壱 犬みたいな動物
不定期更新になります
「早めに帰ってくるのよー?」
「…分かってる、行ってきます。」
私は長い石造りの階段を下りて、フードを目深に被って
適当にぶらぶらと歩く。
「……うん、夜は静かだから好きだなぁ。
まぁ、見えちゃいけない奴らも動き出す時間だけど。」
私はそのままぶらついて、自分の家である月守神社に着くところ
近くに、なにか蠢くものを見つけた。
「…出て行く時はなかったような」
近づいてみてみると、蠢いているソレは浅い呼吸をしている
尻尾の先と前足後足、そして耳の先が黒く染まっていて
他は赤黒かったり茶色かったりする、犬みたいな動物だった。
「怪我してる…」
私は、その動物に衝撃を与えないように抱えて
正門からは入らずに裏門から入って自分の部屋に入る。
「……先に泥とか流さないとダメかな。
あったかいタオルで拭いたら丁度いいかな。」
私は自分のタンスを開けて綺麗な真っ白いタオルを取り出して
桶を取って、丁度いいくらいのお湯を溜めてタオルを濡らす。
そして、濡れたタオルで身体を拭いて行くとタオルはすぐに色に染まっていく。
それを数回繰り返していると、動物は元の色とは言えないけれど
大方綺麗になって、傷口が見えるくらいにはなった。
「包帯って、どこにしまったっけ…。えっと、確か…」
タンスの一番上をあさると、そこから使っていない包帯が3個出てきて
その後に人間用の塗り薬が出てくる。
(人間用はさすがにダメだよね。)
私は塗り薬は取らないで包帯だけを持って
動物がいたところに目を向けるが何もいない。
「どこ行ったんだろ。」
足元を見たりして探していると、ふわふわの尻尾が
ベッドのすみから見え隠れしていた。
「…大丈夫だから」
私はその動物をなだめながら、包帯を巻く。
最初は抵抗されたけど、何もする気がないと分かったのか途中から大人しくなった。
包帯を巻き終わると、その動物は既に眠っていて
私はその動物を朔と名付けてベッドの隅に寝かせた後、お風呂に入って
下着の上に太ももまである長い丈の黒いもこもことした
ルームウェアを着て眠りについた。