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マタギ



言われるがままに、黒塗りのベンツに乗ったミロクは

ヤクザの事をチラチラ覗いている


「あ、、あの、、 」



「んだぁ? 」

ヤクザがギロっと睨む


「あ、、 」


ヤクザの迫力に一度言葉をとめるがミロクは声をだす


「ありがとうございました!! 」


車で座りながらヤクザの方に向き頭を下げた


震えるミロクを見ながら ヤクザは ふっと笑う



「おめぇよ~ たっちゃん の娘ってほんとか? 」



「っへ? たっちゃん、、? 」


父のあだ名だ

父と付き合いが長い人は たっちゃんと呼んでいた気がする


「ち、、父の友人ですか、、? 」


「ああ、付き合いは長いな、、 羽川はがわ 芳龍ほうりゅうだ おぼえとけ 」


「わ、、私は、モウリ ミロクで、、 」

自己紹介をしようとしたが 羽川は不機嫌そうに外を眺めてる

運転をしているのはヤクザの若い組員だ

10代に見えるが免許は持っているのか、、?


しばらく沈黙が続いたが 羽川の口がひらいた



「ランランが人手が足りないからって呼んだからよぉ~ 飛んできたがぁ~ 」


ミロクは、 ランラン先生の名前を聞いて ビクっとなる


「ランランのボケェはどうしんだぁ?ごらぁ?  」



ミロクは何も答えることが出来ず俯いた


沈黙が答えと羽川は察っし


羽川は窓に顔を向ける 

顔が見えないように外を向いているが、 羽川の肩は震えている


助手席に座っている 若い組員がチラチラ 羽川を見ていると

羽川は見ている男の髪を掴み顔面を殴りだした


「す、、すみません 」

若い組員が血を流しながら謝罪している



しばらく車が走ると耳鳴りが キンっとして

ミロクは耳を押さえた


「着いたぞぉ、、 」


「へ? 」



見慣れない土地で車が止まる


「降りろ 」


羽川がミロクを睨み車から押し出した



「え?? 」


羽川が名刺を渡してきた

ラインIDも入っている


「連絡はするんじゃぁ ねえぞ、、 でも、何かあったらラインしろやぁ 」


「??? 」

羽川は一方的に伝えると 車は走り出してしまった


走る車を見つめながらミロクはあたりを見回す


「ここは何処よぉ!!!!! 」


ヤクザの羽川に面と向かっては言う事が出来なかった為、

1人になり大声で、ぼやく


通りすがりの歩行者達は、若い女が叫んでいるので男にでも捨てられたかと

哀れみの表情を向けている


我に返り現在の住所を確認しようと携帯を取り出した

携帯のGPSを見ると店から一駅しか離れていない


「え、、近! 」

車で長い時間走っている気がしていたが、距離はそこまででもなかった様だ


携帯の表示されている時間を確認する

「16時か・・・ 」



ミロクは 連絡帳を開いた

「もしもし、、 父ちゃん  」



一連の出来事を父に会って伝える必要がある


まだ現実的では無いが、ランラン先生のこと、羽川ヤクザの事を 父から聞かないといけない



父と会う事になった 

待ち合わせは 23時30分に渋谷で


よし

時間は、まだまだある


ミロクは、先程惨劇が起こった あのパンケーキ店に入っていった


店の椅子に座りメニューを眺める


店内は何事もなかったかのように 賑わいを取り戻していた


先程は緊張からか ゆっくりとメニューを見ることができなかった

かわいいフォントで メニューを眺めているだけで 楽しい


ミロクはスペシャルと書かれたページを開き

3段重ねのフルーツと生クリームのパンケーキ2550円(税込み)を注文した


心を弱らせてはいけない!

