玖 寝坊
「乃蒼! 乃蒼…!」
「………ん、なに? 乃羽。」
「なに?じゃないよ、もう。
あと10分で遅刻しちゃうよ?」
乃羽の声がして、起き上がるとそんなことを言われる。
寝ぼけた目で時計を見ると、確かに遅刻する10分前になっていた。
「なんで、起こしてくれなかったの!?」
「起こしたよ! そしたら、なんか犬みたいな動物が
乃蒼の布団から出てきて窓からいなくなったのを見たら急に眠くなって。」
「それで、乃羽も寝たの?」
「えへへ。」
「えへへじゃない!! すぐに終わらせるから、先に外に出てて。」
「分かった。」
乃羽にそう言って、私は急いで準備を済ませて
いなくなった朔に言うように言葉を言って外に出る。
「……乃蒼、今日は近道を走ろう。」
「そうだね。今日は仕方ない。」
「ふふ。」
私達は学園へと行ける近道を全速力で走っていく。
途中で、見えちゃいけない奴を踏んだり貫通したりしたけど
気にしていたら巻き込まれるので、無視をして走り抜けた。
* * *
「は、はぁ……はぁ…疲れた。」
「私も…疲れた。」
「…大丈夫ですか? 乃蒼さん、乃羽さん。」
「大丈夫…です……秋月くん。」
そう言って、秋月くんを見るとボンッと音が付きそうな速さで
顔を真っ赤にする。
そして、私から目をそらして乃羽の方をみた。
(今…赤くなる要素はあった?)
そう考えながら首をかしげる。
「私も…大丈夫、ゴホッ…だよ…御影君。」
大丈夫と言いながら咳をしてるから、秋月くんが
心配をしていると、教室の扉が開いて先生が入ってきた。
「…全速力だったなぁ、月守双子。
珍しいな、お前ら二人が遅刻しそうになるなんて。」
「寝坊です。」
「同じく。」
そう言うと、先生は夜更かしはするなよぉ?と言ってきた。
(別に夜更かしをしたわけではない。)
私は心の中で文句を言いつつ、息を整えて
HRの先生の話を聞いて、授業を始める………様子は変わらないので割愛。