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累肉 その弐

夜中にコツコツ書いている話が、まとまってきたのでアップしています


ストックはまだあるのですが、夜中に一度チェックして手直ししてからアップしています


※物語の内容は全てフィクションです(念の為)

香山の話を聞いた後、ミロクは職場でコーヒーを飲みながら

ツイツイを眺めていた


【 累肉 】と検索しても1件も上がってこない


「まあ、こんなもんだよね、、、 」


だが 

ミロクは ふと気づく


モンスター級SNS ツイツイで、ここまで検索に上がってこないワードがあったか?


香山は優秀なライターだし

渡された資料を見ると創作などでは無いことも分かる


実際のスレッドのスクショを見ながら話を聞いていた筈だが、、


他にもそのスレッドを見ている人がいたら

絶対に検索が出来る筈だ


嫌な予感がする


ミロクの嫌な予感は 大体当たる



「ぎえーーーーーーーーー!!! 」


編集長の石橋が 突然叫びだした


「い、、!石橋さん!? 」


ミロクが石橋の元へ駆け寄ると

石橋が泣きながら携帯を見せてくる


「フォ、、、フォロー されちゃった、、 どうしよう、、、、、! 」


石橋のツイツイには 【 果肉さんがフォローしました 】と表示されている



「石橋さん、、、 」


石橋は もう駄目だ!!! っと泣き出し喚いている


その状況に別部署の人間も心配し

覗き込んでいる


ミロクは恥ずかしくなり 上司を怒鳴る


「石橋さんっ!!!! 」


ミロクの声にびくっと身体を震わせミロクを見ている

 

40過ぎの女が、涙と鼻水を流している


これでも石橋は伝説と言われた編集長だが

その面影はない



「石橋さんそれ・・・ 」

フォローされた名前をよく見せた


"果肉”


