことするとお茶が美味い。
「あ…、名乗り遅れまして申し訳ございません。茅原 絵梨と申します。この度はお助けいただきありが―――」
「茅原…絵梨…?」
「え…」
嘘でしょ。
いや、同姓同名でしょ。
ないない…。
「どうかされましたか?」
「その…。不躾な質問なのですが、小学校は箱崎ですか?」
「ええ…」
「…年は今年で25じゃないですか?」
「…そうですけど」
マジかよー!
ビンゴだわ…。
うそーん…。
「絵梨か…。久しぶり」
「え…」
俺は名刺を絵梨の前に差し出す。
「嘘…。奏司…?」
「そうたい」
「ええーっ!?久しぶり!どげんしょったとー?」
まさか助けた女性は同級生で、幼馴染で、元カノで、初恋の女性だった。
こんなことあるー?