らんらん先生が美味しそうに食べていた 

あの ”スペシャルパンケーキ” が忘れられなかったのだ


厚みが3cmもあるパンケーキが3段


フルーツが、その分厚いパンケーキを隠すように どっさり乗っている

3人前のパンケーキだ


ナイフをパンケーキに乗せると軽く弾む

弾力がある系のパンケーキなのかな ふむ


ナイフに少しだけ力を入れると スッと一番下の段まで綺麗に切れた


なるほど

表面はさくさくだが中は空気の様に軽く ふかふかだ


フルーツのほどよい酸味が、やさしい甘みクリームが

口の中を支配する


パクパクパクと無心で食べる


最後の苺を口に放り込んだ


「ん~まぁ~~い☆ 」


ミロクはペロりとパンケーキを平らげた



パンケーキの有名店 ラヴワゴン ★★★★☆

厚み3cmが3段! スペシャルパンケーキは、迫力満点!

外はサクサク、中は空気みたいに軽いパンケーキをご賞味あれ☆



さてと

気を引き締めて ミロクは、渋谷へと向かう




23時30分 渋谷はまだまだ賑わっている

終電はあるから別に良いが、何故この時間なのか父にLINEを送ったところ


バイトが終わる時間との事だった


「バイトかよ、、! 」

40代後半で、売れない音楽家の父


恥ずかしさから つい叫んでいた


父と会うのは久々だ


渋谷駅のハチ公前で待っている


流石、渋谷

ハチ公前で待っていた10分程で何回ナンパされた事か、、


とにかく凄い人混みだ 

流石に父を見つけるのも至難の業かもしれない


っと一瞬思ったが

そんなことは、なかった


以前の父の風貌は 黒髪三つ編み頭の巨体のおっさんだったが 


三つ編みのおっさんは、何を思ってか 

髪の毛も髭も銀色に染め ファンタジー映画の魔法使いのようにクラスチェンジしていた


腰まで伸びる銀色のロン毛、肉体は変わらずプロレスラー風

場所は夜の渋谷


正直に言って 怖い


「は?? なにやってんの?? 」


ファンタジーの世界の住人になった父に冷たく言い放つと


「へへへ、髪染めるの夢だったんだよね 」


と うれしそうに笑う


こんなんだから母にも捨てられるんだよ、、


イライラするが父の弱点は知っている


「あれ? 父ちゃんまた大きくなった?? 」


「え、、、、?? そっ、そうかな、、? 」

父がシュンと肩を落とし落ち込み 小さくなる


日々体を鍛えている為 どんどん肥大化しているが

父の理想の体型は、ガリガリのパンクロッカーなのを知っている


どんどん、小さくなった父を確認した後

「ん~ やっぱ あんま変わらないかも  」

そう伝えると


「お、おおよかった、、! 」

父が ぱぁ~~~~っと 笑顔に戻る


一瞬落ち込んだ父を見てスッとしたので 近くの店に移動しようと伝えた


適当に居酒屋に入ると生ビールを頼む

父は太る事を気にしてワインを


乾杯をすると

父はニコニコっと 嬉しそうにしている


少し落ち着いたところで、今日起こった 非現実的な出来事を 父に話し始めた


都市伝説の 累肉の事


ランラン先生に助けを求めて相談した事


ランラン先生が累肉に”負けた事”