「この人おいしそうな 果物しか上げてないですよ 」


石橋はしばらく無言になり

ミロクにコーヒーとチョコレートの差し入れをしてくれた


そんな上司の姿を見て、

都市伝説には人を恐怖に導く力があると思いながら

理不尽な恐怖の象徴について 少しだけ興味を持ち始めていた


その日、香山は石橋とミロクを誘い 

近所の居酒屋に向かっていた


石橋の絶叫騒動と、異動してきたばかりの新人、

女性二人を怖がらせてしまった事にバツが悪いのか

罪滅ぼしにご馳走してくれるとの事だった


仲の良い上司達と飲みに行く

これも社会人ミロクの楽しみである


「香山~~!! 何てことしてくれるんだよ~!! 」

石橋編集長は 酔うと絡んでくるタイプのようだ


「石橋さんはもう少し慣れた方が良いですよ~ 都市伝説のプロでしょ??(笑) 」


香山は笑い、石橋は胸を張って答える


「怖がりだからこの仕事ができるんだよ! 」


おお! なるほど! ミロクは妙に納得してしまった


「じゃあ、メシのネタ渡したんだから許してください~!(笑)」


ワハハハ! と笑いが絶えない良い飲みの席だ


ミロクは上司には恵まれていると思いながら

良い気分で飲み会を楽しんだ


新人と飲んでいる事を石橋と香山は考慮し

早々と20時ぐらいには解散した


時間もまだ遅くないのでミロクはほろ酔い気分で

歩きながら家に向かっていた


元々美容とダイエットのブログを書いていた為、 

どんな時でも身体を動かす事は忘れない


身体に染み付いている美容と健康維持の習慣

そんな自分に苦笑いをしていた


「これからの日課は、恐怖の探索になるのかなぁ~ 」


都会の夜は明るいが

ミロクの手にある携帯電話のSNS ツイツイから流れてくる情報は

人々の妄想や虚言で溢れかえり まるで漆黒の夜の海のようだ


自分自身が先を照らす光を持っていないと

情報の闇に飲み込まれ、自分を見失ってしまうだろう


多少の酔いと家までの徒歩で疲れたミロクは

シャワーも浴びずにそのまま布団になだれ混んだ


携帯には ツイツイから通知が届いているが、

ミロクの意識は夢の中へ溶けていった



朝起きるなり熱いシャワーを浴び、会社へ連絡をした


上司の石橋に取材の許可をもらう電話をする

「石橋さんですか? 」


「ミロクか? どうした? 」


「昨日香山さんから教えて頂いた累肉の記事の取材をさせて頂いても良いでしょうか? 」


一瞬石橋は言葉を詰まらせた


「っう も、、 もちろんだ 」


「ありがとうございます! 」


ミロクは電話を切るなり 自分の携帯を睨んだ


昨日のツイツイの通知は


悪い予感は


そのまま現実となった



xxxさんが 累肉 さんの投稿を【最高ね!】しました




前回のめくらさん騒動から、自分には都市伝説との繋がりが

"何か”があると感じていた


今回 累肉 の話を聞いた時から

何かの悪意がじっと 自分を覗いているような気がしていた



上司から1日取材許可をもらったので、 

以前から連絡を取りたいが 連絡する理由が無い為、

保留していた人に連絡を取る事にする 


ミロクは、ラインを開き

自分の友人リストから子犬のアイコンを探した


自分を未知と恐怖の世界から助けてくれた 

ランラン先生にコンタクトを取るのだ


ランラン先生に相談をしたいとメッセージを送ってみた


10分もしないうちに既読になり、メッセージが返って来た


可愛い子犬のスタンプで


OK


とだけ書かれていた


父の友人はこんな人間しかいないのか、、



ランラン先生の都合の良い場所を聞いてそこに向かう事になる


家から電車で6駅ぐらいだったか

パンケーキの有名店 ラヴワゴン に着いた


店内に入ると店に似合わない巨体がおいしそうに 

パンケーキをモリモリ食べている


「ランラン先生 お久しぶりです その節は本当にありがとうございました!! 」


ミロクはランラン先生の前に立ち 深々と頭を下げた

そんなミロクを見てランラン先生は にっこり微笑んだ


「大丈夫だよ ミロクちゃん 

 お父さんから話を聞いた時から、 少し大変な事になっているね 」


ランラン先生はメニューをミロクに渡す

「好きな物を注文してね 」


食欲が無いのでコーヒーを選ぶ

ランラン先生は、ミロクが注文する商品が何かをじっと見ていた


「ミロクちゃん、朝ごはん食べた? 」


「い、いえ たべてません 」


ランラン先生のひと言ひと言が ミロクを緊張させる


「食べないとだめだよ~ 心が弱っていると 

 今のトラブルを解決する事が大変になるから 」


その言葉を聞いてミロクはコーヒーとフルーツの盛り合わせとヨーグルトを頼んだ


ミロクが食べている姿をにっこりと見ている


食事が終わると先生が口を開いた


「さて、、、本題に入ろうかな 」


ランラン先生はミロクの携帯をじっと見つめた


「その携帯に何かいるね 」


その言葉にミロクの背筋が凍る


「前の出来事からミロクちゃんは、少し目立っているみたいだ 」


めくらさんの名前が頭をよぎる


「"あちらの住人達から”見られている 」


ミロクがツイツイを覗くと

黒髪のおかっぱで色白で目が不自然に大きい女のツイツイが表示されている


この画像に【最高ね!】してくれたフォロウァーさんのお肉を細切れにします

と投稿している


画像は 可愛くオシャレな食事とトレーニングしている女性の写真だ


良く撮れている


食事とトレーニングの写真は難しい


食べ事は太ると潜在意識がある為

トレーニングしている写真と調和させるには相当なセンスが必要なのだ


