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66 愛と葛藤

ブックマークや評価ありがとうございます~!


キッチンデビルは美味しかった。

あ、いや、食べていないよ? デビルからポップしたものが美味しいという意味で。

称号"冥界へのしおり"が超有能だった。これはダンジョン限定だが、貴重なアイテム取得率アップなのだ。

なので戦利品は"ダシノモト"だけでなく。


「これは"巨匠の包丁星3つ"!すごい、【料理】のグレードがアップする…! これは"亜魔糖"! お菓子のステータスアップレシピに欠かせないんですよ! ここで入手できるなんて…!」

「見たことない魔法具持っているんだな、キッチンデビルって。"悪戯シェイカー"…。あ、戦闘中に味方の位置の入れ替え出来る。へぇー」

「わーい、やった、新しい称号出た! "デストロイヤー(殲滅者)"だってー。複数の敵を恐慌状態にするってー! 強そう!」


それぞれウハウハしながら欲しいものを入手し、ありがたいことにお礼と言ってサーシャからは評価5の料理をたくさん。クロからは自作の幻想器をもらった。


「トランク?」


それはアンティークな白いトランクだった。幻想器はあまり見ないのでどういうものかよくわからない。

ダンジョンの途中、デビルのポップ待ち中に使い方を教えてもらう。サーシャも興味津々だ。


クロはトランクを縦にして洞窟の床に立てる。トランクの蓋の口は小さな宝石が付いていて、これをカチリとずらすと蓋がパカリと開いて、開いた先、トランクの中は――。


「牧場…?」


しかも、日暮れなんですけど。

鞄の中を、雲がプカプカ浮いている。あ、今雨雲通った。お天気雨だわ。え? なにこれ。


「評価はそう高くないから気にしないで貰って。サイズ調整で牛とか豚とか小さくして運べるよ。魔法具屋では運搬によく使われるんだ。牧場にしたのは俺の趣味」


「ああ、インベントリの代わりの魔法カバン!」


NPC(住人)が持つんですよとサーシャが教えてくれた。インベントリと違って、生き物も入れられるそうだ。


「容量がそう大きくないから。魔法具類、譲ってくれたお礼」

「え~、なんか、メチャ私得していない? いいの? ありがとう!」


基本、私は頂き物は遠慮しない。

いいの? でも悪いから。え~、でも~。いいの、貰って貰ってとかのやり取りがメンド臭いから。

様式美だなと敬意は抱いてはいるけども。同い年の友達には いらんだろ。

――と、いうので、わ~いと貰った。そそくさとインベントリにしまい込む。


どうしよう、新しい土地に行くのに、なに入れていくかな~。ドゥジエムの色変わりする羊さん捕まえて入れちゃおうかな~。


「クロ、困ったら何でも言って! 手伝うからね」

「その時は遠慮なく」

「うわ、フェザントちゃん、めちゃくちゃモノに釣られる女じゃないですか…」


う、サーシャの突っ込み、鋭い。ひ、否定はしない…。よく姉にも言われるのだ…。






そんな物欲のフィーバータイムを満喫した後、サーシャはプルミエに戻り、生産でのポイント稼ぎに行くと言う。プルミエでは籠城準備が始まっているらしい。

クロはログアウト、私はせっかくなので地下2Fへ潜ることにした。

地下2Fは敵は強くなっていて、さすがに一撃とはいかなかった。

ミミッキーが意外に魔法耐性が高く素早さもどうやら私より上で、メリッサちゃんのバフでさらに速さの上がった彼が釣ってきて罠で足止めし、私が物理で止めの流れで割と調子よく進んでいった。2Fにはけっこうプレーヤーもいたので狩場独占とはいかず。だが、モンスター自体は外に外にと出てくるのでひっきりなしの戦闘だった。


(順調、順調! メリッサちゃんも、ミミッキーもLv上がったし)


ご機嫌で進む先、そこで気になるものを見る。


珍しい、1/12ドールだった。


(……メリッサちゃん以外初めて見た!)


だけど、そのドールを連れたプレーヤーはどうやら――修羅場だった。


「もう、コイツ全然使えないじゃん! 捨てていっちゃえって!」

「バカ言うな。こいつ、いくらしたと思うんだよ」

「じゃあ、売っちゃえば? インベントリに仕舞いっぱなしにも出来ないし、ドール種マジうざい」

「……つったって、武器屋や魔法具屋じゃいい顔されねえし……、オークション出すにも手数料かかるし。せっかく紅薔薇出し抜いたんだしさぁ」

「でもコイツが戦闘で役に立ったことある? だいたいさ、この体型で剣士職って、ないわー。あたしも戦闘の効率悪いのそろそろ我慢出来ないんだって!」


見たところ、ドール種の持ち主は男性プレーヤーの方で、それに文句を言っているのは女性プレーヤーだった。男性プレーヤーの傍では【変化】で小学1年生サイズになった、赤毛の2本のおさげのドール種が所在なさげに不安そうに立っていた。

その風貌は、私のところに来たばかりのメリッサちゃんと同じ、木靴に生成りのワンピースのまま。


(ド、ドールマスターのクエやっていないの…か…な?)


あのあと知ったけど、ドール種の防具制作には特殊アイテムの『ドール種の古いカタログ』が必要らしい。普通に作っただけではクエスト達成されなかったという書き込みがあった。


(でもあのカタログ、入手はそう難しくはなさそうだし、別にクエスト達成しなくても着てはくれるみたいだし…。き、き、き、気になるぅ~!)


――なので、しばしの葛藤の末、首を突っ込んでしまった。


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