ヤクザの羽川が助けてくれた事


間違いが無いよう思い出しながら ゆっくりと伝えた


父は、黙ってミロクの話を聞いている



一通りの話しを伝え終わると

父とミロクは お酒を飲み進めた


「・・・」

しばらく沈黙が続いたところで

父がゆっくり口をひらいた



「ランランは・・・ 」


言葉にすると現実として受け止める事になる


だが、父は最期まで伝えた



「ランランは・・ 死んだんだな、、? 」


父の言葉に、ミロクは涙を堪えながら


ゆっくりと頷いた


父が頭を撫で、抱き寄せてきた

涙が止まるまで 父は何も言わず待ってくれた


落ち着くと、父は場所を移動しようと伝えてきた


会計は父が払う


収入は父より多いと思うが 父親のプライドが許さないそうだ



タクシーに乗り込み とあるマンションへと到着した

父の住むマンションではない


「ねえ、父ちゃん 」


ミロクは聞きたかったことをそのまま質問してみた


「ランラン先生達って何者なの? 」


父は少し悩み、沈黙が続いたが


自分を納得させるかの様に話し始めた


「2回も都市伝説に巻き込まれてるんだから もう、伝えた方が良いかもな 」

父が歩きながら話し始めた


「なあ ミロク ミロクの中で科学ってどのくらいの認識だ? 」


父の説明は回りくどいから、少々苦手だ


「科学、、?? 」

今回も、きっと何かを伝える為に例え話から始まるに違いない


「えーっと、、 色々解明できるし、昔とは違ってかなり進歩しているよね、、? 」


父が、 うんうん と頷く

「じゃあ幽霊はどうだ? 」


う~んっと唸り ミロクは 一度考え込む

「いないと思っていたけど、、、 実際に見てしまったしな~ 

 でも、科学的に解明されていないし、、 」


その言葉を待ってましたとばかりに 父がニヤッと笑う


「そうなんだよ 科学的に解明出来ないが 確実にいるんだよ 

 でも、実際に見たり被害に遭わないと民衆は信じる事は出来ない 」


父の説明は静かに続くが 熱がこもっている


「ミロクだって、実際に都市伝説の被害に遭わない限り 幽霊の事を信じなかったと思う 」

ミロクは頷いている


「みんなが信じることが出来ないから、国は表立って税金で幽霊の対策をする事が出来ない 

 でも困ったことに被害はある訳だ それも結構な規模でな 」


ミロクは、 めくらさんや累肉の姿を思い出す


「ランランや羽川達は、人々に被害を出す幽霊を対処する為に 国から公認されている人間達なんだよ 」


熱い展開!!


売れない音楽家として日々バイトしている 情け無い父の裏の顔は

もしかして、、!


「まさか、、、!じゃ、じゃあ、、!父ちゃんも、、! 」



「わしは、違いますぅ~ 」


「ああ、、そう、、 」

ミロクはがっかりし、恥ずかしくなった


「じゃあ、なんで父ちゃんは彼らの事を知っているの? 」


父は苦笑いしている

「うーん、知り合ったのみんなバラバラなんだけどね~ 


 バイト仲間だったり 通ってるジムで仲良くなったり 

 ライブの打ち上げの居酒屋で知り合ったりとかぁ 」



「え~~~なにそれ~ 」

ミロクは、 ガッカリし過ぎて肩を落とす


「霊を退治して、国からお金出てないの~? なんでアルバイトで、 出会ってるのよ 」


父もミロクの残念そうな顔に同意している


「さっきも言ったように科学的に証明が出来ないからな~、、

 国も認知しているが証明出来ないから大きく動けないんだよ 

 