この写真はその対照的な被写体を1枚の写真に上手くまとめて表現している

今は無き自分のブログに使いたいレベルで、高度な写真だと感心する


自分もブログ更新の為に何度も写真を撮ってきたが

大体が失敗に終わり

料理の写真とトレーニングの写真は個別で投稿することにしていた


吸い寄せられるように【最高ね!】を押そうとした瞬間


「やめろ!!! 」

ランラン先生の怒号がカフェに響き


はっとミロクは我に返る

「っえ!!わたし、、何をしようと、、? 」


ランラン先生は不機嫌そうに下を向く


「今回のは、たちが悪いな、、 」


オシャレなカフェで大男が叫んだ為、

カフェにはザワザワと不穏な空気が漂った


ランラン先生はふぅ~~~~~っと

息を吐いて席を立つ


「ちょっと、電話をしてくるね 」


ランラン先生が席を離れ 戻ってくるのを待っていると

ブーンとミロクの携帯電話が鳴り 

ツイツイが表示されている


ミロクが投稿に【最高ね!】を押したことになっている


「!!!!!?? 」


「わ、、わたし押してない、、!!!! 」


それからすぐにフレンドリクエストが届く


携帯に触れていないのに

勝手にフレンド登録をされてしまった


異変を感じ 電話を切り 

ミロクの元へランラン先生が駆け寄る


ミロクの携帯を見るなり

「まずいな、、 」


ランラン先生が険しい顔をしながら呟く


ランラン先生は自分の携帯でもツイツイを立ち上げる


やはりアイコンは子犬だ


ミロクとフレンド登録をする


ミロクの【最高ね!】の履歴を確認し

累肉からの投稿を見つけると


ブツブツと呪文の様な言葉を呟きながらミロクの携帯を操作し

【最高ね!】を外しフレンド登録を解除した


「はい とりあえず大丈夫だよ 」

心配し青ざめているミロクの頭を撫で にっと笑った


「ランラン先生、、 」

ランラン先生の優しい笑顔に安心し ミロクは涙をぐっと堪えた


でも、ミロクは、 見逃す事が出来なかった


ミロクの【最高ね!】を外した際に


ランラン先生のツイツイが 累肉の投稿に【最高ね!】を押していた事を



ミロクとランラン先生は店を出て 少し散歩をする事にした

晴れていて気持ちがよい

時間は13時ぐらいか 外は明るい


ランラン先生と駅まで歩く事になる

「ランラン先生、今日も色々とありがとうございました 」


「いやいや、、 」

ランラン先生は、にっこりとミロクに笑いかけた


「不安だと思うけど、大丈夫だからね  」


ゆっくりと歩いていく


「あいつらの苦手なのは、生きてるー!!!っていうパワーだから! 」


熊みたいな男が変なポージングをしている


「フフッ 」


ランラン先生の明るさにミロクは 救われている


「ん、、? 」


カフェに向かう時に歩いた道だが、、、


どこか違和感があった


「ランラン先生 なんか、、、 変ではないですか、、?? 」


ランラン先生は何も答えない


暫くお互い無言で歩いていく



ギュ、ギュ、、



「あ、、 」


違和感の正体に気づいた

平日の昼間なのに 全く人がいないのだ


生き物の気配がしない


気分が悪い


突然、ランラン先生が歩くのを止めた


気がついたらいつの間にか 手にグローブをはめている


「間に合わなかったか・・ 」


ランラン先生はそう呟くと 拳で両顎を隠すような構えをし

上半身をゆらゆらと揺らす


駅の目の前に 黒い人型の"何か”が くねくねと動いている

あれは、、、?


「ミロクちゃん "あれ”が何か考えちゃだめだよ 」


ランラン先生がミロクの考えを遮り

走り出した


黒い人型の"何か”に向かい

ランラン先生の巨体が走りぬける


腰から左肩の骨がリンクし


脚のつま先は相手を見つめ

弓矢の様な左の拳が黒い"何か”の顔面の部分に 


メリ こ









きゃはは



きゃはははは


甲高い女の笑い声が響いている


ミロクの目の前の光景は、、、


悪夢だった



ランラン先生が黒い何かに突進している途中に 

ぬっと横から女が飛び出してくる


累肉のアイコンの女が


ランラン先生の


首に




刃物を突き刺していた


ランラン先生の頭が 体から ぼっとっと 転がり


ランラン先生の巨大な体は 前のめりに倒れ込んだ



一面 血の海が広がった



平日昼間の街中に血の海が広がる光景は


チープなB級ホラー映画のように 作り物のように見えた


違うのは 咽返るような血の臭い


「あ、、あ、、、 」


ゆっくりとミロクは後ずさり


くるっと来た道に向き直し 走り出す


先ほどの店 ラヴワゴンに向かって逃げ出すことしか出来なかった



キャハハハ




キャハハハ





キャハハハハ





「ランラン先生、、、、、 」


走りながら勢いよく店に駆け込んだ為 少し大きな音で店のドアを開けてしまう


バターン 

カランカラン、、 カラン


店に入ると先程と変わらず、沢山の女性客で賑わっている


「いらっしゃいませ~!! 1名様ですか? 

 あれ?先ほどのお客様ですよね? 何か忘れ物ですか? 」


かわいい女性店員がミロクに気がつくと明るく声を掛けてくれる


「い、いえ、、 」


一人で居るより人ごみの方が安心する


「少しゆっくりしていって良いかしら? 」


ミロクの息は少し荒い


「もちろんですよ! 顔色が優れない様ですが大丈夫ですか?? 」


「え、ええ、、オレンジジュースとかいただけるかしら  」


「はい! 只今、お持ちしますね! 」


ミロクは空いているイスに座り込む


めまいがする


ランラン先生はどうなった?? 

