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62 冥界門に挑む目的は名誉より実利

ブックマーク、評価ありがとうございます~!!


休みの前日の夜が一番テンション上がるのはなぜだろう。

スーパーウルトラトールチョコパフェを澪革ちゃんと二人で攻略したにも関わらず夕飯のカツ丼をがっつり完食してしまった。ヤバイ。VRでは実際にカロリー消費されないのに…!


「もー。ペケポンから聞いたよ。また高橋のヤローが美鳥ちゃんのところに来たって!?」


夕飯後の後片付けを姉としていると昼間の話題が出た。仕方ない。ペケポンさんは生徒会長。姉は生徒会副会長やっているのだ。そりゃ話題に出るよな。


「ペケポンさんに助けてもらったから大丈夫だよ。あいつ、絶対お姉ちゃんがいる時には来ないんだよね」

「直に私に来いっつーの…。さっき、田中の方に電話で伝えといた」

「…え!?」


その言葉に私は驚いた。

姉、田中のことはもう、本当に死んでくれってくらい嫌っていたのに。

姉が、フッと珍しく儚げに微笑む。


「可愛い妹にこれだけ迷惑かけちゃったんだもん…。ウジ虫だって食べるよ姉は」

「おぞましい例えやめて。言葉選びにセンスの欠片もないな」


姉は微笑みながら私の鼻をつまむ。こらッとカワイイ声だしているが、捻り入れるのがちょっと本気入ってますよ。痛い、痛い。

はー、鼻の骨折れるかと思った。

鼻をスリスリこすりながら姉に聞きづらいことを聞く。


「…もう会う気ないって?」

「うん。彼氏いるから迷惑だって」


ガビョーン! 


(や、やっぱり…!!)


「か、彼氏ってぺ、ペケポンさん…!?」


私は姉に興奮を隠せず聞く。

姉はその大きな目をさらに丸くした。


「ペケポン? なんだ、その情報? ないない。彼氏なんてホントはいないわよ。嘘も方便ってヤツ」


姉が笑いながら言う。


「まさか、こっちをあーんな振り方した奴がシゴキで投げ倒したあと告ってくるなんて思わなかったからねー…。超展開に姉もびっくりだよ。本当に美鳥ちゃんには迷惑かけたよね。ごめんね」

「ううん。いいよ。まさか片思い専門のお姉ちゃんに初めて告白してきたのがマゾヒストだったなんて…。お姉ちゃん、真性のダメンズだったんだね…」

「お前マジで口の聞き方に気をつけろ、妹…!!」


痛い痛い痛い痛い、上唇つねるのやめて!


もう、寄ると触ると喧嘩になるんならあんた達口きくんじゃありません! と母が咎めるのも聞かずキャットファイトが始まり、父の帰宅の頃にはリビングの端で姉によるブートキャンプの真っ最中であった。






「はあ…はあ…、言っておくけど、き、今日は私が悪かったから負けておくわ…!」


二人でお風呂の後ゲームにダイブするため2階へ上がる。

フッ、カロリー消費出来たわ、こ、これも計算づくよ…。ゼイゼイ。

負け惜しみじゃないから! ヒーハー…。


「あらあら美鳥さん、足の震えが残っていてよ? あとエロみが足りない」

「エロみなんぞいらんわ。姉、今日、イベント初日だよね…、はあ」

「そそ。姉ランキング入り目指すよ~。今まで最深層は5階だったけど冥界門の地下6階のボス部屋開くって運営メールにあったし速攻行くよ。美鳥ちゃんは?」


私はキラリと目を光らせる。


「私は…、地下1階止まりかな」


姉が意外そうに私を見た。


「え~、活躍したがっていると思ったのに~」

「それより大事なものがあるの…。今回はそれ(・・)の入手に全力かけるの。ふ、ふふふ。………ヒーハー」


そう、それは先日入手した、ステータスアップ料理レシピに書かれたあるモノだった。

提供元は意外や魔法屋イグニスの店の店主、錬金術師のイグニスさんだった――。




***




先日のハウジングイベントの戦闘で私の大事な第1ドールのメリッサちゃんのあんよが破損したのは記憶に新しい。

あの後、「直せるよ」と言ってくれたクロの言葉に甘えることにして、彼の住み込み先、つまりログイン場所の"魔法屋イグニスの店"に赴いたのだ。


「おお! おねーさま、ご覧になって! わたくしの足、すっかり直りましたわ!」


"魔法屋イグニスの店"の流れ星が流れる、御影石のテーブルの上でメリッサちゃんはスチャ、とポージング。

クラシックバレエのイタリアンフェッテを披露である。片足を横に高く掲げ、軸足はそのままに掲げた足を体に水平に曲げてくるりと1回転。ちゃんと、トウで立っていました。


「うう、足の上がり具合が以前おねーさまが見ていらした動画より低かったですわ~。体の可動域に限界がありますわ…! 人形の身が口惜しい」

「いや、そこまで出来ればすごいと思うの…」


どこで覚えたのかと思ったら、狩りの息抜きに見ていた動画から学習した模様。そうか、このゲームのNPCの学習力ホント半端ないのねー。


「すごいね。これってつまり同じ1/12ドール種でも個性が出るってことじゃない?」


自分が修復したばかりのメリッサちゃんを見て、クロが感心して言う。


どういたしまして、とメリッサちゃんは綺麗にカーテシーを決めた。いや、それはどこで仕入れた知識だ。


「伯爵令嬢が先日お礼を言った後に(おこな)ってましたの」

「あ、私よりちゃんとモノ見てるこの子…」


するとそれに同意するように、テーブル上がら声がした。


「キュ!」

「チュ!」

「あれ? 一匹増えていない?」


クロが気が付く。

増えたとも。


「先日、戦闘中にメリッサちゃんが【魅了】で仲間にしたファンシーラットキングさんでお名前はミミッキー君です」

「微妙な名づけ…」

「攻めてみようかと思ったけどビビった結果です」


ちなみにミミッキー君は白いアルビノ個体で、ドブ鼠っぽさを少し払拭されている。ステルスアルマジロのジローと同じでテーブルにチョコンと座って前脚を両手のように使い、メリッサちゃんが用意した小さなカップでミルクを抱えて飲んでいる。あのカップは無限増殖するようだ。

ちなみに彼は【状態異常抗体】を獲得済だった。これは麻痺や魅了、石化への耐性だった。そんな彼を【魅了】したメリッサちゃん、マジおそろし。今現在は状態は正常になっており、多分NPC間の好感度により私のインベントリに巣を構えたのだろう。


(ペット枠は好感度で逃げちゃうからな~)


メリッサちゃんやジローも嬉しそうなので、増えた仲間がいなくならないよう、私も尽力するさ。さてその攻略方法はやっぱり。


「お待たせ、虹色クロッカンタワーだぜ」


餌付け! これしかない!


錬金術師イグニスさんの持ってきたのは高さ30cmほどの色とりどりの小さなシュークリームで作られたタワーだ。お皿に乗ったタワーの周囲は水色で、ジェリーだろうかぷるんと涼し気に揺れる。どうやらこれは泉を模しているようで、そこからタワーの間に虹がかかっている。この虹は魔法の賜物だろう。

錬金術師の作るお菓子、めちゃ凝っている…!



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