 霊の被害を増やさない為の協力と、退治したら退治した人間に報奨金を出すみたいな感じかな? 」


分かり易く説明するために 父は頭を悩ませる


「あ! マタギみたいなもんだよ!熊を退治したら国からお金が出るから近いかも、、? 」


「なるほどね~、、それだけでは生活できないんだ、、世知辛いなぁ~ 」


人生は 世知辛い



父は、マンションの一部屋の前に立つ

「父ちゃん、、ここは? 」


「ランランの家だ 」

父は鍵を取り出し家の中に入っていく


「昨日、ランランから連絡があってな 自分に何かあったら、ミロクに頼みたい事があるって言っていた 」


「私に、、? 」


「おう、、 」


ランラン先生の家の電気をつけると

部屋の真ん中には 大きなお社が奉られている


近くには鉄アレイやボクシンググローブも綺麗にまとめられている


何と表現をして良いか わからないが

凄く心地よい家だ


なんだか隣の部屋から生き物の気配がする


父が扉を開けると小さな白い犬の赤ちゃんが飛び出してきた


犬の赤ちゃんは父にワシャワシャされ喜び、ミロクに飛びついてきた


べろべろなめられ

顔が涎でベトベトだ


「お、、!見えるのか、、? 」

父が驚いている


「なんのこと 」


「その龍だよ 」


「え、??? 子犬のこと?? 」


「よく見てみな 犬に似ているが鱗もついているだろ? 」


子犬?を撫でていると鱗が確認出来た

「本当だ、、 」


「普通は見れないんだぜ、、 色々な都市伝説の被害に遭ったからか、、? 」

父が困った顔をしながら龍を撫でている


「えっと、、 手紙、、 どこにあるんだ、、?」

父は部屋の中を探している

「これか? 」


床に置いてある手紙を見つけ 父が読みだした


「まじか~、、 」


手紙を読み終わるとミロクに手紙を渡してきた


「これは?? 」


「ランランからミロクへの手紙 」


「え?? 」



父から手紙を受け取るとミロクは手紙に目を落とす



毛利もうり 深緑みろく様へ


突然のお手紙でごめんなさい

この手紙を書き始めた事には理由があり、 

その説明から書かせていただきます


先ほど、直感があり

私の命を 毛利もうり 深緑みろく様を守る為に 使う必要があった為

筆を取らせて頂きました


勿論、死ぬつもりは無いですが、我々の直感は高確率で当たります

万が一の為、私が死んだ時は

毛利もうり 深緑みろく様のお父様にもこの手紙を読むように伝えています


前置きが長くなりましたが、 本題に入ります


お願いです


私の家にいる 霊獣の 龍に気付いていると思いますが、

霊獣の 龍様を預かっていただきたいのです 


この龍は、 中国等でも有名な伝説上の霊獣 白麒麟様です


白麒麟様には、使命があり現世におりて来ており


白麒麟様曰く、使命を果たす為に毛利もうり 深緑みろく様の協力が必要と仰られています


普段は、子犬の様に見えますがとても高貴な神様です


突然のお願いで大変恐縮ですが 白麒麟様をおねがいします


PS

モーリさん(父のあだ名)

娘さんを巻き込んでごめんなさい

お詫びに家にある好きなゲーム持って行って良いよ



「父ちゃん、、どう言うこと 」


父はTVの側のゲームの棚をガサゴソと漁っている


「父ちゃん!!! 」

ミロクは空気の読めない父親を怒鳴る


「ああ、すまん、 」


「この手紙どうすれば良いの??白麒麟様の件だって 私のマンションは動物禁止だよ 」


「大丈夫だよ 霊獣様は普通の人には見れないから 」


「白麒麟様の使命って何?? 」


「ああ、、、確かでは無いけど、 なんとなくわかるかも、、、 」


「今日は遅い  帰って明るい時間にゆっくり話そう 」


父はランラン先生の家の電気を消し 家の外に出た


白麒麟様はミロクの後を追ってひょこひょこ付いてくる


ランラン先生の家を後にし、タクシーを拾う


やはりタクシーの運転手には白麒麟様が見えない様だ


父が家まで送ってくれるとの事だ


先ほどから悩んでいた事の一つに答えが出たので父に伝える

「父ちゃん決めた 」


「ん? 」


「白麒麟様の名前はBBにするよ 」


「へ?? 何?? 」


「だって 白麒麟様って呼び辛いじゃん だからランラン先生がBoxersボクサーで父ちゃんがBandmanバンドマンだから 頭文字とってBB! ビビって呼ぶよ 」


「あ、、ああ、 そうか ふーん、、(我、娘ならがどこか抜けてんなー、、)」


ビビ よろしくね


ミロクがビビを撫でると

ビビはミロクの手をペロッと舐め

ミロクに寄り添い 家に着くまでの間に寝てしまった



つづく

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