目の前で起きた事が現実なのか理解出来ず 逃げ出してしまった



「お待たせしました 」


店員がオレンジジュースを運んでくれた



オレンジジュースをぐいっと半分ぐらいまで飲み干す


ランラン先生を見捨てて逃げ出したことを思い出し

ミロクは声を出さず 泣き出した



カランカラン


「いらっしゃいませ~ っひ! 」


新しいお客に明るく声を掛けたが 店員の顔は引きつっている


柄の悪いヤクザな風貌の男が入ってきた

今の時代の人間とは思えない 虎柄の派手なシャツに 真っ白なスーツ 


ランラン先生程ではないが 鍛えられた肉体

チラリとのぞく和彫イレズミ


間違いない ヤクザだ


「レイコ 」

男はぶっきら棒に伝えて ドスンと席に座る


「っへ?? 」

店員は何のことか分からず きょとんとしている


「つめてぇ~コーヒーだよ、、!※【レイ(コ)ーヒー】 わかれやぁボケェカスが、、 」

ギラっと店員を睨む


「畏まりました! 」


店員は 走るようにアイスコーヒを作りに厨房へ入る


普段ならヤクザは恐怖の対象だが

今は、そんなの関係ない


ランラン先生の 熊のような肉体の大きさや

そのランラン先生を刺した 累肉 の方が怖い


先ほどの出来事を整理するため

ミロクは、一旦息を深く吸い込み、ゆっくりと吐き出した


「父ちゃんに連絡しなきゃ、、 」


父に連絡をしようと携帯を取り出すが

累肉の画面を見たくない為、静かに携帯を机に置く


残りのオレンジジュースを飲もうとすると

店内の話し声が耳に入ってくる


少しだけ 気持ちが落ち着いてきた


「ね~、どう? 」


きゃはは


「まだぁ~ 」


きゃははは


「早く解体を終わらせてよぉ 」


きゃははは


「今回の奴はしぶといねぇ~ 」


きゃははははは



活気がある店で良い


非日常の孤独と恐怖から助けてもらえる


だが今は先ほどの 甲高い女の笑い声が耳に残っている


女性の笑い声は もう聞きたくない


「そろそろ、、出ようかな、、 」


少し気持ちが悪くなってきた為

ミロクが席を立とうとすると 先ほどの店員が近づいて来た


「お客様、よかったらこれどうぞ! お店からのサービスです! 」


にこっと笑いお皿を出してくれた

サービスとの事だ 


お皿には新鮮な手が乗っている



「っえ? 」



ミロクがはっと店内を見回す


背筋が凍りついた


女性客の顔が全て


累肉のアイコンの女に変わっている


加工されすぎて不自然に大きくなった目の累肉達が

無言でミロクをみつめている



「ひっ 」

転がるように席を立つ


「あ、あ、あ、、、 」


累肉達がすっと包丁を取り出した



ミロクの目の前が真っ暗になる



人生はいつだって 


理不尽で


残酷だ






「ごぉるぁ!!!!!!!!!!!!!! 」


男の怒号で累肉達がビクッと震える


「てめぇ~よぉ~、、 」


ヤクザの男の肩がワナワナと震えている


「俺のレイコはどうなってんだごらぁ!!!! 」


「先に注文した客をほったらかしでぇ サ~ァビィスだぁ~~??! 」


ヤクザのいちゃもんで累肉達がオロオロしている


「なぁめてんじゃ~ねぇ~ぞ、、、!!! 」


男のドスの効いた声とメンチ



累肉達の一人が男を刺そうと刃物を振り回すと


メキョォ、、!


嫌な音と共に累肉の頭に

重そうなカフェテーブルがメリ込んだ


「客にむかってぇ何してんだ~、、ごらぁ!!! 」


若頭カシラ!!! 」


男の怒号と共に、同じく時代遅れのファッションに身を包んだ

若い衆が7人ほど店に乗り込んでくる


累肉達は 現状が把握できずにオロオロしている


「おい、、 」

ヤクザの若頭カシラは子分たちに首で指示を出す


「事務所につれてけぇ、、 」


その言葉と共に累肉達は泣きながら許しを懇願しているが

ヤクザの子分たちに捕まり店の外に引きずり出されてゆく



「めぇ~わくかけたな~、、」

男がミロクの側に近づき ボソッと一言呟いた


「送ってってやるよぉ 車にのってけや 」


ミロクは、男の言葉を断ることが出来なかった


つづく

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